新卒SIerからBig4コンサルタントに転身した方に、SIer時代の仕事を振り返りながら、転職を決断した背景、さらにはコンサルティングファームでの苦労ややりがい、上司・同僚との関係性などについて伺いました。
Interviewee Profile
新卒で大手SIerに入社し、コンサルティング業務を担当する部門にて、AI等の先進技術を活用したDXプロジェクトのPMOやPoC責任者を経験。3年目のタイミングでBig4の1社へリファラル制度を使って転職し、大手メーカーのデジタルマーケティング活用支援PJなどに従事。
新卒SIerで1年目から大規模プロジェクトのPMOを担当
―簡単にご経歴を教えてください。
新卒で大手SIer(システムインテグレーター)に入社し、コンサルティング業務を担当する部門に配属されました。主に、クライアント企業のサプライチェーン領域における業務改善を目的としたDX(デジタルトランスフォーメーション)の支援に従事しておりました。入社3年目のタイミングでBig4の1社に転職し、現在は約1年が経過しました。転職後は、B2Cメーカー様の売上拡大を目指し、デジタルマーケティングの支援を行うプロジェクトなどに携わってきました。
―新卒入社したSIerでは具体的にどのような仕事をしていましたか?
自社が持つAIソリューションなどを活用して、クライアントの倉庫業務の生産性を高めるご支援などをしていました。例えば、倉庫内にセンシングデバイスを設置して、従業員の導線を可視化したり、AIを使ってシフト作成を最適化したりと、最新テクノロジーを活用しながら、クライアントの業務効率化を推進していました。私の役割としては、PMOとしてプロジェクト全体の計画策定や進捗・課題管理などを担当していました。
また、一つのモジュールのリーダーロールも任せていただいていたので、AI活用のPoC検証に関して、目的や検証論点の設計、PoCスケジュールの作成、適切に効果検証を行うための現場管理などにも携わりました。
―業務内容としてはコンサルティングの仕事に近いようにも感じました。
基本的にはPMOとして週次定例会議を開催し、複数のモジュールの進捗や課題の管理・解決を図っていくという仕事でしたので、会議のファシリテーションや議事録作成、ステークホルダー間の調整支援など、コンサルティングファームが行っているPMOの業務と近い内容だったと思います。
―SIer時代の仕事で面白み・やりがいを感じていたことを教えてください。
私が参画していたプロジェクトは、体制面であまり充実していなかったこともあり、本来であれば社会人1~2年目には任されないような裁量とタスクを与えられていたと感じています。前述のプロジェクトは比較的規模が大きく、定例会議には30人近くの自社社員やクライアント等が参加していました。そのような会議を入社1~2年目でファシリテーションするのは大変チャレンジングな経験でしたが、同時にやりがいも感じていました。
通常は、議事録を取りながら上司の背中を見て徐々に学んでいくものだと思います。しかし私は、入社1年目から現場に出て、直接クライアントと打ち合わせをしながら、自身が担当するAIソリューションのPoC検証の計画策定や効果検証を行う機会に恵まれました。大手企業に所属しながらも、ベンチャー企業のような働き方ができたという点で、非常に面白くてやりがいのある経験だったと言えます。
成長の限界を感じ、キャリアチェンジを決意
―逆に1社目で苦労したことはありますか?
前述したとおり、プロジェクトの体制があまり充実していなかったため、自分自身の仕事に対して誰からもレビューやフィードバックをもらえない状況でした。それでもプロジェクトを前に進めるしかなかったので、自分で考えながら手探りで仕事を進めていく必要がありました。しかし、自分のやっていることが正しいのかどうかがわからないまま突き進むということに、正直苦しさも感じていました。そのような状況の中で、本当に自分は成長できているのかといった不安を抱えながら仕事をしていたのを覚えています。
―コンサルティングファームへの転職のきっかけを教えてください
元々新卒でSIerのコンサルティング事業部に入った時点で、将来的にはコンサルティングファームでコンサルタントとしてキャリアを築いていきたいと考えていました。そのような中で、自分が本当に成長できているのかどうかということが徐々に気になってきました。
加えて、3年間働く中である程度担当していたプロジェクトも軌道に乗せることができ、PoC検証も完了してローンチの見通しが立ったため、次のステップとしてコンサルティングファームにフィールドを移すことへの関心が高まってきました。自分のスキルが現在どの程度のレベルにあるのかや市場価値を知りたかったこと、そしてさらにスキルアップしていきたいという思いが転職を決めた理由です。
転職先を探す中で、前職時代からお世話になっていた先輩がいました。その方とは定期的に飲みに行く関係で、私よりも先にコンサルティングファームに転職されていました。ある時その先輩と会った際に、仕事やキャリアについていろいろと話をする中で、もしよければ現職のリファラル制度を使って私を推薦してくださるという話をいただきました。
リファラル制度を活用し、Big4への転職を実現
―リファラルでの転職活動はどのように進みましたか?
前職で一緒に仕事をしていた先輩が先に現職のファームに転職されていて、その方からリファラルをいただきました。先輩から会社に推薦状が提出された後、中途採用の人事から直接面接の連絡が来ました。そこからは通常の流れと同様に、職務経歴書を提出して面接に進むという流れでした。面接は複数回ありましたが、通常の採用フローとは少し異なり、最初から配属予定の部門のパートナークラスの方が出てこられたので、そこはリファラルならではの特徴かもしれませんね。
また、リファラルいただいた先輩から職務経歴書のフィードバックをいただいたり、面接官の特徴などを事前に伺ったり、模擬面接をやっていただいたりと、選考対策をしっかりとすることができたのも大きかったです。
―リファラルの場合、個人で直接やり取りするため、給与調整などがしづらいという話を聞くこともあります。
私の場合は、リファラルいただいた先輩にオファーを頂いたランクの給与レンジなどを教えてもらいながら、ファーム側と調整ができたので、それほど苦労はしませんでした。
コンサルで求められる高品質なドキュメント作成に苦戦
―転職後はどのようなプロジェクトを経験していますか?
現在、大手のB2Cメーカー様に対して、デジタルマーケティングの戦略企画から実際の運用改善までを支援するプロジェクトに携わっています。このプロジェクトの特徴は、従来のコンサルティングでよく見られるAdvisory領域だけでなく、デジタルマーケティングを活用してクライアントの事業をグロースさせるために、実務レベルの作業までを含めて支援しているところです。例えば、ウェブページの要件定義や、デザイナーと協働してのページ作成といった具体的なタスクにも取り組んでいます。
―転職後に苦労したことはありますか?
転職して1年が経ちましたが、個人的にドキュメンテーションスキルが課題として浮き彫りになっており、苦労している部分だと感じています。前職ではPMO業務を担当していたこともあり、クライアントとの折衝やファシリテーションなどは得意としているのですが、コンサルティングファームにおける成果物である資料作成については、まだ改善の余地があると認識しています。特に、メッセージングとそれを裏付けるエビデンスを十分に揃え、論理的かつ明確に伝えるという点において、現在まさに課題を感じているところです。
―前職の大手SIerでも当然一定の品質の資料は作成していたかと思うのですが、何がそれほど違うのでしょうか?
コンサルティングファームでは、資料で伝えるメッセージとその理由の整合性について、非常に精緻なレベルでの品質が求められると感じています。内部で上位者のレビューを受ける際、資料に記載したあるメッセージについて、その記載意図や結論に至った根拠となるエビデンスについて、繰り返し確認されます。そして、それらの問いに対して、自分自身が明確に答えられるようにしておく必要があります。 つまり、資料に落とし込むメッセージの論理性を非常に高い精度で詰めていくことが求められるのが、前職との大きな違いだと考えています。
―他にギャップを感じていることはありますか?
前職と比べて、働き方も大きく変化しました。コンサルティングファームでは、求められるパフォーマンスの基準が高まっている中で、労働時間も単純に増加しています。前職では、コンサルティング部隊に所属していたとはいえ、事業会社の一部門であったため、比較的ゆとりのある働き方が可能で、定時で仕事を終えることもよくありました。 一方で、現在の職場では、クライアントからの期待値も高く、先ほど述べたように、論理を精緻に詰めていくことが求められるため、特にプロジェクトの繁忙期は非常に多忙になります。
戦略立案から実行支援までを担当し、売上に貢献するやりがい
―逆に良い意味でのギャップはありましたか?
コンサルタントという仕事に対して、もともと持っていたイメージは、一方的にクライアントのためになると思うことを提案し、承認を得た上で、淡々とプロジェクトを進めていくというものでした。しかし、実際に働いてみて感じた良い意味でのギャップは、クライアントと目線を合わせながら、課題解決に向けて共に歩調を合わせて進んでいくという点です。 コンサルタントとクライアントが、単なる提案者と承認者の関係ではなく、同じ目標に向かって協力し合うパートナーであることを実感しました。
―ご自身が感じているコンサルティングの仕事の面白さを教えてください。
今参画しているプロジェクトに関していえば、最終的に自分の仕事が目に見えるものになって消費者の元に届くところです。プロジェクトによっては、資料に描いた計画で終わってしまうことも多いですが、今のプロジェクトでは自分で考え抜いたものが形になって消費者の元に届きます。そして、それが少しでもクライアントの売り上げに繋がっていることが分かるのは、個人的に非常にやりがいを感じている部分です。 あとはシンプルに、クライアントから感謝の言葉をいただいた時などもやりがいを感じます。
―短期プロジェクトを好む方もいる中で、長期プロジェクトのやりがいを教えてください。
特定のクライアントを長期的に支援することで、課題がより明確に見えてくるのが長期プロジェクトの醍醐味だと思います。クライアントとの目線を合わせ、一体感を持ってより良いものを作り上げていく過程は、短期的なプロジェクトでは味わえない魅力があります。
―実行領域まで支援する大変さはありますか?
例えばウェブページを作成するにしても、私としてはビジネス要件として必要なこと、あるべき姿を要求していく必要がある立場ですが、実際に作成いただくデザイナー側から、デザインとして品質観点などから対応できないという意見をいただくこともあります。そういった中で、クライアントやユーザーにとっても最適なものをつくるという軸をぶらさずに、うまく落としどころをみつけていくという必要があるというところは、実行領域だからこその大変さだと感じています。
コンサルタントとデザイナーでは、物事の捉え方や価値観、コミュニケーションの方法が異なることがあるため、そこを上手く調整しながら最適解を導き出すのは確かに大変な作業です。しかし、それ故にこそ、実行まで伴走することで得られる学びや気づきは多く、コンサルタントとしてのスキルアップにも繋がっていると思います。
業務やキャリアプランの相談が常にできる、成長を支援する環境
―上司や同僚との関係性はいかがでしょうか?
本音ベースで言うと、現在は非常に恵まれた環境だと感じています。前職ではフィードバックの機会がごく僅かでしたが、現職では定期的に上司からフィードバックをいただけるので、自分の成長について確認できるのが嬉しいですね。現在のプロジェクトでは、チームのシニアコンサルタントの方と毎日朝夕に30分のミーティングを設定しており、仕事に関する相談ができているので不安感もありません。マネージャーにも気になる点や分からないことを聞くと、すぐにレスポンスしてくれますし、本当に1を聞くと10返ってくるくらい丁寧にフィードバックしてくれるので、個人的には今の環境にとても満足しています。これも転職して良かったと感じるポイントの一つです。
―日々の仕事だけでなく、中長期的なキャリアを相談できる機会もありますか?
はい、定期的に自身の成長や将来のキャリアを振り返る面談の機会が設けられています。そこでは、例えば将来目指すキャリアに対して、現在参画しているプロジェクトが合っているのか、そうでないならばどのようなプロジェクトに入りたいのかといったことについて相談することができます。 前職と比べると、自分自身でキャリアを作っていくという意識が強いと感じます。言い換えれば、そういった意思がない方にはあまり向いていない環境なのかもしれません。
―今後のキャリアプランについて教えてください。
まずは現在のクライアントに対して、マーケティングだけでなく、上流から下流まで幅広い領域のプロジェクトでご支援しながら、自分の強みとする分野を見出していきたいと考えています。将来的には、現在のクライアントからバイネームで仕事を依頼いただけるような信頼関係を築けたら嬉しいですね。そのためにも、コンサルタントとしてのスキルを磨き、クライアントに寄り添った提案ができるよう、日々精進していきたいと思います。
\ カンタン30秒! /