近年、国内企業がDX化や人材不足という課題に直面する中、多くの事業会社がコンサルティング会社の力を借りています。自社と類似した課題解決に取り組んだ経験と体系化されたアプローチを有するコンサルティング会社に支援を仰ぐことで、効率的な課題解決と業績拡大を実現できる可能性があります。
しかしながら、数多くのコンサルティング会社が存在する中で、適切なパートナー選びは極めて重要です。さらに、コンサルティングプロジェクトを成功に導くには、依頼主側も留意すべき点があります。
本記事では、コンサルティング会社選びの際のポイントや依頼主側の注意点などについて、詳細に解説していきます。
コンサルティング会社を選ぶ際のポイント
提案のアプローチや仮説からサービス品質を判断する
コンサルティング会社に支援を打診すると、通常、以下のような要素を含んだ提案書が提示されます。
提案書によく含まれる要素
- プロジェクトの背景や目的
- プロジェクトのアプローチ
- 課題や施策の仮説
- プロジェクトスケジュール
- 成果物一覧・イメージ
- コンサル・クライアント間での役割分担(Role & Responsibility)
- プロジェクト体制
- プロジェクトメンバーの経歴
- コンサルティング会社の実績や強み
- プロジェクトの金額・契約条件
この中でも特に、「2. プロジェクトアプローチ」と「3. 課題や施策の仮説」には、コンサルティング会社の専門性とサービス品質が顕著に表れています。同様の課題・テーマのプロジェクト経験が豊富であれば、プロジェクト開始前から課題に対する解像度が高いため、依頼主にとって具体的かつ納得感のある仮説が提示されることが多いのです。また、プロジェクトのアプローチについても、遂行上の障害を見越して綿密に練られているはずです。
依頼主としては、コンサルティング会社のブランド力やメンバーの経歴だけに惑わされることなく、まずは提案の質を慎重に見極めることが肝要です。
プロジェクトフィーが予算内かを確認する
コンサルティングのプロジェクトフィーは、依頼先や業務内容、期間などによって大きく変動しますが、例えば大手総合コンサルティングファームに依頼する場合、3か月で1千万円を超えることも珍しくありません。
もちろん、コンサルティングファーム側にもメリットや理由(継続案件の可能性、将来的な関係性の深化を期待できるクライアントなど)がある場合は、ある程度の減額に応じてくれることもあります。ただし、コンサルティング会社側も利益率等のKPIが厳しく管理されているため、大幅なディスカウントは難しいのが実情です。
したがって、自社の予算を踏まえて、依頼するコンサルティング会社や業務範囲などを慎重に検討することが重要です。不安がある場合は、コンサルティング会社からの提案時に、複数の業務範囲パターンで提案してもらうことをおすすめします。これにより、予算に合った最適なプロジェクト規模を見極められるでしょう。
コンサルティング会社の実績を確認する
コンサルティング会社のプロジェクト実績は、選定の重要な判断基準の1つです。通常、コンサルティング会社は同様の課題・テーマに取り組んだ実績として、過去のプロジェクト事例を紹介してくれます。
実績を確認する際は、以下のような観点から、自社に近いプロジェクト実績を有しているかどうかを見極めましょう。
- クライアントの業界
- クライアントの事業規模
- クライアントの課題や目的
さらに、過去のプロジェクトを通じて見えてきた、プロジェクト遂行上の注意点や成功の鍵についても、質疑応答の際に確認するとよいでしょう。このような質疑応答を通じて、そのコンサルティング会社の専門性や実力を見極めることができます。
プロジェクトチームの経歴や関与方法について確認する
コンサルティングサービスにおいて、プロジェクトを遂行するチームの体制は非常に重要です。通常、提案書にはコンサルティング会社側の体制が明記されています。特にプロジェクトマネージャーとなる方の経歴については、同様のプロジェクト実績が豊富かどうかを確認しておきましょう。
また、プロジェクト体制内にSME(Subject Matter Expert)と記載された方が含まれていることがあります。SMEとは当該テーマにおいて高い専門性を有しているコンサルタントを指しており、例えばクライアントの業界や当該プロジェクトにおいて重要となる要素技術等の専門家がアサインされます。ただし、SMEは体制に記載されているものの、後方支援のみで会議には出席しないといったケースもよくあるため、SMEの方の関与方法などについても事前に認識を合わせておくことをおすすめします。
コミュニケーションの分かりやすさや相性を確認する
コンサルタントとのコミュニケーションの取りやすさも、プロジェクト選定の重要な要素です。単にコンサルタントの話が分かりやすいか(相手の前提知識を踏まえて、具体と抽象を混ぜながら話をできるか等)だけでなく、こちら側の話も真摯に聞いてくれるか、意見を率直に伝えやすいかという点も重要でしょう。
また、メールへの返信速度や利用するコミュニケーションツールなど、コミュニケーションスタイルの相性もストレスなくプロジェクトを進める上で大切な要素です。
提案書の内容だけでなく、提案時のコミュニケーションを通じて、コンサルタントとの相性を見極めることをおすすめします。
提案への本気度を確認する
提案への本気度を見極めることも、コンサルティング会社選定の重要なポイントです。例えば、提案日や提案書提出締切日の前に、何度かタッチポイントを設定し、可能な限り依頼主側の考えや状況を汲み取った上で提案を作成しようとするコンサルティング会社は、提案に対して非常に力を入れていると言えるでしょう。
以下のような点に注目すると、コンサルティング会社の提案への本気度を判断できます。
- 提案書の内容が、自社の状況や課題に合わせてカスタマイズされているか
- 提案書の提出前に、複数回のヒアリングや意見交換の場を設けようとしているか
- 提案書の内容について、丁寧に説明し、質問にも真摯に答えようとしているか
このように、提案への本気度が高いコンサルティング会社は、自社の課題解決に真剣に取り組んでくれる可能性が高いと言えます。
複数のコンサルティング会社を比較する
複数のコンサルティング会社に提案を依頼し、比較検討することをおすすめします。複数社から提案を受けることで、各社の強みや相性、依頼主側として重視すべきポイントが明確になってきます。また、コンサルティング会社も競合他社がいることを意識して、提案により力を入れて取り組んでくれる可能性があります。
依頼主側の注意点
一緒にプロジェクトを成功させる意識を持つ
「高いフィーを払っているのだから、コンサルティング会社が勝手に進めてくれる」という考えでは、コンサルティングプロジェクトを失敗に導く可能性が高まります。
コンサルタントは、素早く事実を整理し、課題を構造的に把握・整理した上で、論理的に施策を導くことには長けています。しかし一方で、社内事情については当然ながら自社の社員の方が詳しいです。またコンサルティングプロジェクトでは、発注元とは異なる部署からの協力が必要となることも少なくありません。その際、他部署に協力を仰ぎ、巻き込んでいくという意味では、社内の人間の力は不可欠でしょう。
それゆえ、コンサルティングファームに発注する際は、単なる業務委託やアウトソーシングと考えるのではなく、一緒にプロジェクトを成功させるという意識を持つことが重要です。
コンサルタントはあくまでも第三者的なアドバイザーであり、プロジェクトのオーナーシップは依頼主側にあることを忘れてはいけません。依頼主側がリーダーシップを発揮し、コンサルタントと協力しながらプロジェクトを進めていく姿勢が、成功への鍵となります。
プロジェクトメンバーを確保する
一緒にプロジェクトを成功させるという観点からも、プロジェクトに十分な工数を割けるメンバーを確保することは非常に重要です。全員が多くの仕事を兼任しながら、片手間でプロジェクトに取り組むような状況では、どうしてもコンサルティング会社に任せきりになってしまいます。
そのため、意欲あるメンバーを1名でも、高めの稼働率でアサインし、依頼主側からも積極的にプロジェクトに関与できる体制を整えておくことをおすすめします。
コンサルティング会社に依頼する前に、要件を整理する
コンサルティング会社に依頼する際に非常に重要なのは、プロジェクトを通じて達成したいゴールと、コンサルティング会社に依頼したい業務を明確にしておくことです。
自社のメンバーだけで実施できる内容であれば、本来はコンサルティング会社を活用する必要はありません。「なぜ高額なフィーを支払ってまでコンサルティング会社に依頼したいのか」、「どこまでを自社のメンバーで行い、何をコンサルティング会社に任せたいのか」を明確にしておくことで、社内的な説明がスムーズになるだけでなく、コンサルティング会社側もより正確に期待値を理解し、期待通りのパフォーマンスを発揮してくれるようになります。
ある程度事前に検討した上で、コンサルティング会社からの提案でRole & Responsibility(役割と責任)の想定が提示された際に、コンサルティング会社側と自社側で行うことをより詳細に整理しましょう。
コンサルティング会社側の事情も考慮する
コンサルティング会社に依頼する際、社内の予算取りに時間がかかってしまい、提案を受けてから実際に契約を結ぶまでにかなりの時間を要してしまうケースがあります。
コンサルティング会社はコンサルタントを稼働させることで収益を上げるビジネスモデルであるため、プロジェクトが始まるまでは人件費のみが発生している状態です。そのため、提案時にはそのプロジェクトに最適な人材を揃えていたとしても、なかなかプロジェクトが始まらない場合、それらの人材を他のプロジェクトにアサインせざるを得なくなります。
したがって、依頼主側としては、予算承認のプロセスを円滑に進め、状況を逐次共有しながら、スムーズにプロジェクト開始まで段取りしていくことが重要です。
具体的には、以下のような点に留意しましょう。
- 予算承認のプロセスをできるだけ迅速に進める
- 承認の進捗状況をコンサルティング会社に定期的に共有する
- プロジェクト開始時期の目安を早めに伝え、人材の確保を依頼する
- 契約締結までのスケジュールを明確にし、両者で認識を合わせる
コンサルティング会社側の事情を理解し、配慮することで、コンサルティング会社側もベストのメンバーを揃えてくれる可能性が高まります。
コンサルティング会社を活用するメリット
- コンサルタントの専門的な知識や経験を活用できる
- スピーディにプロジェクトを進めることができる
- 社内のステークホルダーを説得しやすい
- 人手不足の中で“仲間”を得られる
コンサルタントの専門的な知識や経験を活用できる
コンサルティング会社を活用することで、コンサルタントの専門的な知識や経験を活かし、ビジネスを効率的に進めることができます。事業会社にいる場合、大規模な基幹システムの刷新や新規事業の立ち上げ等に関わる機会は多くありません。一方で、コンサルタントはそのようなプロジェクトに数多く携わっているため、成功や失敗の勘所を心得ており、プロジェクトを円滑に進めるための的確なアドバイスをしてくれます。
具体的には、以下のような場面で、コンサルタントの知見が役立ちます。
- プロジェクトの計画段階での適切な目標設定とリスク管理
- プロジェクト遂行中の課題への迅速な対応と軌道修正
- 社内の関係者を巻き込むためのコミュニケーション戦略の立案
- 新しい技術やビジネスモデルの導入に際しての知見提供
コンサルタントは、多様な業界や企業での経験を通じて、ベストプラクティスを蓄積しています。その知識を活用することで、自社だけでは得られない視点や解決策を得ることができるでしょう。
また、コンサルタントは客観的な立場から自社の状況を分析し、課題を明確化してくれます。社内の人間だけでは気づきにくい問題点や改善の余地を指摘してくれることで、業務の効率化やビジネスの成長に繋がる可能性があります。
スピーディにプロジェクトを進めることができる
事業会社のメンバーは通常業務を抱えながらプロジェクトに取り組むのに対し、コンサルティング会社のコンサルタントは、通常、100%そのプロジェクトのために稼働します(マネージャーなどの管理職の場合は50%以下の稼働率であることも多いです)。そのため、コンサルタントはプロジェクトに必要なタスクを迅速に進め、成果物を速やかに作成してくれます。これにより、自社だけで進める場合と比べて、非常にスピーディにプロジェクトを進められるのです。
社内のステークホルダーを説得しやすい
第三者であるコンサルティング会社から意見やアドバイスを得ることで、社内のステークホルダーを説得しやすくなるのもメリットの1つです。専門家であるコンサルタントの意見を踏まえて検討したことを伝えれば、役員報告などでも通りやすくなることがあります。特にブランド力のある大手コンサルティングファームを活用する場合、「あの会社がそう言っているのなら、一定の信頼性があるだろう」と説得力が増すでしょう。
コンサルティング会社を上手に活用することで、社内の意思決定プロセスをスムーズにし、ステークホルダーの理解と協力を得ながらプロジェクトを進められます。
人手不足の中で“仲間”を得られる
事業会社で新規事業等のプロジェクトを立ち上げる際、当初はプロジェクトをリードする社員のみが専属でアサインされ、その他の関与者は兼務となることも少なくありません。このようなケースでは、専属で取り組む社員は常に人手不足に悩まされ、仲間も少ないため孤独感を感じやすくなります。そんな中、コンサルティング会社に参画してもらうことで、プロジェクト成功のための心強いパートナーを得ることができます。プロジェクトを成功に導くために、日々共に悩みながら仕事をする仲間が得られるという点も、大きなメリットと言えるでしょう。
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