Big4シニコンからフードテックへ:スタートアップ挑戦のリアルな体験談(ポストコンサル)

Big4シニコンからフードテックへ:スタートアップ挑戦のリアルな体験談(ポストコンサル)

Big4コンサルティングファームからフードテックスタートアップへ転職した方へのインタビュー記事です。転職の理由や現在の仕事の面白さや苦労など、様々な観点から詳しくお話を伺いました。

Interviewee Profile

Big4のコンサルティングファームへ新卒で入社し、シニアコンサルタントまで経験。マネージャー昇格を控えたタイミングで、関心のあったフードテックのスタートアップへ転職。現在は経営戦略とデジタルマーケティング業務を担当。

目次

Big4にてデジタルマーケティング関連のPJなどを経験

-簡単にご経歴を教えてください

新卒でBig4のコンサルティングファームの1社に入社し、シニアコンサルタントまで経験しました。その後、フードテック企業に転職し、現在は経営戦略とデジタルマーケティングを担当しています。

-新卒でコンサルティングファームを選んだ理由を教えてください

学生時代から、自分が良いと思う事業やサービスを伸ばせるような人材になりたいというキャリア観を持っていました。また、なんだかんだ日本という国が好きで、ビジネスを通じて日本に貢献したいと考えながら就職活動をしていました。

一方で、当時の自分は世の中にどのようなサービスや商品があるのか十分に理解できていないとも感じていました。そうした中で、コンサルティングファームに入れば、様々な業界やテーマに関わることができると考え、就職先としてコンサルティングファームを選びました。

-コンサルティングファームではどのようなPJを経験しましたか?

入社当初はサプライチェーン系のプロジェクトに従事し、その後大手IT企業やメーカーを主要クライアントとする部門で戦略系の案件含め、複数のプロジェクトを経験しました。

中でも、赤字体質の企業を数年で黒字転換させるという社長直轄の案件に参画する機会がありました。このプロジェクトには2年以上関わり、コスト削減のために社内の数百に及ぶシステム・ITツールを精査し、1割程度まで集約するという大規模な改革を行いました。非常にタフなプロジェクトで、クリスマスの日にもクライアントと会議室に籠って解決策を模索したこともありました(笑)。体制としてはマネージャーが上位におりましたが、「○○くん、よろしく」とお任せスタイルだったため、実質的には自分一人でクライアントと日々向き合っていました。

このプロジェクトでは、結果として数年でコストを数十億円規模で削減することに成功したのですが、一方でそれまでシステムの運用に携わっていた人々の仕事がなくなるという状況も生まれました。 こうした経験を通じて、売上が立たなかったからこそ、このような結果になったのだと考えるようになり、売上に貢献できるテーマに関わっていきたいという思いを抱くようになりました。

そこで、社内のマーケティング領域を専門とするチームへ異動することにしました。 マーケティングチームでは、主に大手事業会社向けにデジタルマーケティング領域の支援プロジェクトに取り組みました。消費者調査の設計・分析やデジタルマーケティング施策の検討、伴走支援、オウンドメディアの構想策定など、幅広い経験を積むことができました。

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マネージャー昇格を前に、関心のあったフードテック企業への転職を決意

-転職のきっかけや理由を教えてください

私自身が実は特殊な体質で、以前からフードテック領域には強い興味を抱いていました。そして、コンサルティングファームで経験を積んでいく中で、徐々にフードテックの事業やサービスの成長に貢献したいという想いが高まっていきました。

また、マネージャー昇格を控えた時期に、自分自身の心情的にも社内事情的にも、マネージャーになると転職しづらくなるのではないかと感じていました。であれば、思い切ってチャレンジしてみようと決意し、フードテック企業への転職活動を開始しました。

-転職活動について教えてください

フードテック企業は、アメリカをはじめとする海外ではかなり増加傾向にありますが、日本国内ではまだそれほど多くありません。その中で、人材募集を行っており、かつ自分自身が入社できる可能性のある企業となると、選択肢がかなり限定されてしまいます。そのため、もしすべての応募で不採用となった場合の対応策が心配でした。そこで、プランBとして別の転職先についてもエージェントと相談しながら検討していました。

幸いにも、最終的にはフードテック企業への入社が叶いました。現在の会社は従業員数が数十人規模のアーリーステージのスタートアップ企業で、フードテック事業に取り組んでいます。

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スタートアップで経営戦略とデジタルマーケティング業務を兼務

-現在の仕事内容について教えてください

私は現在、経営戦略とデジタルマーケティングの部門を兼務しており、様々な業務に携わっています。 経営戦略部門では、社内コミュニケーションの促進、データ管理、業務効率化のためのAIツール導入など、全社的な課題解決に取り組む一方で、食品メーカーや商社との協業推進なども行っています。デジタルマーケティング部門では、Eコマースの売上最大化を目的に、顧客体験の設計、製品戦略の見直し、日々のKGI・KPI管理と運用などを担当しています。

-担当業務が幅広く、忙しそうですね!

時間の使い方には悩んでいます。コンサル時代は長時間働くことができましたが、現職では残業が厳しく制限されているため、限られた時間内で担当業務にどのように時間を配分するかが難しい点です。

-どのような体制で働いているのですか?

経営戦略部門については、先に述べた業務の大部分を私一人で担当しています。他社との協業では商品企画やR&Dの方などとも関わるため、完全に一人というわけではありませんが、資料作成などは主に私が行っています。 デジタルマーケティング部門は、社員数人と学生インターン数人の体制ですが、正直なところ、日々の運用にかなりの工数が取られているのが現状です。 スタートアップ企業ゆえに人手不足は避けられませんし、課題は山積みですが、その分やりがいのある環境でもあります。

-コンサルティングファームからスタートアップ企業へ転職する際に不安はありましたか?

不安はありませんでした。その理由は、コンサルティングの仕事では、常に様々なプロジェクトにアサインされるからです。突然、来週から別のプロジェクトに移ってくださいと言われ、上司も変わり、クライアントも変わり、やることも変わるような状況が頻繁にありました。そのため、私自身は新しいことに挑戦する心理的障壁がかなり低いです。

-転職してからギャップはありましたか?

良いギャップとしては、意外とお金に対して寛容だということでしょうか。金額にもよりますが、便利になるのであれば入れて良いよと言われ、実際に入社後にAIツール等を導入しています。

一方で、他のギャップでいうと、意外と縦割り組織だと感じました。他の部署が何をしているのか見えにくいので、経営戦略に携わる社員の一人として、自分が解決しなければならない課題だと認識しています。

また、初めての転職だったこともあり盲点でしたが、社風との相性がとても重要だと感じました。現職の飲み会に参加すると、この会社は体育会系だと感じます(笑)。私は正直体育会系ではないので、社風という点においては前職の方がマッチ度は高かった気がしますね(笑)。ただ、普段の業務で社風とのギャップを感じることはないので、私の場合は大きな問題ではないと思っています。企業カルチャーは面接などでは見えづらいので、転職する際には見極めるのが難しいですね。

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自由な社内改革とマーケティング戦略(Who・What)立案が醍醐味

-現職の仕事の面白いところを教えてください

自由に動き回れることですね。今は自分がデジタル全体と経営全体に関わることができるので、文句を言うだけでなく、一緒に変えていきましょうという姿勢で動けるのが面白いところだと思います。


-社内を変えていくのは大変そうにも感じますが、いかがですか?

みなさん忙しいので、手伝ってくれること、改善してくれることに対してはありがたいと思ってくれているようです。自分として意識していることは、「あなた自身/あなたのチームをもっと楽にできます」とか「会社がもっと良くなります」という文脈で話すようにしています。

実はそもそも自分の所属している組織自体が割と最近できた部署だったので、「この部署は一体何をするのか」という目で見られている部分もあります。そこで、まずは「あなた自身/あなたのチームの役に立てます」というスタンスで臨んで、信頼を得ることから始めています。

-他に現在の仕事で面白いと感じていることはありますか?

他社との協業も、1足す1が3にも5にも10にもなりうるので、そこは面白いと感じています。

また、コンサルティングファームのマーケティングチームでは、比較的「Who」「What」「How」の中の「How」寄りの案件が多かったと思います。戦略チームではもちろん「Who」や「What」を考える案件もあるでしょうが、マーケティングチームの場合は、例えばウェブやECをどう活用して、クライアントの事業を伸ばすかといった案件が多かったように思います。もちろんデジタルの活用という枠組みの中で、ターゲットや提供価値などの戦略を考えますが、ウェブやECはマーケティングチャネルの一つでしかありません。 そもそも自分たちのサービスやプロダクトについて、市場調査や競合調査を行い、自社の商品を改めて見つめ直して、どのような便益があるのか、Reason to believeは何なのかを整理してコンセプトボードに書き起こすような案件はあまりなかったと思います。

しかし、現職の協業案件では、市場や競争環境を踏まえて、自社のサービスや事業と協業先のケイパビリティを掛け合わせ、どのようなサービスや商品を作るかを「Who」「What」から考えることに関われるので、非常に面白いですね。

専門知識の不足やファーム時代とは異なる思考法へのキャッチアップに苦労

-現職で苦労したことを教えてください

マーケティングに関しては、私自身の専門性が高いとは言えません。デジタルマーケティング部門では、ECの売上最大化に向けて取り組んでいますが、私自身はECの運用経験がないため、率直に言えば学生インターンの方々よりもECに関する知識が劣っている部分もあります。マネジメント側のポジションにいますが、マネジメントにもある程度のEC知識が必要なので、そこをいかにキャッチアップして貢献していくかが直近の課題だと認識しています。

また、協業案件では、大手食品メーカーなどの協業先と効果的にコラボレーションし、新しい商品企画を提案する必要があります。こういった業務は、コンサルティングファームで培ってきた思考法とは異なる面もあるため、大変な部分です。

ただ、これらは課題ではあるものの、キャッチアップは可能だと考えています。むしろ協業案件に関しては、私のような素人が企画を実現し、その方法論を確立できれば、誰が取り組んでも再現性のある形にできると考えています。

収入が下がっても、やりがいと中長期のキャリアを選択

-収入面の変化はいかがですか?

正直なところ、収入は下がりました。具体的に言うとコンサルティングファーム時代よりも3割ほど減りました。

-収入ダウンはポストコンサルキャリアの一つのハードルだと思いますが、どのような考えのもと、受け入れられたのでしょうか。

そうですね、一つは間違いなくやりがいです。フードテックにずっと関心があったため、その事業に関われるという点が魅力でした。加えて、中長期的なキャリアの観点もありました。将来的なキャリアを考えても、事業を自分で回した経験は重要だと考えています。それに加えて、ストックオプションへの期待感も大きな理由の一つでした。

-たしかにコンサル経験者が増える中で、コンサルと事業会社のキャリアの掛け合わせを意識している人も増えている印象はあります。

はい、私自身もキャリアの掛け合わせが重要だと考えています。

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スタートアップ転職は覚悟と強い意志が必要

-現役のコンサルタントに向けて、ポストコンサルキャリアについて何かアドバイスはありますか?

正直、コンサルティングファームを辞めても、ファーム時代に評価されていれば、業界に戻れる可能性はあると思います。だから、新しいキャリアへの挑戦自体はいいと思います。ただし、注意が必要なのは、コンサルに戻った際には事業会社での経験が必ずしも評価されるわけではなくて、退職時と同じランクでの再入社になる可能性があるということです。そうすると場合によっては、以前一緒に働いていた後輩よりも低いランクになることもあり得ます。私自身は戻った経験がないので、「戻れるから挑戦しよう」なんて軽々しくは言えません。それぞれが慎重に判断する必要があると思います。

また、スタートアップへの転職を考えている人には、強い意志が必要だと伝えたいです。基本的に収入は下がりますし、よく話題に上るストックオプションによる上場益も、実際のところ保証はありません。だからこそ、相当な覚悟とモチベーションが必要になると思います。

私個人としては、スタートアップに来て良かったと思っています。しかし、周りの友人たちには大手企業に残ることをおすすめしているんです。大手企業で働けること自体が素晴らしいことですから。

結局のところ、ポストコンサルのキャリアを選択する際は、十分な覚悟を持って臨むことが大切だと考えています。安易な決断は避けて、自分が本当に何をしたいのか、よく考えることが重要だと思います。

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