Big4コンサルから外資テック営業へ。技術革新の最前線で働く面白さとは

新卒でBig4コンサルに入社し、新規事業立案や中期経営計画の策定支援など、戦略領域を中心にキャリアを築いてきたAさん(仮名)。「自分の市場価値を知りたい」という軽い気持ちで始めた転職活動は、思いがけず“カジュアル面談から即オファー”という展開に発展しました。現在は、外資系テック企業の営業マネージャーとして、グローバルで高いシェアを誇るプロダクトや生成AIなど、急速に進化するテクノロジーと向き合いながら、経営層と事業変革を議論する日々を送っています。
今回は、コンサル時代と現職との違い、仕事の面白さや苦労など、リアルな経験を伺いました。
Interviewee Profile
新卒でBig4のコンサルティングファームに入社し、新規事業の立案支援や中期経営計画の策定など、戦略領域を中心に経験を積む。その後、外資系テック企業に転職し、現在は営業マネージャーとしてマネジメント業務に従事している。
アメリカの大学卒業後、新卒でBig4コンサルへ入社
-ご経歴について教えてください
アメリカの大学を卒業後、新卒でBig4のコンサルティングファームに入社しました。入社後は、主に新規事業の立案・立ち上げ支援を中心としたプロジェクトに従事し、約5年間在籍しました。
その後、現職である外資系テック企業へ転職。現在は入社から約5年が経ち、マネジメントポジションとしてチームを率いています。
-コンサルファーム時代は、どのようなプロジェクトに携わっていましたか?
キャリアの初期には、パッケージ導入プロジェクトを担当しました。その後は、グローバルサプライチェーンマネジメント(SCM)の構築支援や、海外市場を対象としたマーケット調査など、業務の幅を広げていきました。
中でも特に多く携わったのは、新規事業の立案や中期経営計画(中計)の策定など、事業戦略系のプロジェクトです。たとえば新規事業立案のケースでは、クライアント企業の保有技術を基に仮説を立て、マーケット調査を経て事業プランの策定までをリードしました。
また、製造業クライアント向けには、新技術を活用した新規事業立ち上げ支援を行いました。このプロジェクトでは、事業構想からPoC(概念実証)に至るまで、1年以上にわたって伴走型の支援を提供しました。
Big4コンサルから外資テック営業へ。転職のきっかけと意外なオファーの経緯
― 転職のきっかけについて教えてください。
実は、当初から明確に「転職したい」と思っていたわけではありませんでした。ちょうどコンサルファームでの昇進のタイミングでもあり、自分の市場価値を客観的に知りたいと思って、転職サービスに登録してみたのがきっかけです。すぐに転職するつもりというよりは、「今の自分に、どんな可能性があるのか」を探る感覚でした。
それまで外部の人と会話するのは基本的に仕事関係に限られていたのですが、面談や面接を通じてさまざまな企業の方と話す中で、自分の視野が広がっていくのを感じました。当時は、事業会社の経営企画やPEファンドといった領域にも漠然と興味を持っており、そのあたりをゆるく探索していた状態でした。
そんな中、現職の会社から突然お声がけをいただきました。当時私は海外プロジェクトに入っていたのですが、ある日、電話で「日本に戻ったらご飯でもどうですか?」とお誘いがあり、「ぜひ」とお返事しました。
そして帰国後、食事の約束をして、集合場所として指定されたその会社のオフィスを訪れたところ、なぜか応接室に案内され…。その数分後、3人ほどの方が入ってきて、まさかの面接が始まったんです。私は完全にカジュアルな服装で、まったく準備もしていませんでした(笑)。
「なぜうちに来たいの?」「どんなことができる?」といった質問を受けて1時間ほどお話しした結果、その場で内定が決まりました。その後、予定通りご飯に行き、そこで「転職条件は何が希望ですか?」と聞かれたので、「これくらい出してくれるなら行きます」と答えたら、「わかりました、頑張ります」と(笑)。とてもユニークな採用プロセスでしたが、結果的にこの会社に入社することになりました。
― 現場の方から直接声がかかったとのことですが、どのような経緯だったのでしょうか?
現職から直接声がかかったような形ではありますが、実は最初、自分からその会社の別ポジションに応募していました。残念ながらそのポジションは最終的に通過しなかったのですが、その際に提出した履歴書が社内で共有されたようで、現在の部署の方の目に留まったのだと思います。
「この人と話してみたい」と思っていただけたようで、そこからカジュアルな連絡をもらい、面談につながっていきました。
-最終的に、今の会社への転職を決めた理由は何だったのでしょうか?
理由は大きく2つあります。
1つ目は、もともとコンサル時代から、いわゆる“自分たちのビジネス”を持っている事業会社に興味があったという点です。プロジェクトベースではなく、事業の成長に継続的に関わっていく立場に魅力を感じていました。
2つ目は、「人」です。転職活動を通じて、さまざまな会社の方とお話しする機会がありましたが、その中でも現職の方々とは「この人たちと一緒に働いてみたい」と思える出会いがありました。最終的にはそのフィーリングが、決め手になったように思います。
コンサルで培ったベーシックスキルの価値
転職する際、不安はありましたか?
はい、正直、かなり不安はありました。
もともとITコンサルの経験が長かったわけでもありませんし、当時は現職のプロダクトがどんなものかも詳しく理解していませんでした。そんな中で、「営業チームに入ります」と決断したので、前職の同僚からは「本気か?」「無謀じゃないの?」と思われていたかもしれません。自分自身も、正直かなり迷いはありました。
でも最終的には、「もし失敗したら、そのときはそのとき。またコンサル業界に戻ろう」と思えたことが大きかったですね。
-実際に転職をしてみて、不安だった部分はどうでしたか?
不安に思っていた点は、やはりある程度“現実になった”というか、最初は分からないことだらけでした。
でもその中で強く感じたのは、「価値を出す」ということは、必ずしも知識や経験だけで成り立つものではないということです。むしろ大事なのは、コンサル時代に叩き込まれた“ベーシックスキル”だと気づきました。
たとえば、相手の話をきちんと聞いて理解する力。言語化されていない課題を読み取り、仮説を立て、自分の意見を持つ力。そして、それらをPowerPointやExcel、Wordなどで適切に可視化し、伝える力。こうしたスキルは、職種や業界を問わず、どんなロールでも本当に重要だと思います。
実際、現職に入ってみて、「そういった基本的なスキルをきちんと使える人」が意外と少ないと感じたのも事実です。コンサル時代に鍛えてもらったおかげで、自分がまず発揮すべき価値はここだと自然に見えてきた。だからこそ、ポジティブに仕事へ向き合えたと思っています。
プロダクトを武器に、経営層と向き合う営業という仕事
― 現在の仕事内容について教えてください。
現在は、自社プロダクトの導入や活用を支援するサービスの営業を担当しています。いわゆる「営業」と言っても、単なるモノ売りではなく、お客様の課題を深く理解した上で最適な解決策を提案するスタイルなので、コンサルティング営業にかなり近い仕事だと感じています。
コンサル時代は、どちらかというと既存のお客様に対して「次はどんな価値を提供できるか?」を考え、提案書を作って継続的な案件を獲得するという形が多かったと思います。既存顧客に深く入り込み、自分の次のアサイン先となるPJを作っていくような働き方でした。
一方で、現在は基本的に新規のお客様が対象です。しかも、現場担当者ではなく、経営層や社長クラスと直接ディスカッションしながら、「どのような事業変革を実現したいのか?」という上流の構想段階から提案を進めていきます。
お客様のビジョンを実現するために必要なライセンスや支援内容は、ヒアリングや議論を通じて柔軟に設計し、最終的に契約へとつなげていきます。契約が成立したあとは、デリバリーチームへスムーズに引き継ぎ、私はまた次の顧客開拓へと向かいます。
― そうなると、提案から契約まではかなり時間がかかるのでしょうか?
そうですね、比較的長いプロセスになることが多いです。
そもそも「契約ありき」で始まるわけではなく、まずはお客様と対話を重ねながら、課題や目指す方向性を深掘っていくところから始まります。なので、短期で決まることはあまりなく、少なくとも3ヶ月以上かかるケースが一般的ですね。
-他にコンサルとの提案の違いとかってあったりしますか。
はい、やはり一番大きな違いは、「プロダクトを担いでいる」という点だと思います。
コンサル時代は、導入支援サービスや知見そのものに対して価値を感じていただく世界でした。お客様は、成果物やプロジェクト単位で「この取り組みにどれだけの価値があるか」を判断し、それに対して対価を支払うという構図です。
一方で今は、事業会社の立場としてプロダクトを持っているため、そもそものゴール設定や価値の出し方が根本的に異なります。私たちのミッションは、「導入支援サービスを契約してもらうこと」ではなく、「お客様に自社プロダクトを活用してもらい、その中で成果を出していただくこと」です。
そのため、導入支援の契約が発生しないケースもありますし、それが目的でもありません。場合によっては、無償の支援を通じて信頼関係を築き、最終的にプロダクトの導入に至ることもあります。そうした一連の活動が、私自身のサービス営業としての売上に直結しなかったとしても非常に重要だと考えています。
こうしたスタンスや判断は、「プロダクトを背負っている」からこそ出てくるもので、コンサル時代の提案とは本質的に異なる部分だと感じています。

技術の進化を“当事者として体感”できる面白さ
-現在の仕事で「面白い」と感じる部分はありますか?
やっぱり、ITテック企業に来て強く感じるのは、技術の進化のスピードとそのインパクトです。今、生成AIやAIエージェントといった新しい技術が次々と登場していますし、少し前まではSFの世界だと思われていたような「感情を持つAGI(汎用人工知能)」も、現実味を帯びてきています。
昔読んだ本に書かれていたような、「AIが人間の労働力を代替する未来」が、もうすでに始まっているんだなと。そういった変化が、まさに目の前で起きている。その“ダイナミズム”を、最前線で体感できているのは本当に面白いですね。
実際、私たちのような導入支援サービスも、ほんの数年前までは「人がプロジェクトにアサインされてチームを組み、対価を得る」というモデルが当たり前でした。でも今は、「いかに人を張り付けずに、テクノロジーを活用して価値を提供するか」が問われる時代になっています。
実際に、我々が提供するサービスの裏側でも、AIを活用するケースが急増しています。つまり、技術の進化が働き方やビジネスモデルそのものを変え始めている。その変化の渦中に自分がいて、それを“当事者として目撃できる”ことが、今の仕事の一番面白いところだと思います。
-現在の仕事で、大変だと感じる点はありますか?特にコンサル時代と比べて難しさを感じる部分などがあれば教えてください。
はい、大きく3つあると感じています。
まず1つ目は、「外資系企業ならではの制約」です。私の今の会社は、かなり“がっつり外資”なので、日本市場に合わせて柔軟にビジネスを組み立てたり、製品戦略を変更したりする裁量が現場には基本的にありません。戦略やプロダクトはすべてグローバルで決まっていて、日本はあくまで販社という立場です。
日本のお客様は文化や業務プロセスが独自で、標準パッケージをそのまま適用しづらいことも多いです。ある程度アジャストして売ることはできても、本質的にフィットした提案ができないもどかしさがあります。
2つ目は、「営業とコンサルの分業構造による社内調整の難しさ」です。コンサルファームでは、自分が営業して、自分でデリバリーもするスタイルが一般的でした。だからこそ「売る内容を自分が把握している」安心感がありましたし、納得感のある提案ができたんです。
でも現職では営業とコンサルが別の組織で動いており、「営業が勝手に売っている」「デリバリーが納得してくれない」といったすれ違いが本当に起きる。社内の合意形成に時間がかかるし、調整にも神経を使います。
3つ目は、「プロダクトを前提とした提案の限界」です。お客様が本当に求めている“デジタルトランスフォーメーション”というのは、システム導入だけではなく、組織設計や人材育成、中計の見直しまで含めた包括的な取り組みです。
たとえば、「この先の市場環境に備えて、どの領域にリソースをシフトするか」「どんな機能が組織に必要で、それを担う人材をどう育てていくか」といった話に、本当は踏み込まないといけない。でも、我々はあくまで自社プロダクトを中心とした支援しか提供できない立場なので、視野を広く持っていても、実際の提案には限界がある。そのギャップが非常に歯がゆく、難しさを感じる部分です。
コンサルに戻りたくなる瞬間と、現職で得た“視座”
-コンサルにもう一度戻りたいと思うことはありますか?
正直に言うと、そう思うこともあります。
特に最近は、マネジメントの立場としてお客様の経営層・役員の方々とお話しする機会が増えてきているのですが、その中で「自分の力不足」を痛感する場面も多いです。
お客様の中には、IT業界で何十年もキャリアを積んできた方々がたくさんいらっしゃって、その専門性や経験の深さには本当に圧倒されます。そうした方々と対等に議論するためには、自分ももっと技術や業界の背景に対する理解を深める必要があると感じます。
そういった意味で、コンサル時代のように、さまざまなテーマに対して徹底的に深掘りし、クライアントに価値を提供していくというスタイルには、今でも強い魅力を感じています。幅広いテーマに触れられる点や、専門性を高めながら課題解決に貢献していける点は、やはりコンサルならではの醍醐味だと思います。
-仮にもう一度コンサルに戻るとしたら、今の会社での経験がどのように活きると思いますか?
はい、それは間違いなく大きな強みになると感じています。
今の仕事では、大企業の経営層と対話しながら意思決定に深く関わる機会が多くあります。そうした経験を通じて培われた「視座の高さ」は、確実に自分の中での財産になっていると思います。
たとえば、現場の声だけをそのまま受け取るのではなく、経営層・中間層・現場という各レイヤーが何を見て、何を重視しているのかを丁寧に見極めた上で、全体最適を意識した提案を構築する力。こうした力は、もしコンサルに戻った場合でも、非常に価値のあるスキルだと感じています。
単なる課題解決だけでなく、“組織全体を俯瞰して意思決定をリードしていく力”は、まさに今の環境だからこそ得られたものだと思います。
成果が収入に直結する“外資テック営業”の魅力
― 収入面について、コンサル時代と比較して変化はありましたか?
はい、プロモーションの影響もありますが、ざっくり言うと、コンサル時代と比べて年収は約2~3倍になっています。
この大きな変化の背景には、現在のポジションが「営業職」であるという点が大きく関係しています。私の所属する会社では、コンサル時代と比較すると、給与の一部が営業成績に連動するインセンティブ設計になっています。
もちろん、すべての外資系企業がこうした仕組みを採用しているわけではありませんが、私の会社ではこのように「成果が正当に報われる」報酬体系が明確に設計されており、非常に大きなやりがいにつながっています。
― ワークライフバランスの観点では、いかがでしょうか?
今の会社では、ワークライフバランスは非常に良好だと感じています。
前職のコンサルファーム時代は、どこかに「ハードワーク=評価される」という文化があったように思います。私自身も新卒でそうした環境に入ったので、「長時間働くのが当たり前」という感覚が染みついていた部分がありました。
一方で現職では、考え方がまったく異なります。重視されるのは、限られた時間の中で自分のタスクをどうマネジメントし、どのようにアウトプットを出すか。自己管理能力が強く求められる環境です。
「だらだら働く」ことは非効率と見なされ、各ロールごとに職務が明確に定義されているため、責任範囲も非常にクリアです。また、グローバルで人員配置が設計されているため、残業が発生する状況は「組織としての設計ミス」か「個人のパフォーマンスの問題」として捉えられます。
実際、平日は会議がなければ17時以降に仕事をすることはほとんどありません。その代わり、朝少し早く起きてメール対応をしたりと、自分にとって最適な働き方を自律的に選ぶスタイルです。週末もきちんとリフレッシュして、オンとオフの切り替えが自然にできる働き方が根付いています。
週末はしっかりリフレッシュして楽しむ――そんな働き方が自然に根付いています。
コンサル出身者こそ「社会にどう貢献するか」を軸に
― 最後に、ポストコンサルとしてキャリアを考える方へのアドバイスをお願いします。
結局のところ、私たちがどの職種・業界に進もうとも、日本市場や日本企業と向き合う以上、「日本にどう貢献できるか」という視点は避けられないと思います。
実際、グローバルの中で見たとき、日本企業は多くの面で遅れをとっていると感じます。たとえば、真の意味でのデジタルトランスフォーメーションの実現や、変化に対するスピード感などです。世界が急速に変化する中で、日本が今のままでは本当に衰退してしまう――そんな危機感を強く持っています。
だからこそ、事業会社であれ、再びコンサルに戻る場合であれ、あるいは金融業界など別の業界であっても、「どうやって日本企業の変革を支えるか」という視点を持って働いてほしいと思います。
もちろん、世の中には「データアナリストが流行っている」とか「この資格を取ればいい」といったトレンドもありますが、最終的には「お客様にどれだけ価値を提供できるか」「自分がどう貢献できるか」という本質に立ち返るべきです。
そして、コンサル出身の方々には、すでに“ベーシックスキル”という大きな強みがあります。だからこそ、そのスキルを活かして、自分の視座を高く保ちつつ、「自分がこの社会にどんなインパクトを与えられるのか」を意識しながらキャリアを選んでいってほしい。そうすれば、どんな環境でもきっと活躍できると信じています。
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