事業を動かす当事者へ─大手メーカー、コンサルを経てプロダクトマネージャーに転身

事業を動かす当事者へ──大手メーカー、コンサルを経てプロダクトマネージャーに転身

新卒で大手メーカーに入り、戦略立案やIT施策に興味を持ってコンサルティングファームへ。そこでの経験を糧に、現在は大手事業会社でWebサービスのプロダクトマネージャーを務める──。多忙なコンサル生活を経て「自分の手で事業を動かす」道を選んだ理由と、ポストコンサルとして歩んだキャリアのリアルに迫ります。

Interviewee Profile

新卒で大手メーカーに入社し、事業企画部門でマーケティング領域を担当。その後、Big4コンサルティングファームに転職し、グローバル案件含めて、マーケティング関連のプロジェクトに従事。ライフステージの変化を機に大手事業会社へ転身し、現在はITサービスのプロダクトマネージャーとして、サービスのグロースに取り組む。

目次

異動ではなく「好きを深める」選択──コンサル転職の理由

―ご経歴について簡単に教えてください。

大学を卒業後、大手素材メーカーに入社しました。そこでは事業企画のポジションで3年ほど経験を積みました。その後、Big4のコンサルティングファームへ転職しました。コンサルティングファームでは、主にデジタルマーケティング領域のプロジェクトに携わり、戦略立案からIT実装まで、一貫して支援するような案件を担当しました。現在は、大手事業会社にて、自社Webサービスのプロダクトマネージャーを務めています。具体的には、サービスの企画や中長期的な計画の立案といった上流工程を担っています。

―そもそも、なぜコンサルティングファームに転職されたのでしょうか?

1社目では事業企画として、事業部のマーケティング戦略に関わる業務を担当していました。ちょうどその頃、担当していた製品が海外市場で伸び始めていて、「海外市場でどのように展開していくか」「顧客にどう情報を届けるか」といったマーケティング戦略を検討する機会が増えました。具体的には、会員制製品ポータルサイトの立ち上げを含む顧客とのコミュニケーションチャネルの整理をリードすることになり、“ITを活用したマーケティング”という領域に面白みを感じていました。

ただ、その会社では定期的なジョブローテーションがあって、次の異動の話も出始めていました。「このまま別の部署に異動するより、自分が面白さを感じている仕事をもっと深めていきたい」と思い、ITやマーケティングに関われる環境を求めて、コンサルティングファームに転職することを決めました。

コンサルでの経験と、再び転職を選んだ理由

―コンサルタント時代に、特に印象に残っている案件はありますか?

最も印象に残っているのは、あるクライアントの製品サイトをグローバルでリニューアルするプロジェクトです。期間としても一番長く関わった案件で、製品ジャンルや情報種別ごとにバラバラに散在していたwebサイトを、グローバルで統一されたマーケティング戦略に基づいて再構築していくものでした。

情報の一元管理を目指しつつ、将来的に追加されるべき機能や、全体の構成の在り方まで含めて「グローバルにおけるWebマーケティングのあるべき姿」を定義し、それを実装まで落とし込んでいくプロジェクトでした。

開発はオフショア拠点と連携して進めており、日常的に英語でのやり取りも必要でした。規模も大きく、関係者も多いため、調整や推進には苦労もありましたが、そのぶん非常にやりがいのある経験でした。

―実際に、コンサルティング業界へ転職してよかったと感じていますか?

そうですね。転職して良かったと思っています。

1社目から転職を考えた当初は、希望するようなポジションがあまり見つからなかったんです。でも、一度コンサルを経験したことで、自分のスキルや業務範囲が広がって、次の転職では選べる業界や職種の幅が一気に広がりました。

実際に今の会社に転職できたのも、コンサルでの経験があったからこそだと思います。間にワンステップ、コンサルを挟んだことで、自分のキャリアの選択肢が大きく広がりました。

―なぜコンサルから転職しようと考えたのでしょうか?

きっかけのひとつは、ライフスタイルの変化でした。コンサルはやりがいも大きい反面、やはり業務量は多く、かなり多忙な日々を過ごしていました。

そんな中で、結婚をして家を購入し、「犬を飼いたいね」と夫婦で話すようになったんですが、ふと「この働き方だと犬を飼う余裕もないな」と感じたんです。そうした日常の会話の中で、将来の生活を考えた時に、もう少し余裕のある働き方にシフトしたいと思い、転職を意識し始めました。

自分の仕事が数字になる
──PdM職の面白さ

―転職活動はどのように進められましたか?

いくつかの転職エージェントの方からスカウトをいただき、その中で良い求人を扱っていそうな方とやり取りをしながら進めていきました。

これまでのキャリアで、1社目でもコンサルでもWebサイトのリニューアルやディレクションのような業務を経験してきたので、その経験を活かせるポジションを中心に見ていました。一方で、自分の希望としては、より上流の「マーケティング戦略」に関わるような仕事にチャレンジしたいという思いがありました。

ITの知識を活かしながらも、広義のマーケティングに携われる──そんな軸で求人を探していました。

―そのような転職軸の中で、具体的にはどのような企業を検討されましたか?

現職のようにITサービスを展開している大手事業会社はもちろん、新興系の消費財メーカーのデジタルマーケティング職や、クレジットカード会社のマーケティングポジションなども選択肢として検討していました。

―最終的な意思決定のポイントは何だったのでしょうか?

やはり、現職のポジションが自分の希望に最もマッチしていた、というのが大きな理由です。

ITの知識を活かしながら、広い意味でのマーケティング戦略に携われるポジションというのは、実はあまり多くありませんでした。たとえば、CRMに特化したポジションだと、どうしても業務範囲が限定的になりますし、ECサイトの運用やWebディレクター職だと、より実務寄りの“担当者”という立場に近くなってしまうケースも多かったんです。

その点、現職は「マーケティング戦略全体を設計する」という上流の役割を担えるポジションで、自分の経験と志向の両方にフィットしていると感じました。

―入社前に不安に思ったことはありましたか?

ありましたね。面接でお会いした方々はみなさん良い印象で、雰囲気もとても良かったのですが、一方でカルチャーが自分に合うかどうか、という点には少し不安がありました。

それまで、伝統的な大手メーカーとコンサルティングファームという、比較的“堅い”業界しか経験してこなかったので、インターネット系企業特有のスピード感やカルチャーに馴染めるのかどうかは、正直なところ気になっていました。

しかし、いざ入社してみるとフランクな方が多く、すぐに馴染むことができました。

―今の仕事で「面白い」と感じるのはどんなところですか?

やはり、インターネットサービスならではの「データの豊富さ」が一番大きいですね。ユーザーの行動データが非常に大量に蓄積されているので、それを抽出・分析して課題を見つけ、改善サイクルをスピーディに回していけるのが非常に面白いです。

さらに、プロダクトの意思決定者との距離も近いので、自分が見つけた課題に対して、改善策をすぐに提案・実行できる環境が整っているんです。日々の業務の中で、そうした提案をしながら、プロダクトを少しずつ良くしていけることに大きなやりがいを感じています。

“暗黙知”の壁
──事業会社で苦労していること

―逆に、苦労されている点はありますか?

そうですね、一番大変だと感じるのは「暗黙知」の多さです。入社して数年経ちますが、過去の意思決定や検討内容の履歴がきれいにドキュメント化されていないことが多くて、「なぜこの仕様になっているのか」「どんな議論があったのか」といった情報を探しに行くのが意外と大変なんです。

最近はだいぶキャッチアップできるようにはなってきましたが、それでもまだ「ここ、背景わかりづらいな…」と感じることはありますね。

―なるほど。過去にこういうことを試したんだよ、みたいな知見が蓄積されていないんですね。

そうなんです。たとえば、コンサル時代は、毎回プロジェクトに入る際にキャッチアップ資料がしっかり整備されていて、シェアポイントなどにまとまっているのが当たり前でした。でも今は、そういったナレッジの整理が十分にされていない場面もあって、過去の検討履歴を追うのに手間がかかることがあります。

―逆に言えば、そのあたりが今のところ一番苦労されている部分、という感じでしょうか?

そうですね、挙げるとすれば情報の整理の部分くらいかなと思います。もともと1社目も事業会社だったので、ルーチンワークや事業会社特有の承認プロセスには慣れていますし、特にストレスを感じるようなことはありません。

自律と専門性で動く
──PdMチームの働き方

―チーム内での人間関係や、同僚・先輩との関わり方について教えてください。

同じサービスを担当しているプロダクトマネージャーが4〜5人いるのですが、それぞれが異なる役割を担っています。私自身は、プロダクトの将来的な成長や数値計画の立案をメインに担当しており、そのために足元の数値やプロダクトの状態を見ながら、課題を見つけていくような仕事をしています。

日々の業務では、少し上のランクにあたるリーダーやサブリーダーの方とコミュニケーションをとりながら、フィードバックをもらって業務を進めています。ただ、同じチーム内でも他のメンバーとは担当領域がかなり分かれているので、密に一緒に作業をすることはあまりありません。

たとえば、UX改善にフォーカスしているメンバーや、裏側の機能開発を担っているメンバーもいますし、最近では「AIを活用した取り組みを進めたい」というテーマでジョインした新しいメンバーも加わってきています。それぞれが自分の専門性を持ちながら、必要に応じて戦略全体とすり合わせていく、という形で機能しているチームだと思います。


―なるほど、担当が明確に分かれている分、それぞれに裁量と責任があるという形なんですね。それは面白そうです。

そうですね、まさにその通りで。責任はありますが、そのぶん自分の裁量も大きいので、やりがいは大きいです。結構面白い環境だと思います。

自分のペースで働ける安心感──
ワークライフバランスの改善実感

―ワークライフバランスについてはいかがですか?

コンサル時代と比べると、格段に良くなったと感じています。今はフルリモート勤務で、朝10時から仕事を始めることが多いです。会議が夜に入るときや繁忙期は終業が22時を過ぎることもありますが、20時頃に業務が終わることも多いです。

担当領域が明確に分かれていて、それぞれが自律的に進めているというカルチャーもあって、「進捗どうなってる?」と細かく詰められるようなことはあまりありません。やるべきことをやっていれば、1日の過ごし方はかなり自由度が高いですね。

コンサルの頃は、毎週のクライアント定例に向けて資料を準備したり、タッチポイントが頻繁にあったりと、短期間でフィードバックを繰り返すような働き方でした。今はその頻度やテンポが落ち着いたことで、自分のペースで仕事に取り組めるようになった感覚があります。

それに加えて、会社の制度としても休暇が取りやすく、フレキシブルに動ける点も大きいですね。プライベートとのバランスをとりやすい環境だと思います。

―年収面はいかがでしたか?

そこは正直、良くなりましたね。コンサル時代よりもアップしました。
私の場合、スタッフ職位から転職したため、前職年収が特別高いわけではなかったからかもしれません

現場で磨かれる分析力──
スキルアップの実感と変化した視点

―実際に今の環境で働いてみて、キャリアやスキルの面で「成長した」と感じる部分はありますか?

そうですね、いくつかあります。ハードスキルの面では、入社後にSQLを本格的に学んで、今ではかなり深いレベルのデータ分析まで自分でこなせるようになりました。これは間違いなく現職に入ってから身についた力です。

一方で、よりソフトなスキルの面でも成長を感じています。たとえば、大量のデータを扱う中での「整理力」や「着眼点」、さらには、分析結果をどう見せて伝えるかといったアウトプットの仕方などですね。

特に、チーム内にプロダクトマネジメントの経験が豊富な方がいて、日々のやりとりの中でその人の思考や視点に触れながら、かなり刺激を受けています。実務を通してそうした感覚が少しずつ養われている実感があります。

―仮にもう一度コンサルに戻ったとしたら、以前よりも価値を出せそうだと感じることはありますか?

それは確かにあると思いますね。今の仕事を通じて、物の見方がだいぶ変わってきた実感があります。

たとえば、ユーザーに対してどんな施策を打てばどう行動するのか、それによってどういうデータが得られて、それをどう活かすのか──そうした思考のサイクルを、現場で日々PDCAを回しながら身につけてきたという感覚があります。

そういうリアルな肌感覚があると、仮にもう一度コンサルとしてクライアントに向き合ったときに、以前よりも具体的で、実行フェーズまで見据えたアウトプットが出せるんじゃないかなと思います。

―最近はコンサルティングファームでも、伴走型で実行・運用フェーズまで支援するケースが増えていますよね。

そうですね、運用フェーズまで関わるプロジェクトでこそ、実務経験のある人ならではの視点や提案ができると思います。

―逆に、コンサル時代に身につけたスキルが、今の仕事で活きていると感じる場面はありますか?

はい、それは結構ありますね。
たとえば、システム案件においては、コンサル時代に要件定義やワイヤーフレームの作成、リリースまでの一連の流れを経験したことで、現在の職場でもデザインチームや開発チームとスムーズに連携が取れています。

また、定性調査に関わっていた経験も活きています。調査設計からユーザーインタビューまでを自分ひとりで完結できるのは、当時の経験のおかげです。

あとは、そこまで大げさに「これはコンサルのスキルです」と言うつもりはないのですが、資料の作り方ひとつ取っても、やはり違いを感じることがあります。
たとえば「1スライド1メッセージ」や「何を伝えたいのかを明確にする」といった、コンサル時代には当たり前だったことが、事業会社では必ずしも徹底されていないことも多くて。

そうした中で、どう見せれば伝わるか、どうビジュアル化すれば理解されやすいか、といった感覚は、コンサル時代にかなり鍛えられました。
そのおかげで、社内の他部署との調整でもほとんど齟齬が起きず、伝えたいことがしっかり届いて納得感を持ってもらえることが多いと感じています。コンサル時代の経験が、今の業務の随所で活きていると思いますね。

意思決定→行動→結果──
今のキャリアにある“手触り感”

―最後に、“ポストコンサルキャリア”を考えている方に向けて、メッセージをいただけますか?

そうですね。まず、コンサルで培ったスキル──たとえば「物事を構造的に捉えて、簡潔に伝える」とか、「相手の意図を汲んで的確にアウトプットする」といった力は、事業会社に移っても本当に強みとして活きると思います。社内のプレゼンや関係部門との調整、お客さまとのやりとりでも、間違いなく役立ちます。

事業会社では「自分の事業を自分の手で動かしている」という当事者意識を持つことができます。コンサルのときももちろんやりがいはありましたが、今は、自分が主体的に動いた結果が数字やユーザーの反応に現れるので、手応えがまったく違いますし、何より楽しいですね。

「自分で意思決定して、行動し、結果を見る」という流れの中にいると、モチベーションも自然と上がります。ポストコンサルとして事業会社にチャレンジするのは、すごくいい選択肢ではないかと思っています。

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