エンジニアからPMO、そして事業創出へ──“ポストITコンサル”転職のリアル

エンジニアからPMO、そして事業創出へ──“ポストITコンサル”転職のリアル

コードを書くエンジニアから、顧客折衝・調整力で勝負するコンサルタントへ──そして今、彼は新規事業をけん引するプロジェクトマネージャーとしてゼロイチの挑戦に取り組んでいる。キャリアの転機と向き合いながらも、働くことの本質を見つめ直した先にあった“やりがい”と“手触り”。多忙を極めたコンサル生活を経て、等身大でキャリアを築く彼が語る、ポストコンサルの真価とは。

Profile

新卒でSIerに入社し、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。業務システムの刷新や社内向けツールの開発に従事したのち、2020年にITコンサルティングファームへ転職。テックリードやPMOとして、大規模プロジェクトを多数経験する。現在はメガベンチャー企業にて、新規事業のプロダクトマネージャー兼プロジェクトマネージャーとして、ゼロイチのサービス立ち上げに取り組んでいる。

目次

“得意”を軸にキャリアを再設計──エンジニアからコンサルタントへ

― 簡単にご経歴を教えてください

大学卒業後、最初のキャリアとしてシステムエンジニアの会社に入社しました。プログラミングや要件定義など、SEとしての基礎を幅広く経験した後、2020年からは新興系のITコンサルティングファームに転職。およそ4年間にわたり、コンサルタントとして業務プロセスの改善支援やテックリードとしての役割など、多岐にわたるプロジェクトに携わってきました。

その後はメガベンチャーに転じ、新規事業のプロジェクトマネージャーとしてプロダクトの立ち上げや推進に取り組んでいます。

― 1社目では具体的にどのようなお仕事をされていたのですか?

主に、大手保険会社のシステム開発に携わっていました。具体的には、既存システムのマイグレーション案件で、COBOLで書かれたソースコードをJavaに置き換える作業を担当していました。単なる言語変換にとどまらず、画面のUI刷新も併せて行い、ユーザーの要望を踏まえながら、要件定義から設計・実装、顧客との調整まで幅広く対応していました。

このプロジェクトに2年ほど従事した後は、やや特殊な案件にも関わりました。ある企業の経営企画部長が経営報告に活用する、専用の情報収集支援システムの開発を担当しました。利用者が1人という特殊な前提の中、使いやすさや即時性を重視しつつ、要件を丁寧に詰めながら開発を進めました。

― 新卒で入社されたエンジニア職から、コンサルティングファームに転職されたきっかけを教えてください。

もともとSEとしてキャリアをスタートしたのは、ITの基盤をきちんと身につけたいという思いからでした。ただ実際に現場でさまざまな経験をする中で、自分はコードを書くよりも、人とコミュニケーションを取りながら物事を調整し、前に進めていくような仕事の方が向いていると感じるようになったんです。スキル的にも、性格的にも、そうした役割の方がフィットすると思いました。

そこで、より上流の工程に関われる仕事を探す中で、コンサルタントという選択肢に自然と行き着きました。コンサルティングの中にもいろいろな領域がありますが、自分としては、これまでのIT技術の経験を活かして価値を発揮できるポジションにこだわりたくて。そういった理由から、ITコンサルティングの道を選びました。

大規模PJをPMOとして牽引──コンサル時代の挑戦と成長

― コンサルティングファーム時代には、どのようなプロジェクトに関わられていたのですか?

特徴的なものを挙げると、2つのプロジェクトが印象に残っています。

ひとつは、工作機械業界を対象にしたDX推進プロジェクトです。私はアプリケーション開発のテックリードを務めつつ、一部PMO的な立場も担いました。当初、自社からは2名体制で参画していましたが、開発チーム全体では30~40名規模の体制でした。

もうひとつは、大手金融グループ向けの会計システム導入支援プロジェクトです。グループ全体で新規システムへの刷新に向けて、私は子会社1社に専属で入り、導入推進を担当しました。自社からは当初5~6名で参画し、最終的には20名体制へと拡大。親会社・グループ各社・子会社と非常に多層的な関係性の中で、総勢数百名規模のプロジェクトとなりました。私が担当していた子会社チームも50~60名規模で、調整・展開にあたってはかなりのコミュニケーションと全体設計の視点が求められました。

― これらのプロジェクトに携わる中で、大変だったことや乗り越えたエピソードがあれば教えてください。

特に印象深かったのは、工作機械メーカー向けのDXプロジェクトです。大きく2つの面で、難しさを感じました。

1つ目は技術面です。私が担当していたのは、認証基盤など専門性の高い機能領域で、一定以上の技術的理解がなければ、そもそも適切な提案すらできない内容でした。元々得意としていた分野ではなかったため、関連ドキュメントの読み込みや国内外の事例調査を重ねながら、集中的にキャッチアップする日々が続きました。

2つ目はマネジメント体制の変化です。プロジェクトの途中で上長が育児休業に入り、私一人が自社代表として全体対応を引き継ぐことになりました。十分な引き継ぎ期間も取れなかったため、プロジェクト初期はうまく立ち回れず、関係者にご迷惑をおかけした部分もあったと思います。

特に難易度が高かったのは、新機能の導入提案において、顧客企業の部長や執行役員クラスに対して、技術的な妥当性や導入効果をわかりやすく説明し、納得を得るプロセスです。社内に壁打ちできるメンバーもほとんどおらず、構想の立案から説明手法の検討まで、基本的に一人で考え抜く必要がありました。

当時はプレッシャーも大きく、苦労の連続でしたが、最終的にはプロジェクト内で「任せられる存在」として信頼を得られるようになり、自信と成長につながる貴重な経験となりました。

“このままでいいのか”の違和感──転職を後押しした働き方の課題

― ITコンサルティングファームからの転職を考えたきっかけを教えてください。

大きく2つの理由がありました。

1つ目は、働き方に関することです。これまでの職場はいずれも客先常駐型の働き方だったため、徐々に自分の「所属意識」が薄れていくのを感じていました。せっかく仕事を頑張っていても、ずっとお客様のオフィスで、お客様の目を気にしながら働く日々に、どこか違和感がありました。

2つ目は、将来のキャリアを見据えたときに、長期的にこの働き方を続けていくイメージが持ちづらかったことです。コンサルタントという職業は、とてもやりがいがある一方で、高い期待値とハードワークが求められます。実際、コンサル時代は月の残業が40時間を超えるのが当たり前で、出社案件では土日含めて100時間を超えたこともありました。

このまま10年後、20年後も第一線で走り続けられるかと考えたときに、自分には少し無理があるかもしれない、と感じたんです。もっと自然体で、長く続けていけるような働き方にシフトしたいという思いが、転職を考えた大きなきっかけでした。

― 数ある選択肢の中で、今の会社に決めた理由を教えてください。

これまで培ってきたスキルを活かせる場として、IT業界に絞って転職活動を進めました。選択肢としては、事業サイドか情シス(情報システム部門)かの二択でしたが、話を聞いていくうちに、「自分でプロダクトをつくって、それが世の中に残っていく仕事がしたい」という気持ちが明確になっていき、最終的には事業サイドでに絞って転職先を探しました。

ただ、実際に転職活動を始めてみると、事業会社は「明確なビジョンへの共感」や「カルチャーフィット」が求められる傾向が強く、思った以上に狭き門だと感じました。有名スタートアップの企業にも複数応募しましたが、なかなかうまくいかず、正直苦戦しました。

そんな中、今の会社の面接を受けた際、事業やプロダクトの課題、今後取り組みたい方向性が、私のこれまでの経験と驚くほど合致していて、面接の中でも会話がとても盛り上がったんです。最終面接では、「新規事業も一緒にやってみるのはどう?」というお話までいただき、それを聞いたときに「それは面白そうだな」と素直に思いました。

やるからには、価値のあるプロダクトを生み出したいという思いもあったので、挑戦できる環境に惹かれて、最終的に今の会社への入社を決めました。

ゼロイチの現場で見つけた、働きがいと持続可能なキャリア

― 現在はどのようなお仕事を担当されていますか?

現在は、新規事業の立ち上げに取り組んでいます。世の中にすでに存在するビジネスモデルに対して、自社のアセットや知見を掛け合わせ、新たなプロダクトをつくっていく──というコンセプトで進めているプロジェクトです。まだ世に出ていないプロダクトのため詳細はお伝えできませんが、業種はある程度絞り込んだ上で企画・開発を進めています。

私はプロジェクトマネージャー(PM)という立場ではありますが、プロダクトマネージャー(PdM)がいない体制なので、実質的にPdMの役割も兼任しています。具体的には、マーケティングチームと連携して競合調査を行い、ビジネス要件やユーザー要望を整理した上で、必要な機能を定義し、開発メンバーと一緒に実装を進めています。

チームは現在3名体制で、私とエンジニア2名。エンジニアリングに関しては、メインの担当ではありませんが、開発環境が整ってきたタイミングで自分でも試験的にコードを書いたり、プロトタイプを動かしてみるといったことにも挑戦しています。少人数のチームだからこそ、領域にとらわれず柔軟に動けるのが魅力ですね。

今後は、プロダクトが形になってきた段階で、営業やカスタマーサクセスといった体制も段階的に整えていく予定です。2〜3期目くらいには、事業としてのスケールを本格的に意識しながら、組織づくりにも関わっていきたいと考えています。

― エンジニアやコンサルタントとしてのご経験は、現在のお仕事にどのように活きていますか?

まずエンジニアとしての経験についてですが、開発プロセス全体を実務として経験していたことは、今のプロジェクト推進に非常に役立っています。特に、上流から下流まで一通りの工程を経験していたことで、開発計画を立てる際に各フェーズで何が起きるかを具体的にイメージできるのは大きな強みです。課題が起きたときにも「現場で何が起きているか」を肌感覚で把握できるので、リスク管理や意思決定にも活かせています。

一方で、コンサル時代に培った論理的思考やドキュメンテーションのスキルも、今の業務において欠かせない要素になっています。現在携わっている新規事業は、立ち上げ初期で情報がほとんど整っていない状態からのスタートでした。その中で、競合調査やマーケット分析の結果を整理し、プロダクトの方向性を考える際には、仮説構築や論点整理の力が非常に活きています。また、関係者との認識を揃えるためにドキュメントを作成し、情報を適切に伝えていくという点でも、コンサルで培ったスキルはそのまま活用できていると感じます。

エンジニアとして“現場を知っている”こと、そしてコンサルとして“構造的に考える”こと。その両方があるからこそ、今のような不確実性の高いフェーズでも、一定の自信をもって前に進めているのだと思います。

― 現在のお仕事の中で、特に苦労されていることはありますか?

はい。技術的な観点では、開発言語の選定や開発手法の設計に関しては特に苦労しています。今回の新規事業では、単にプロダクトをつくるのではなく、将来的なスケーラビリティも意識して、ドメイン駆動開発(DDD)を取り入れようと考えているんです。ただ、DDD自体がこれまであまり触れてこなかった分野であるため、前提となるナレッジや設計思想に対する理解を深めるのにかなり時間がかかりました。

もしエンジニアとして継続的に手を動かしていたら、自然と身についていたかもしれない知識も、間にコンサル時代を挟んでいたこともあり、ブランクを感じる瞬間もありました。特に、DDDに適した言語や設計パターンの選定、開発チームとしての体制設計などは、最初の段階で判断が難しく、当時の上長にかなりサポートしていただきながら、ようやく枠組みを整えることができたという背景があります。

今も技術のキャッチアップは日々続けていますが、新しい概念や方法論に向き合うことで、自分の思考の幅も広がっている感覚があり、苦労しながらもやりがいを感じています。

― 現在のお仕事におけるやりがいを教えてください。

一番のやりがいは、やはり「プロダクトをゼロからつくり上げていく」ことです。まだ何もないところから、自分で考えたアイデアを形にして、それをチームに共有・発信しながら少しずつ形にしていく――そのプロセスそのものに大きな魅力を感じています。

正解がない中で、自分の仮説を立てて動いてみる。時には試行錯誤もしながら、それが機能としてプロダクトに反映されていく過程には、これまでの仕事にはなかった面白さがあります。

スケジュールについても、まだ明確にリリース時期を決めているわけではありませんが、現時点では「おおよそ1年以内に形にしたい」といった大まかなロードマップを描きながら進めています。何も決まっていないからこそ、自分たちで決めていける自由度の高さも含めて、今のフェーズならではのやりがいだと感じています。

― ハードワークという点では、前職と現在で働き方にどのような変化がありましたか?

そこはかなり大きな違いがあると思います。前職のITコンサル時代は、クライアントワークという特性もあり、技術的なキャッチアップはもちろん、時には無理な要望を短納期で形にするような場面もありました。緊張感も強く、「情報を追い切る」「無理を通す」ことが日常的だったという感覚です。

実際の残業時間で言うと、時期にもよりますが、月40時間以上は当たり前で、多い時はかなり上下も激しかったです。記録に残していないものも含めれば、もっと長く働いていたと思います。

それに比べると今は、自分である程度コントロールできる範囲が広がっていて、業務時間そのものも体感としては半分程度に減ったと感じています。現在の残業は月20〜30時間程度。私自身がPMとしてプロジェクトを牽引していることもあり、立ち上げフェーズでやることは多いのですが、それでも前職のような極端なハードワークにはなっていません。

求められるアウトプットの質は高いですが、自分の裁量で進められる分、精神的な負担も以前と比べてずいぶん軽くなったと感じています。

― 今後の目標やキャリアの展望について教えてください。

まずは直近の目標として、現在取り組んでいるプロダクトをしっかりと立ち上げ、形にしていくことに注力したいと考えています。自分自身が企画し、推進していく中で価値を出し、実績として積み上げていく――そのプロセスをしっかりと経験したいですし、今後のキャリアの土台にしていきたいと思っています。

将来的には、その経験を活かして、新しいビジネスを立ち上げる際のリード的な立場を担えるようになりたいという思いがあります。まだ明確なプランがあるわけではありませんが、PdMやPMといった枠にとらわれず、マーケティングや経営企画といった領域にも視野を広げながら、ビジネスを包括的に捉えて動ける人材を目指したいと考えています。

所属している会社自体も、新規事業に対して柔軟で、社内異動や提案の機会も多い環境です。社長や他部署の方とも距離が近く、やってみたいことを提案すれば、しっかり耳を傾けてもらえるカルチャーがあります。そうした環境を活かしながら、社内でもさらにチャレンジを重ねていきたいと思っています。

“外に出る”から見える景色──コンサル出身者へのメッセージ

― 最後に、ポストコンサルとしてキャリアを考えている方に向けて、メッセージをお願いします。

コンサルタントとして働いた経験は、業界を問わず本当に幅広く活かせると思います。論理的な思考力や、限られた情報から本質を見抜いてアウトプットを導き出す力は、どの職種でも通用するものだと感じていますし、私自身、今のプロダクトマネジメントの仕事でも、そういったスキルが大きな武器になっています。

だからこそ、「コンサルを離れたらキャリアが崩れるんじゃないか」と不安になる必要はまったくないと思います。むしろ、コンサルで培った力を活かして、自分が本当にやりたいことに挑戦できる土台がすでにある――それがポストコンサルの強みだと感じています。

実際、私はいま事業会社で新規事業に取り組んでいますが、働き方の自由度や社内でのコミュニケーションのしやすさなど、前職とはまた違った「働きやすさ」を実感しています。チームで一緒にプロダクトをつくり上げる文化や、若手中心の活気ある社風もあり、日々刺激を受けながら仕事に向き合えています。

今後のキャリアをどう描くかは人それぞれですが、「一度外に出てみる」という選択肢も、きっと新しい視点や可能性を広げてくれるはずです。

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