ITエンジニアからITコンサル、事業会社のコンサルへ──変化を選び続けたキャリア

現場主義のITエンジニアとしてキャリアをスタートし、やがてより広い視座を求めてコンサルティングの世界へ。現在は事業会社で新設されたコンサル部隊で組織づくりにも関わるなど、複数の軸で価値を発揮する方に、転職の背景や現職での挑戦、そしてこれからの目標について伺いました。
新卒でIT企業に入社し、エンジニアとして業務アプリケーション開発やRPAを活用した業務自動化に従事。ITコンサルファームではPMO・マネージャーとして大規模プロジェクトを推進。現在は事業会社のコンサルティング部門にて、業務改革や制度設計などのクライアント支援に携わる一方、組織拡大フェーズにある自部門の採用や運営体制の整備にも取り組んでいる。
エンジニアからスタートしたキャリアの原点
― 簡単にご経歴を教えてください
1社目では、ITエンジニアとして約5年間、主にアプリケーション開発を中心に携わっていました。特に、RPAなどの業務自動化ツールを活用し、現場の業務ヒアリングから設計・開発までを一貫して担当していました。
その後、ITコンサルタントとして2社目に転職し、約3年間コンサル業務に従事しました。主にシステム更改や刷新プロジェクトに関わり、PMOとしての立場からプロジェクト推進を支援したり、立ち上げフェーズにおいて顧客向けの提案や戦略立案に携わる機会も多くありました。
現在は3社目となる事業会社に転職し、事業会社の新規部門として立ち上げられたコンサルティング部隊にて働いています。
― ITエンジニアとしてキャリアをスタートされた背景を教えてください
もともと高校・大学の頃からIT分野に興味があり、理系を選択して進学しました。就職活動は地元を中心に進めていたのですが、「自分が楽しく働けそうな会社」「ワクワクできる環境」を重視して企業を見ていました。
実は、1社目に入社した会社は、インターンシップを通じて出会った企業なんです。そこで出会った社員の方々や人事の方とのやり取りの中で、「この会社なら自分に合いそうだな」と感じたのが決め手でした。
入社後は、地元にある本社での新卒研修を経て、東京支店に配属され、そこから東京での勤務が始まりました。
― エンジニアからITコンサルタントへのキャリアチェンジを決めた背景を教えてください
1社目で約5年間、RPAなどを使った業務自動化や業務改善に取り組んでいく中で、「RPAだけでは解決できない課題がある」と感じるようになりました。もっと幅広い視点でクライアントに価値を届けられるようになりたい──そんな思いから、ITコンサルタントへの転身を決めました。より多様な課題に向き合い、解決の選択肢を増やしていきたいというのが一番の理由です。
実は転職活動自体はその前にも一度経験しています。入社から3年目のとき、求人サイトなどを使って複数社に応募し、内定もいくつかいただきました。ただその時はエンジニア職での転職を想定していて、コンサルは選択肢にありませんでした。結果的に当時の上司と話し合い、自社内でより上流の業務やリーダー的な役割を任せてもらえることになったため、現職に残る選択をしました。
その後、改めて5年目のタイミングで転職を決意します。きっかけは、よりキャリアの幅を広げたいという気持ちに加え、役職や年収といったキャリアパス面でも今の会社では限界があると感じたからです。年功序列が強く、昇進までにあと5年はかかることがわかったことで、自分で変化を起こせる環境に身を置きたいという思いが一層強くなりました。
― 転職時には、複数のコンサルファームを検討されていたのでしょうか?
はい、いくつか受けていました。
そのなかで最終的に前職を選んだのは、「ここで働きたい」という気持ちが一番強かったからです。実は最初、エージェントさんから紹介されるまで社名すら知らなかったのですが、調べていくうちに「おもしろそうな会社だな」とワクワクしたのを覚えています。YouTubeやWebサイトを見ながら、新しいことにチャレンジしている社風や雰囲気に惹かれました。
正直に言うと、一番条件が良かったのは別のコンサルファームでした。ただ最終的には、年収よりも「どんな人たちと、どんな環境で働きたいか」を重視しました。働くイメージが一番具体的に持てたのが前職だったので、そこが決め手になりました。
コンサルファームでの挑戦と成長
― コンサル時代に印象に残っているプロジェクトについて教えてください
さまざまなプロジェクトに携わってきましたが、最も印象に残っているのは、1年以上にわたって関わった「営業店端末刷新プロジェクト」です。ちょうどそのプロジェクトを通じてマネージャーに昇格したこともあり、節目として強く記憶に残っています。
このプロジェクトは、ある金融系企業の営業店舗に設置されている専用端末を、全国で1万台以上入れ替えるという大規模なものでした。私が参画した当初は、ほぼ私一人が稼働するごく小規模な体制からスタートしました。まだお客様側でもプロジェクトの全体像が固まっておらず、支援の方向性や必要なリソースについて、ディスカッションを重ねながら設計していくフェーズでした。
その後、支援内容の提案や体制構築を進める中でチームは拡大し、最終的には8名体制に。私はプロジェクト全体のマネージャーとして、チームの取りまとめと品質管理を担いました。
プロジェクトでは、5年後、10年後も継続して使用できること、品質保証の観点からも安定稼働が見込めることを前提に、実際の銀行ユーザーの声もヒアリングしながら、複数回の提案・検討を経て、刷新の方向性を固めました。
端末そのものの選定に加え、その中に搭載する業務アプリケーションも並行して刷新が必要だったため、要件定義・基本設計・詳細設計といったシステム開発の上流工程を一貫して担当。私は詳細設計までのフェーズを主導し、その後はテスト・運用フェーズへと引き継がれました。
技術・業務・マネジメントの三位一体で取り組む必要があるプロジェクトであり、個人としてもチームとしても大きく成長できた経験だったと感じています。
転職とキャリアの再定義──事業会社コンサル部門への決断
― ITコンサルファームからの転職を考えたきっかけを教えてください。
正直に言うと、転職については日々意識していました。自分のキャリアをどう築いていくか──今の会社に残り続けるのか、それとも新しい環境に移るのか──そういったことは常に頭の中にありました。ただ、「今すぐに動く」というよりは、「どのタイミングで動くのがベストか」ということを見極めていた、という感覚に近いです。
そんな中で、プロジェクトマネージャーとして体制を拡大し、長期スケジュールを引く立場になったことで、自分の中でひとつの区切りが見えてきました。「このタイミングであれば、現場や組織にも迷惑をかけずに次のステップへ進める」という納得感が持てたのが大きかったです。
実は、転職という選択肢だけでなく、「別のプロジェクトに異動する」という道も模索していました。社内でもその希望を伝え、何度も相談したのですが、当時はちょうどクライアントとの関係性を拡大していくフェーズで、会社としては私にそのままプロジェクトを牽引してほしいという意向が強かった。そこに、やや方向性のズレを感じたというのも、今回転職を決めたひとつの理由です。
― 数ある選択肢の中で、なぜ事業会社のコンサルティング部署を選んだのですか?
これまでのキャリアでは、コンサルタントとしてプロジェクト単位でクライアントを支援してきましたが、次第に「チーム単位ではなく、もっと大きな視点で“組織”を動かしていきたい」という思いが強くなってきました。ただ一方で、ゼロから立ち上げるスタートアップのような環境ではなく、ある程度のバックボーンがある企業で、既存の本業とシナジーを持ちながらコンサル事業を伸ばしていける環境の方が、自分にはフィットするとも感じていました。
そうした中で出会ったのが、現職の事業会社のコンサルティング部署です。コンサルティング事業としてはまだ立ち上げフェーズではあるものの、本業という強い基盤があることで、単なる“外部支援”にとどまらず、事業全体との相乗効果を生み出せる環境に惹かれました。
実際には、求人サイト経由でスカウトをもらったことがきっかけです。ちょうど「そろそろ動くタイミングだな」と思っていた時期でもあり、他には有名スタートアップのプリセールスのポジション等で内定をいただきましたが、最終的には「どちらの環境の方が、自分にとって3年後のキャリアの選択肢を広げられるか」という観点で比較し、現職を選びました。
― 現職では、どのようなお仕事をされていますか?
最初に携わったのは、大手企業の人事制度策定プロジェクトでした。中でも特徴的だったのは、社内でも特に専門性の高い人材──いわゆる「高度人材」と呼ばれる層に向けた評価制度を新たに設計するというテーマです。外部の労働市場データやAIを活用しながら、他社で活躍している同水準の人材がどのようなスキルやマインドを持っているのかを分析し、それをもとにクライアントと一緒に評価項目を組み立てていきました。
私はマネージャー職として、もう一人の同職位メンバーと2名体制でプロジェクトに取り組み、全4部門分の評価シートを短期間で作成しました。特に技術系の部門については専門性の高い文献や資料にも目を通す必要があり、想像以上にリサーチの時間が必要でしたが、そのぶん多くの学びがありました。プロジェクトは非常に密なコミュニケーションが求められる内容でしたが、クライアント側の協力体制もあり、役員の方々とも直接やり取りしながら設計を進めることができました。現在はこの実績をもとに、他部門での支援も継続しています。
現在は、業務改革(BPR)のプロジェクトに携わっています。業界としてはやや特殊な領域ではあるのですが、ある大手企業で、2030年までに事務作業の工数を半減させるという中長期の目標が掲げられており、それに向けた支援をしています。業務プロセスを一つひとつ可視化して、どこに改善の余地があるのかを整理するところからスタートし、そこに加えて、組織構造の見直しや、テクノロジー(特にAI)をどう活用するかといった観点までをカバーしています。
「どの業務にAIを適用すべきか」「それによってどのような人材像が求められるか」などを検討しながら、クライアントの将来像を描いていくプロジェクトで、かなり上流のレイヤーから関われている実感があります。前職とはまた違った手応えや責任感を感じながら、日々取り組んでいます。
― これまでのご経験やスキルは、今のお仕事にどのように活きていますか?
どのフェーズの経験も、今の自分の土台になっていると感じます。最初にエンジニアとしてキャリアをスタートした時は、いわゆるロジカルシンキングの基礎を徹底的に鍛えられました。たとえば「Aを実行したらBが発生し、条件によってCとDに分岐する」といったような、アルゴリズムや業務ロジックを細かく詰めていく思考法は、今もプロジェクトを構造的に捉える場面で役立っています。
また、当時はエンドユーザーの方と直接やり取りすることも多く、業務内容をその場でヒアリングしながら業務フローに落とし込むといった実践を重ねてきました。お客さまの言葉を整理し、図式化して伝える力──これは今のコンサルティングの場面でも大きな武器になっています。
その後、ITコンサルとして経験を積む中では、より論理的に、かつ簡潔に物事を伝えるスキルが鍛えられました。同時に、インフラやアプリケーションに限らず、広範なIT領域への理解も深まり、いわゆる“システムの全体像”を描けるようになったのはこの時期です。技術と業務をつなぐ立場としての視点を獲得できたのは、大きな転機だったと思います。
現在は、コンサルティング組織の一員として、よりビジネス寄りの課題に取り組んでいます。社内のメンバーの多くが戦略・業務コンサルティング出身ということもあり、技術のバックグラウンドを持っている自分の視点が、チーム内でも差別化されていると感じます。お客さまのビジネスとシステムの両方を理解し、それらを関連付けて議論できる──この“両軸を持っていること”が、今の自分の強みです。
組織づくりへの関与とこれからの展望
― いわゆる“コンサルティングファーム”ではなく、事業会社のコンサル部門を選ばれたことで、感じている魅力や特徴はありますか?
そうですね、実際に働いてみて感じているのは、「シナジーがあるからこそできること」の幅がとても広いという点です。たとえば本業である事業領域に既にしっかりとした顧客基盤や信頼があって、その中で自然と生まれるニーズに対してコンサルとして提案ができる。そういう意味では、最初からプライムで深く入り込める案件も多いですし、単なる外部支援にとどまらない、事業と一体化した支援ができるのが強みだと思います。
また、組織としてもまだ成長途上で、今後さらに人を増やしていこうというフェーズにあるため、単に与えられた業務をこなすのではなく、組織そのものを形作るような経験もできます。私が所属しているコンサルティング部門も、現在は数十名の規模ですが、毎月新たなメンバーが加わっていて、急拡大しています。
それに加えて、もうひとつ面白いなと思っているのが、社内でのキャリアの柔軟性です。コンサルティング部門で入社したとしても、実際に働く中で「もっと事業企画寄りの仕事がしたい」「マーケティングの現場に関わりたい」と思った時に、事業会社内で異動できる可能性がある。実際に、私の周りでもマーケティングや経営企画などにキャリアを移した方がいます。
これは、従来のファーム型コンサルティングではなかなか難しいことだと思います。縦割りの構造が強く、部門を越えた異動やキャリアチェンジの機会は限られていますが、事業会社であればそうした柔軟な動きができる。特に「ずっとコンサルを続けるイメージはないけれど、まずは経験を積みたい」といった方にとっては、将来の選択肢が広がる非常に魅力的な環境だと思います。
― 現職で働く中で、「ここが一番やりがいだ」と感じる瞬間はどんなときですか?
今、一番やりがいを感じているのは、「組織を自分たちの手で動かしている」という実感を持てるところですね。今の部署では、単にプロジェクトにアサインされて業務をこなすだけでなく、採用計画の策定や要件設計、新しく入ってくるメンバーのアサイン調整まで、かなり幅広く関わっています。
たとえば、今どれくらいの人員が必要か、どんなスキルセットが求められているかを踏まえて、どのポジションを採用するのかを決めたり、入社後にどの案件にアサインするかを検討したり──そういった意思決定に、マネージャー以上のメンバーで日々関わっています。組織としてどう収益を上げていくか、今年の予算をどう達成していくかといった、いわば“部門の経営”に近い視点で物事を考えられる環境なんです。
こうした働き方は、まさに「コンサルとしてだけでなく、組織そのものをつくっていきたい」と思っていた自分の志向とマッチしていて、日々の業務にも手応えを感じています。実際に私は現在、採用業務にも深く関わっていて、カジュアル面談から最終面接まで担当していますし、それが組織評価にもきちんと反映される仕組みになっています。
今のチームは、縦割りではなく“自分たちで採用し、自分たちで案件を獲得し、自分たちでデリバリーまで行う”という、非常に自律的で横断的なスタイルを取っていて、それも大きな特徴です。裁量の広さは責任の重さでもありますが、その分、意思決定のスピードも早く、自分の行動がダイレクトに組織の成長につながるのは、大きなやりがいですね。
― 逆に、今の仕事の中で「難しいな」と感じていることや、今後ご自身としてさらに取り組んでいきたいと感じていることがあれば教えてください。
そうですね、まずクライアントワークの観点で言うと、現在関わっている業界のプロジェクトでは、業界特有の文化や考え方が根強く残っていると感じています。たとえば業務改革の提案に対しても、前向きに捉えてくれる方がいる一方で、少し懐疑的に見る方もいて、そのあたりの温度差に配慮しながら進めていくのは、なかなか難しい部分があります。
特に、関係者が多く、部門をまたいだ連携が必要な場面では、情報共有の精度やスピードが鍵になります。何を、誰に、いつ、どう伝えるのか。ここが少しでもずれると、プロジェクト全体の動きにも影響が出てしまうので、今まさにそこは個人としても意識して改善していきたいと思っているところです。
また、もう一つの難しさとしては、社内──自分が所属するコンサルティング組織そのものの仕組み化、というテーマもあります。現在はまだ立ち上げフェーズで、「まずは目の前の仕事をこなす」というスタンスになりがちなんですが、それだと情報が属人化しやすくなってしまう。たとえば「今どのくらいの人を採用しようとしているのか」「誰がどの領域を見ているのか」といった情報が、全体には見えづらいという課題があります。
今後、ジュニア層のメンバーが増えていく中では、こうした情報をどう整理し、伝達していくかがより重要になってくると思います。だからこそ今のうちから、仕組み化や運用のルールづくりに取り組んでいく必要があるなと強く感じています。
― 今後の目標について教えてください。
現時点での目標は、自分のポジションをさらに引き上げていくことです。組織の中での役割や責任を拡大することはもちろんですが、具体的には「自分自身の武器を持つこと」が重要だと感じています。これまでは、どちらかというと“取れた案件に最適な人をアサインする”という受け身のスタイルが中心でしたが、今後は「このテーマなら自分に任せてください」と言えるような専門領域を持ちたいと思っています。
特に、業務改善・業務改革の分野には強い関心があります。RPAエンジニアとしてキャリアをスタートした頃から、業務の構造を見直すことや、プロセスそのものを最適化することにやりがいを感じてきました。今も業務改革プロジェクトに携わっていますが、この領域でより深い知見と実績を積み重ねていきたいと考えています。
― 最後に、ポストコンサルキャリアを考えている方に向けて、アドバイスやメッセージをいただけますか?
少し偉そうに聞こえたら恐縮なんですが、コンサルタントってキャリアに悩みやすい職種だなと個人的に思っていて。何でもできるし、何でもできそうに見えるからこそ、「結局自分は何がしたいんだろう?」と立ち止まってしまうこともあると思うんです。
ただ、そんなときこそ、まずは“直感”を信じて動いてみるのも大事だと思います。「なんか面白そう」「ちょっとワクワクするかも」──そんな感覚を大事にして、思い切って飛び込んでみる。たとえそれが完璧な答えじゃなかったとしても、きっと次の選択肢に繋がっていくと思うんです。
今はキャリアの選択肢も本当に多様ですし、かつ一度決めた道を軌道修正することだって全然できます。だからこそ、少しでも「面白そうだな」と思えることがあるなら、ぜひ一歩踏み出してみてほしいなと思います。
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