第二新卒でのBig4コンサルを経て、大手メーカーでサプライチェーンのDXに挑戦(ポストコンサル体験談)

第二新卒でBig4のうちの1社に入社し、その後2社を経て、現在は大手メーカーでサプライチェーンのDXに取り組む方にインタビューを行いました。転職のきっかけや現職の面白さ、コンサルティングファームでのDX支援との違い、ワークライフバランス等について詳細にお話を伺いました。

INTERVIEWEE PROFILE

第二新卒でBig4に入社し、サプライチェーン領域のコンサルティングプロジェクトを経験。その後、Eコマース企業、D2Cスタートアップを経て、大手メーカーに転職。現在はDX部門のメンバーとして、サプライチェーンのあらゆる領域におけるデータの可視化や活用を推進中。

目次

第二新卒でBig4コンサルを経験し、現在は大手メーカーでDXに取り組む

―簡単にご経歴を教えてください

これまでのキャリアとしては、3PL→コンサル(Big4)→Eコマース企業→D2Cスタートアップ→大手メーカーという流れです。

大学時代に物流に少し関連するような研究をしたこともあり、サプライチェーンに興味があったので、新卒で3PL(3rd  Party Logistics)業界の会社に入社しました。

3PL(3rd  Party Logistics)とは?

荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託し、ロジスティクスの企画・設計・運営を行う事業会社のこと

その会社では2年ほど働いて、倉庫からの出荷管理などを担当していました。しかし、結局3PLでは、サプライチェーンにおける一番最後の出荷にしか関与できなかったため、もう少しサプライチェーン全体の領域に関わっていきたいと考え、Big4のうちの一社に第二新卒として入社しました。

Big4時代は、在庫適正化などのコンサルティングプロジェクトを中心に経験しましたが、徐々に机上での話だけでなく、実務としての在庫管理にも携わりたいと思うようになりました。

そこで自分で在庫管理ができそうなEコマースの会社に転職しました。この会社で在庫管理の実務経験を積むことができましたが、ビジネスモデルとして、自社製造ではなく、他社から仕入れた商品の販売のみであったため、在庫管理と言っても、発注をするだけでした。私としてはやはり調達や生産にも関わりたいという気持ちがあり、再度転職することにしました。

そこで、次に転職したのはD2Cスタートアップでした。しかし、結論からいうと、この会社は半年ほどで退職してしまいました。理由としては、私のリサーチが不足していたのですが、この会社は製造を自社で行っておらず、調達・生産も含めたサプライチェーン管理に携われなかったからです。OEMメーカーと直接かかわる機会があればまだ良かったのですが、その会社の場合、商流に商社を挟んでいたので、調達・生産との距離がありました。それまで培った経験やスキルは非常に活かせる仕事でしたが、やはり自分の想いとして、生産・調達まで含めたサプライチェーン管理を経験したいという気持ちがありました。

改めて転職先を探し始める中で、調達や生産まで関わろうとすると、大手の製造メーカーに行く必要があると考え、現職の会社に転職しました。

―転職活動で、苦労したことはありますか?

現職に入社する際の転職活動では、前職のスタートアップを半年で短期離職していたため、書類で落されることが多かったです。そういう意味では苦労しました。

―現職ではどのような業務を担当されていますか?

入社当初は、サプライチェーンの部署に配属され、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを活用して、海外販売会社のPSI(生産・販売・在庫)データの可視化に取り組みました。約2年間にわたり、データの可視化や活用に関する改善を進める中で、社内でも「BIツールを用いたデータ整備や可視化ができる人材」としての立ち位置が確立されました。その結果、DX部門への異動となり、より幅広い領域でのデータ活用推進を担当することになりました。

現在の業務は、生産や在庫管理に加え、調達やアフターサービスなど多岐にわたる領域において、現場業務の課題をデータ活用によって解決することです。

―仕事内容としてはコンサルっぽい印象を持ちました。

その通りですね。コンサルタントのような働き方に近いかもしれません。業務の進め方としては、社内のサプライチェーン実務者にヒアリングを行い、データ活用の要件を整理した上で、BIツールなどを用いてデータを可視化します。そして、現場で実際に活用してもらえるように、現場に落とし込んでいきます。

現場で使われるものにコミットし切れるのが、社内の人間としてDXに関わる良さ

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―一方で社内の人間として業務のDX化を行うのは、コンサルとの違いもありますか?

コンサルティングファームの場合、限られた期間・工数の中でプロジェクトを完了させる必要があるため、スコープを絞り込まざるを得ません。一方、私は社内の人間として業務のDX化に携わる際、作成したツールやダッシュボードが現場で使われないことが最も勿体ないと考えています。そのため、現場の方が求めている要件は可能な限り取り入れ、確実に活用してもらえるようにコミットしています。期間を限定せず、現場に役立つと思われる改善は積極的に取り入れ、実際に使ってもらえるまで関与し続けられるのは、社内の人間ならではの良さだと思います。

―他にコンサル時代との違いはありますか?

コンサル時代は主に物流戦略の案件に携わっていました。例えば、理想的な在庫管理の在り方を考える際、現在の3PLを継続するべきか、変更する場合にはRFPをどのように作成すべきかといった内容です。私の経験上、Big4レベルの金額感の案件では、サプライチェーンの細かいオペレーションに入り込んで改善するようなことはあまり無い印象です。やはり現場の改善となると、物流会社の中にいるコンサル部隊とかがやっている印象ですね。こういう人たちは自分たちでもフォークリフト乗り回せるような物流のプロフェッショナルです。

その点、前職も含めて事業会社に転職したことで、より現場に近いオペレーションの改善に関与できるようになりました。

データ活用によって、サプライチェーンの現場を改善できる面白さ

―今の仕事のやりがいや面白みを教えてください。

現在はデータを扱う仕事をしているため、データ活用によって会社に大きなインパクトを与えられるところが面白いと感じています。

一人ひとりがオペレーションを頑張って在庫を適正化していくのは職人技の世界ですが、データを使って実態を可視化し、合意形成を図りながら現場改善を進めることで、サプライチェーン全体により大きな影響を与えられるのがデータ活用の醍醐味だと思います。現在はデータ活用の素地を社内に構築している途中ですが、施策の効果という点で、データ活用によってレバレッジを効かせられているという実感があります。まだ完全に現場にデータ活用の文化が浸透しているわけではありませんが、浸透していけばさらに改善できるという確信を持っています。

また、サプライチェーンのオペレーションにおいて、どのようなデータが必要かを自分の頭の中でトレースしながら考えていくのも面白いですね。一般的にデータ活用というと、データ分析からインサイトを導出し、施策を提案するイメージがあるかもしれませんが、私の業務はオペレーション改善に重点を置いているため、業務の中でどのようなデータを提示するかを考えることが中心です。自分が業務を行う際の思考の流れに沿って、必要となるデータを想定しています。

―何か具体的なイメージを教えて頂けますか?

例えば、在庫管理の観点で実務者に安全在庫のレコメンドを提供する際、単に安全在庫量をレコメンドするだけでは、実務者としてはレコメンドの根拠が気になるはずです。計算結果だけを示すと、現実的にはあり得ない数値が出力されることもあります。

そのような場合に備えて、レコメンドされた数値がどのような計算過程で算出されたのかを示すレポートを別途用意し、実務者が違和感を覚えた際にドリルダウンして確認できるようにしています。計算過程を確認することで、実務者は今後もそのトレンドが継続すると判断すればその数値を採用し、キャンペーンなどによる一時的な上振れだと感じれば数値を調整できます。実務者がオペレーションを行う中で疑問に感じる点に対して、的確に答えられるようなデータの可視化を心がけています。

中途採用者の多い部門に入ったことで、働きやすさを感じている

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―いわゆるトラディショナルな大企業で働かれていますが、裁量権を持って働けていますか?

そうですね。上司に一つ一つお伺いを立てる必要はなく、自分が適切だと考えた方法で現場に提案し、自由に推進しています。裁量権や自由度の高さは部署によっても異なるとは思いますが、私が所属しているDX部門は比較的自由な環境です。上司も元大手コンサルティングファーム出身者です。

―やはりコンサル経験者が周囲にいる方が働きやすいと思いますか?

必ずしもコンサル経験者である必要はないと思いますが、転職者が一定の割合を占めている環境の方が、コンサル出身者にとっては働きやすいかもしれません。そうでない場合、意思決定のスピードや合理性などの点で、コンサルティング業界とは大きく異なる雰囲気を感じ、やりづらさを感じる可能性があります。

私が所属しているDX部門には中途採用の人が多く、最初に私を採用してくれたサプライチェーン部門の上司も中途採用で入社した方だったので、働きやすい環境でした。特にコンサル出身者が大手事業会社に転職する際は、その部門にどの程度中途採用の人材がいるのかという点が、一つの判断基準として良いかもしれません。

大手だからこそ、未経験職種にもチャレンジできた

―日系の大手事業会社に転職して良かった点はありますか?

私がサプライチェーンの人材として入社し、データ領域にキャリアを拡げられたことも関係していますが、未経験の領域にチャレンジできる可能性があるのは大手企業の良い点だと考えています。

私のように一定の年齢に達している場合、未経験でデータアナリストとしてどこかの会社に転職するのはかなり厳しかったでしょう。しかし、大手では、ある程度会社内で評価を得た上で、自分のやりたいことがあり、かつポジションが用意されている場合、未経験でもチャレンジする機会を与えてもらえると感じました。

大手企業だからこそ、ある程度の人員的にも余裕がある中でチャレンジさせてもらえる側面があると思います。小規模な会社では、そもそも各部署が人員的に厳しい状況にあることが多く、未経験のポジションに異動するのは難しいイメージがあります。特に最近は大手企業でFA制度・社内公募制度が増えてきているため、未経験の領域にも挑戦しやすくなっているのではないでしょうか。

―他に良かった点はありますか?

製造業であるため、海外のサプライヤーや製造拠点とのやり取りもあるのですが、個人的には海外との仕事は初めての経験だったため、キャリアの幅が広がったと感じています。文化の違いを実感することもありますし、同じことをするにしてもこれほど考え方が異なるのかと苦労することもあります。ただ、そのような文化の違いを感じながら働くのは面白いと思っています。

寝技が出来るタイプではないからこそ、
コンサル時代のロジカルシンキングが活きている

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―コンサルティング業界を経験したからこそ、現職で活きていることはありますか?

やはりロジカルシンキングやロジカルプレゼンテーションだと思います。例えば、社内でデータ利活用を提案する際に、協力を得たり、実際に使ってもらったりする時に役立っていると感じます。

特に私は、人と仲良くなって「こいつが言うなら仕方ない」と思ってもらえるタイプではないと自己認識しています。しっかりと話をして、論理的に筋が通っている、本当にメリットがあるということを理解してもらう必要があるという意識が強いので、ロジカルシンキングとプレゼンテーションには力を入れています。そのような力は、まさにコンサル時代に身についたものだと思います。

―逆に、ギャップなどで苦労したことはありますか?

論理的に説明しても、物事が進まないことは正直あります。やはり人間なので、「やりたくない」「面倒だ」「今のやり方を変えたくない」というような反発はありますね。そうした中で、私としては仕事の中で確実にコミットメントを示していくしかないと考えています。

先ほど述べたように、仲良くなって人間関係で仕事を進めていくタイプではないので、仕事で信頼を得ていくしかありません。当たり前のことですが、何かを頼まれたら自分で期限を設定してしっかりと対応する、素早く返信するといったことです。

また、海外の方とミーティングをする際には、彼らのタイムゾーンに合わせるようなことにも気を配っています。日本にヘッドクオーターがあると、現地時間で深夜に海外の人を呼び出すようなことがよくあります。でも、もし自分が逆の立場で、あまりやりたいと思っていないことについて深夜に呼び出されたら、やる気が失せてしまいますよね。そのような点は、自分が彼らのタイミングに合わせて仕事をするなど、かなり意識しています。

働く時間はコントロールしやすい

―ワークライフバランスの変化はいかがでしょうか?

Big4時代は、私が入社したころから徐々にホワイト化し始めていたこともあって、それほどハードに働いた印象はありません。特に私が所属していた部門は、労働時間の管理が厳しかったので、それほど激務という印象はありません。一番忙しかったのは、Eコマースの会社にいた時ですね。

現職では月間の残業時間は20時間程度です。働き方としては、在宅勤務と出社の日がありますが、私は家に早く帰って子供と一緒に過ごしたいので、出社の時は朝6:30には出社して、早めに帰宅しています。

コンサル時代との違いでいうと、自分でスケジュールをコントロールしやすい点が挙げられます。コンサルティングファームでは、クライアントワークが中心なので、お客様が遅めの時間に働いている場合、どうしても夕方や夜にミーティングが入ってくることがあります。しかし、現職では都合の悪い時間帯はブロックしておけば良いので、スケジュールの調整がしやすいです。

新卒コンサルなどは、早めに実務経験を積むのも選択肢の一つ

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―今後のキャリアについて考えていることはありますか?

そうですね。現職になってから、データ領域にキャリアの軸足が移ってきて、かなり面白いと感じているので、この分野で専門性を深めていきたいと考えています。ただ、データサイエンティストのような高度な解析をやりたいというよりは、しっかりとデータを整備することや、データを読み解くことに注力していきたいです。

イメージとしては、会社に眠っているデータを誰もが使える状態にして、それを活用してビジネスを改善していくということにチャレンジし続けたいですね。これを実践するだけでも、サプライチェーンの現場はかなり変化すると思います。

―最後に現役コンサルの方に向けて、ポストコンサルキャリアのアドバイスやメッセージを頂けますか?

もちろん、現在コンサルの仕事を面白いと感じているのであれば、コンサルタントとして頑張ればいいと思います。

しかし、ずっとコンサル業界でキャリアアップをしていくつもりがないのであれば、早めに実務経験を積んだ方が、その後のキャリアで上位のポジションに就きやすいのではないかと正直感じています。そのため、早い段階で自分が興味・関心を持った領域で実務に関わり、成果を出していくというのは選択肢の一つだと思います。

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