フリーコンサルは知っておきたい【下請け法とは?】
フリーランスコンサルタントの方々は、自身の専門知識やスキルを活かし、様々な企業の課題解決に貢献しています。一方で、フリーランスとして案件を受託しているという弱い立場ゆえに、クライアント等から理不尽な扱いを受ける可能性もあります。
委託元である大企業等から、中小零細や個人事業主等の委託先に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定されたのが、下請代金支払遅延等防止法(下請法)です。
本記事では、下請法の概要やフリーランスコンサルタントが下請法の適用対象となるかを詳しく解説します。
- 下請法の該当条件が分かる
- フリーランスコンサルタントが下請法に該当するケースが分かる
フリーランスコンサルタント完全ガイド
フリーランスのコンサルタントとして独立・成功するために知っておくべきことを網羅。フリーコンサルの始め方・開業から案件獲得までの流れ・エージェントの選び方などを知りたい方は、「【完全ガイド】フリーコンサルの始め方や案件獲得のポイントを徹底解説」も合わせてご覧ください。
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下請法とは?
下請法は、親事業者(委託元)と下請事業者との間の取引を公正なものとし、下請事業者の利益を保護することを目的とした法律です。具体的には、親事業者に以下のような義務を課しています。
- 発注書面(三条書面)の交付義務:具体的な契約内容を記載した注文書や契約書などの書面を交付する
- 下請代金の支払期日を定める義務:成果物の受領後60日以内かつできる限り短い期間になるよう支払期日を定める
- 書類の作成・保存義務:給付内容や下請代金の金額などの記録を書類として作成し、2年間保存する
- 遅延利息の支払義務:支払期日までに報酬を支払わなかった場合、遅延利息を支払う
また、親事業者による以下のような行為を禁止しています。
- 受領拒否の禁止
- 下請代金の支払遅延の禁止
- 下請代金の減額の禁止
- 返品の禁止
- 買いたたきの禁止
- 購入・利用強制の禁止
- 報復措置の禁止
- 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
- 合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定の禁止
- その他取引条件の一方的な設定、変更、実施の禁止
これらの義務に違反したり、禁止行為を行った場合、公正取引委員会による勧告や、場合によっては罰則の対象となります。
フリーコンサルは下請法の適用対象となるか?
下請法の適用対象
フリーランスコンサルタントがコンサルティング案件を業務委託で受ける場合、下請法の適用対象となるかどうかは、以下の2つの条件によって判断されます。
条件1
委託者(親事業者)とコンサルタント(下請事業者)の資本金の区分が、下請法の規制対象に該当する
条件2
コンサルティング業務の内容が、下請法の規制対象である「情報成果物作成委託」または「役務提供委託」に該当する
まず、「条件1」について詳しく見ていきましょう。下請法の適用対象となる資本金の区分は以下の通りです。
パターン | 委託者 | コンサルタント |
---|---|---|
1 | 資本金が5,000万円以上 | 5,000万円以下(または個人事業者) |
2 | 資本金が1,000万円以上5,000万円以下 | 資本金が1,000万円以下(または個人事業者) |
※委託取引内容が以下のいずれかに該当する事業者の場合の資本金区分条件を記載している
- 放送番組や広告の制作,商品デザイン,製品の取扱説明書,設計図面などの作成など,プログラム以外の情報成果物の作成
- ビルや機械のメンテナンス,コールセンター業務などの顧客サービス代行など,運送・物品の倉庫保管・情報処理以外の役務の提供
※委託取引内容が製造委託等の場合は、親会社の資本金が3億円以上で、委託先の資本金が3億円以下(または個人事業者)の場合は下請法の適用対象になるなど、資本金区分の条件が異なる
次に、「条件2」のコンサルティング業務の内容について見ていきます。下請法の規制対象となる業務のうち、コンサルティングで関連しうる業務には、「情報成果物作成委託」と「役務提供委託」の2種類があります。
「情報成果物作成委託」とは、ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなど、情報成果物の提供や作成を業として行う事業者が、外部の第三者に対して提供する情報成果物の作成を、他の事業者に再委託することを指します。コンサルティング業務の中でも、例えば事業計画書や分析レポートなどの成果物を作成する業務は、この「情報成果物作成委託」に該当する可能性があります。
ここで注意が必要なのは、委託者が自社で利用する情報成果物の作成を委託した場合でも、委託先社内に同様の情報成果物を作成する部署がある場合は、下請け法の摘要対象となる点です。つまり事業会社(エンドクライアント)に事業計画書や分析レポートなどを作成する部署がある場合に、フリーランスコンサルタントにその事業計画書の作成などを委託すると、下請法が適用される可能性があります。
一方、「役務提供委託」とは、各種役務サービスの提供を行う事業者が、外部の第三者に対して提供する役務の提供を、他の事業者に再委託することを指します。コンサルティング業務の中では、例えば委託者が第三者に提供するウェブサイトの分析業務を、フリーランスコンサルタントに再委託する場合などが、この「役務提供委託」に該当する可能性があります。
以上の2つの条件(条件1および条件2)を満たす場合、フリーランスコンサルタントが受託するコンサルティング案件は、下請法の適用対象となり得ます。下請法に該当する場合、委託者である親事業者は、前述の下請法で定められた義務を遵守し、禁止行為を行わないよう注意しなければなりません。
フリーランスコンサルタントとしても、クライアントから不当な要求をされた際は、まずは独占禁止法や下請法に違反しているかどうかチェックすることが重要です。例えば、報酬の支払遅延や減額、著しく低い報酬の一方的な決定、やり直しの要請、一方的な発注取消し、役務の成果物に係る権利の一方的な取扱いなどは、下請法上問題となる行為類型に該当する可能性があります。
フリーコンサルが下請法に該当するケース
フリーランスコンサルタントの場合、特にコンサルファームや案件仲介エージェントを経由して案件を受託するケースでは下請法の適用対象となっている可能性があります。
- エンドクライアント→コンサルティングファーム→フリーコンサル
(コンサルティングファームから、フリーコンサルに役務提供が再委託されているので、下請法の適用対象となる可能性がある) - エンドクライアント→コンサルティングファーム→案件仲介エージェント→フリーコンサル
(案件仲介エージェントから、フリーコンサルに役務提供が再委託されているので、下請法の適用対象となる可能性がある) - エンドクライアント→案件仲介エージェント→フリーコンサル
(案件仲介エージェントから、フリーコンサルに役務提供が再委託されているので、下請法の適用対象となる可能性がある)
これらのケースにおいて、実際に下請法が適用されるかどうかは、委託者と受託者の資本金の区分や、業務内容が「情報成果物作成委託」や「役務提供委託」に該当するかどうかなど、個別の条件によって判断されます。判断が難しい場合も多いため、下請法の適用について確認したい場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。