【フリーコンサル インタビュー(30代男性)】戦略ファームから独立し、事業開発とフリーコンサルに挑戦

本サイトのコンテンツにはPRが含まれている場合があります。

大手コンサルティングファームでの経験を経て、フリーランスコンサルタントとして独立する人が増えています。独立後のキャリアや収入、ワークライフバランスはどのように変化するのでしょうか。

今回は、戦略ファームから独立し、起業家として事業開発に取り組みながら、フリーコンサルとしても働かれている30代男性の方にインタビューを行いました。独立の背景やフリーランスコンサルタントとしての働き方、独立に興味があるコンサルタントの方へのアドバイス等について詳しくお話を伺いました。

Interviewee Profile

新卒で大手商社に就職しマネージャーを経験。その後、トップティアの戦略コンサルティングファームに転職し、主にエネルギー業界の戦略案件に従事。2023年にフリーランスコンサルタントとして独立。

エージェント経由だけでなく、
人とのネットワークを通じて案件の紹介を受けている

―簡単にご経歴を教えてください。

新卒で大手商社に入社し、エネルギー領域のトレーディング業務や事業投資、海外駐在を経験しました。その後、外資系の戦略コンサルティングファームに入社し、主にエネルギー業界のクライアントの中計策定やM&A支援などのプロジェクトに従事しました。2023年にフリーランスとして独立し、コンサルティングや事業開発など様々なビジネスを行っています。

―フリーランスコンサルタントとして独立した背景を教えてください。

独立のきっかけは3つあります。

1つ目は、副業として行っていた不動産投資がある程度うまくいき、不動産投資を収益の柱にできる感覚を得られたことです。

2つ目は、年収のハードルを上げ過ぎて動けなくなるキャリアよりも、ユニークな仕事を自分で選びながら生きていく人生にしたいという気持ちを持っていたことです。そのため、商社からファームに転職してからも、機会があれば思い切ってチャレンジしようと考えていました。

3つ目の理由としては、育休期間中に試しにフリーランスの仕事を受けてみた際に、独立してもやっていける自信がついたからです。戦略コンサルの仕事を通じて様々な力はついたと思うものの、業界専門性が高いとは言えず、社外でどこまで通用するかわからないと感じていました。しかし、実際にフリーランスとして働いてみて、テーマについて素早くキャッチアップし、意思決定を支援するという能力があればしっかりと価値を出せるという感覚を得られました。

不動産とフリーランスコンサルタントをかけ合わせれば、独立してもあまりリスクはないと感じ、外の世界への魅力と安心感が高まってきたところで、独立を決心しました。

―フリーコンサル案件はどのように獲得されていますか?

案件の獲得は、案件仲介エージェント経由と知り合いからの紹介経由の2パターンがあります。案件仲介エージェントについては、副業の際に利用したサービスを独立後も引き続き活用しています。

一方で、知り合いからの紹介経由も多く、それが私の特徴でもあると考えています。もともと私は新しい人と仲良くなることに時間を割いており、そういった中で生まれた繋がりから案件を紹介してもらうことができています。

例えば、飲み会で知り合った方が、大企業とのプロジェクトやスタートアップ支援を積極的に行っているクリエイティブデザイナーでした。その方が企業からデザイン等の相談を受けた際に、経営についても相談を受けることがあるようで、そういった際に私を紹介いただいています。

また、人づての紹介で知り合った、個人でM&Aにおけるセルサイドのファイナンシャルアドバイザーとして活躍されている方がいます。この方のご紹介で、投資ファンドなどの市場調査案件を受けることもあります。また、売却を考えている事業オーナーの方がいる際に、私がピッチ資料の作成や財務モデリングを行い、ファイナンシャルアドバイザーの方が金融面のアドバイスや買い手探しをするなど、お互いのスキルを補完し合う形で、良い協業関係を築くことができています。

起業と平行して、フリーコンサルとして活動。
独立後はより本質的な価値の提供に集中

―現在のフリーランスコンサルタントとしての稼働率を教えてください。

フリーランスとしての活動は50%程度です。残った時間で、直接依頼を受けた市場調査や企業研修の作成、そして起業家としての事業開発も行っています。フリーランスの稼働率を50%で抑えつつ、残りの時間でやりたいことをやっているというイメージです。

―フリーランスコンサルタントになってから参画しているプロジェクトについて教えてください。

案件仲介エージェントの紹介で参画しているのは、上場を目指している時価総額50億円程度の会社の社長の右腕として働く案件です。この案件はプロジェクトのスコープが明確に決まっているというよりは、その時々の状況に応じて様々なテーマを支援しています。具体的には、事業戦略の検討や営業資料の改善等のオーガニックな成長に向けた支援を行ったり、上場に向けたアライアンス戦略の検討、エクイティストーリーのブラッシュアップといった議論の相手をしたりしています。

知り合いの紹介で受ける案件については、市場調査や大企業の新規事業開発の支援が多いです。フリーランスとして独立以降は、ユニークな案件や自分が興味を持てる案件を意図的に受けるようにしています。

―独立してから、仕事のやり方やマインドセットの面でファーム時代とは変えたことはありますか?

価値を出そうとする意思は変わらないですが、オーバーデリバリーしようとする気持ちは多少減りました。また、資料を必要以上に作り込むよりも、しっかりと議論を準備するようにしています。全体的に作業的な工数は減らしつつ、本質的な価値を出すことを意識しています。

―フリーコンサルをしている方の中には、継続受注への不安などから、ついオーバーデリバリーしてしまうという方もいます。

フリーランスとの相性や案件との相性があると思います。私と同様に戦略ファームから独立してフリーランスコンサルタントとして活動している方を数名知っていますが、ある人はフリーランスの方がしんどかったと言っていました。

一方で、100%稼働の案件を同時に2〜3つ受けている人もいます。この人はとにかく得意なテーマの案件に絞って受けているので、レバレッジさせやすいようです。また、いきなり半年~1年などの契約を結ばず、まずはお試しで1か月の契約を結び、お互いにバリューを感じられたら更新していくようにしているそうで、自分を信頼してくれるクライアントと仕事ができていることも大きいようです。私の場合も案件の内容やクライアントとの相性が良かったため、うまくデリバリーできています。

―他にファーム時代と変えたことはありますか?

価値の出し方が若干変わった気もします。私は調査案件などで何かを調べたい時に、『あの人に聞けばこの分野に詳しい経営者や専門家に繋がれるかもしれない』といったように、人的ネットワークを組み合わせて価値を出しています。

結局、大手のコンサルファームも社内ネットワークで専門家に話を聞けたり、横展開できるマテリアルがあったりすることが価値の1つです。個人で仕事をする時も、同様に人との繋がりがあると良いと感じています。そのためにも、フリーランスだけひたすらやるのではなく、ネットワーキングをしたり、ゆるい協業関係をつくっておいたりするような動きが重要だと考えています。例えば私はベンチャーキャピタリストとゆるい協業関係を築いていますが、スタートアップ動向の調査依頼が来た時は、そのベンチャーキャピタリストに協力を仰ぐことで、効率的に価値ある情報を得ることができます。

フリーコンサルとして独立後も、スキルアップできている

―フリーランスコンサルタントになってキャリアアップやスキルアップを感じることはありますか?

独立前はフリーランスになるとスキルアップは難しいと思っていましたが、独立後もスキルアップを感じることができています。

一般的にコンサルティングファームに依頼が来る案件はテーマが重くて大きいです。そのため、日々新しいトピックで瞬間的に仮説を出すというよりは、細かい調査に基づく仮説検証が中心です。一つ一つのタスクという観点では深く考えて効率的に行っていますが、発想力というよりは、作業の細かい仮説検証で頭を使うことの方が少なくとも自分の場合は多かったです。

一方で独立後は、様々な細かい案件をたくさん受けています。ファーム時代と比較すると小さな問いではありますが、非常に多くの問いに向き合っているため、仮説検証するスピードが上がったと感じています。

また、私は新規事業開発に関する案件を中心に受けています。その結果、似た頭の使い方をすることが多く、専門知識も横展開しやすいため、そういった意味でも仮説検証の質・速度や専門性が高まっていると感じています。

―フリーランスとして独立して大変だったことや苦労したことはありますか?

正直にいうとありません。最初の案件でクライアントに気に入ってもらい、良いスタートが切れたということもあるとは思います。独立後は楽しく働くことができています。

―ファーム時代と比較してワークライフバランスはいかがですか?

全体的に稼働が下がっています。私の場合はファーム時代に事業DD等に関わることも多く、かなり長い時間働いていたので。

独立後は土日も結構働いたりしていますがそれは好きでやっています。家で自由に仕事ができて、時間も調整できるので、例えば子供とお風呂に入る時間がとれるとか、お昼ご飯を近くの店で妻と一緒に食べれるとかは、ファーム時代は全くできなかったので、メリットを感じています。

―フリーランスコンサルタントになるデメリットはありますか?

機会損失があるのかもしれないということです。

ファームにいれば、首になるリスクやプレッシャーはあるにせよ、昇進し続ければ年収5,000万〜1億円も可能です。また、PEファンドに転職して頑張れば、より大きなアップサイドがあるかもしれません。フリーランスとして独立すると、そういった道が断たれるわけです。

また、漠然とした不安のようなものもあります。コンサルティングファームでプリンシパルやパートナーになるとキャリアとして積みあがっている感覚があるのに対して、フリーランスとしてひたすら色々な案件を受けて稼いだ先に何があるのかという不安はあります。何者なのかよく分からない、色々やっているよく分からない人になってしまうことがバッドシナリオとしてはあるかもしれません。

マルチタスクができれば、年収でファーム時代を超えることも可能

―収入面はいかがでしょうか?

私の場合は起業家としての新規事業開発にもかなりの時間を割いていますが、フリーランスコンサルタントの方で月に200万円程度を稼ぐことはそれほど難しくありません。

たとえば最近2件ほど案件が始まりましたが、どちらも稼働率10〜15%程度で受け取る報酬は100万円以上です。もちろんこれらの案件は仲介エージェント等を通さず、知り合い経由でダイレクトで受けているからこそ、非常に高単価な案件となっていますし、頻繁にこのような案件があるわけではありませんが。

ただ、50%稼働の案件は時間の融通も利きやすいので、同時に3案件は受けられる感覚があります。そもそもファーム時代に稼働率150%で働いていたので、マルチタスク的な頭の使い方が得意であれば、同じような働き方で50%案件を3つ受けて月300万の報酬は不可能ではありません。もちろん50%の案件自体が少ないので、現実に成り立つかということはありますが、少なくとも100%稼働でリモート中心の案件1つと50%稼働の案件1つを平行するのは可能だと思います。

私の場合は自身の事業との兼ね合いで、フリーランスとしての案件を受けない月もあるので、年間でならすと年収2,000万くらいで着地すると思います。

―複数案件を受けるのは大変ではありませんか?

戦略ファーム出身のフリーコンサルの知り合いの多くが、複数案件を受けるのは大変と言っています。例えば稼働率20%でもマインドシェアで50%はとられるので、頭がパンクしてしまうと言っています。

しかし、私は正直マルチタスクをするのが得意です。私の場合は、逆に多くの案件を抱えている方がアナロジーで価値が出たりすることがあるので好きなんです。

フリーコンサルで稼いだキャッシュをもとに
様々なビジネスに何度もチャレンジできる

―最近は起業家でありながら、フリーランスコンサルタントとしても働く方が増えてきていますね。

今のマーケット環境では非常におすすめです。私は100%稼働ベースで200〜400万円/月の単価感をイメージして案件を受けていますが、正直9:00-18:00で終わるのであれば、100万円/月でも別によいですよね。もともとそのくらいのイメージをしていましたし、年間1,000万円あれば普通に生きていけます。100万円/月の単価感で仕事が見つからないことは多分無いので、ダウンサイドリスクは無いと思います。

フリーランスコンサルタントとしてある程度のキャッシュを稼ぐことができれば、無限にいろいろなビジネスにチャレンジし続けられます。

―今後のキャリアをどう考えていますか?

事業開発をやりたいと考えています。専門家と組んで面白いビジネスをつくりたいですね。

そこで一定のキャッシュを生めるようになれば、例えば成果報酬型をより大胆に組み込んだコンサルティングサービスを提供したり、具体的な業務はマージンも取らずに外注したり等、普通では絶対できない動き方で様々な案件に関わりたい、というのが直近考えていることです。

独立するか悩んでいるなら、自らファクトを掴みにいくべき

―最後に、今後フリーランスコンサルタントとして独立することを考えている人に向けて、アドバイスはありますか?

まずはフリーランスコンサルタントの実態を調べてから判断することをおすすめします。私もそうでしたが、フリーランスとして独立することを考えつつも、漠然と社会に放り出される不安を感じて動けなくなっている人が多い気がします。

コンサルタントであるならば、しっかりとファクトを調べて判断すべきです。調べる時間がないというのも分かりますが、周りに自分と似た経歴で独立した人がいないか探して、案件の内容やデリバリーの実態、自分の専門性やタイトルでやっていけるのか等を聞くことくらいできるでしょう。どこかのタイミングで休みをとったり、稼働率調整をお願いして副業として試したりすることもできるかもしれません。いずれにしても、悩む前に事実や実態を調べて、自分で判断することをおすすめします。

―独立するタイミングとしておすすめのタイトルや経験年数はありますか?

マネージャーまでは経験すべきとよく言われますが、フリーランスについてはマネージャーでなくても独立可能です。もちろんタイトルによって報酬額のレベル感が変わる面はありますが、そもそも200万円を超える案件はあまり多くないのだとすると、最初に120万円で案件を受けて、クライアントにしっかりと価値を認めてもらい、後で報酬アップを交渉するのがリアリティだと思います。タイトルや経験年数というよりも、実態を調べたり、実際に副業などで試したりしてみて、自分自身がやっていけると感じたのであれば挑戦してみればいいと思います。

―本日は貴重なお話をありがとうございました!