【ポストコンサル転職インタビュー】コンサルタントからスタートアップ事業部長へのキャリアシフト

ポストコンサル転職インタビュー

大手コンサルティングファームでの経験を活かし、ヘルスケア系スタートアップの事業部長に転身した方へのインタビュー。スタートアップならではの事業立ち上げの醍醐味やマネジメントの難しさなどについて語っていただきました。

Interviewee Profile

新卒で大手コンサルティングファームに就職し、新規事業立案プロジェクトを中心に担当。クライアント先に常駐し、戦略立案を進めながら事業への落とし込みを行う伴走型プロジェクトに多数従事。シニアコンサルタントへ昇格・活躍後、ヘルスケア領域のスタートアップに転職し、現在は事業部長を務める。

大手コンサルファームからスタートアップの事業部長へキャリアアップ

―簡単にご経歴を教えてください

新卒で大手コンサルティングファームの戦略コンサル部門に入社し、約3年間勤務しました。その後、現在のヘルスケア系スタートアップに転職し、様々な業務に従事してきました。現在は事業部長を勤めており、営業やカスタマーサクセス、バックオフィス機能なども含めて、事業全体を統括しています。また、全社的なコーポレートアクションにも関与しています。

―コンサルティングファーム時代の仕事について具体的に教えてください。

主に新規事業系のプロジェクトに携わっていました。具体的には、旅行代理店への新規事業提案や物流企業における新物流網の設計、経営ビジョンの策定などに取り組みました。入社後2年目の半ば頃からは、シニアコンサルタントに昇格し、デリバリーをリードしていました。

―新卒でコンサルティングファームに入社して良かったと感じることはありますか?

ポータブルなスキルセットが身についたことは良かったと考えています。私が責任者を務める事業は、事業規模が拡大し続けていますが、その過程で仕組みや組織に関する様々な課題が複雑に絡み合ってきます。そういった状況において、抽象的に物事を捉え、構造的に整理して問題解決する思考を鍛えられたことは、大きな強みとなっています。

―コンサルファームからスタートアップへの転職のきっかけについて教えてください。

コンサルタントがよく挙げる転職の理由だと思いますが、複数のプロジェクトに携わる中で、戦略を考えた事業に最後まで関与できないことにもどかしさを感じていました。自ら手を動かして事業に直接携わりたいと考え、事業会社への転職を決めました。

高速仮説検証による事業立ち上げが、スタートアップの醍醐味

―コンサルファームからスタートアップへ転職されて良かったことはありますか?

転職して良かった点は、ミクロからマクロなことまで、時間的な連続性を持って深く関与できていることです。コンサルティングの仕事では、通常3ヶ月から長くても1年程度のプロジェクト単位で、クライアントの事業に関わることが多いです。

一方で、私は現在のスタートアップで3年以上働いています。この期間を通して、ある時点では最適解だったものが、時代の流れや組織の成長、株価の変動、円安の影響などによって、別の最適解に変化していく様子を目の当たりにしてきました。つまり、様々な要因がどのように作用し、事業環境がどう変化していくのかを、一定の期間を通して経験できたことが良かったと感じています。

他に良かったこととしては、自分で新規事業を1つ作り上げることができたことです。自ら事業に名前をつけて、ゼロから立ち上げ、ファーストユーザーを獲得するまでの一連のプロセスをリードしました。その後、その事業は他の事業部長に引き継ぎましたが、マスメディアにも取り上げてもらえるほどの成長を遂げており、良い経験となりました。

―スタートアップで、新規事業の立ち上げに関わる面白さや醍醐味を教えてください。

仮説検証サイクルが非常に早いことです。コンサルティングの仕事では、プロフェッショナルとして認められるために、些末な論点も含めて網羅的に検証していく必要があります。そのため、思考プロセスが樹形図のように細かく分岐していくイメージです。

しかし、実際に事業を立ち上げる際は、「これだ」と決めた仮説に対して、一気に突き進んでいきます。アイデアをすぐに試し、結果を素早く分析して、成果を出していく。このようなスピード感のある意思決定のサイクルを回していくことが面白いです。OODAループの考え方で、状況に応じて柔軟にショートカットしながら、事業を立ち上げていけるのはスタートアップの醍醐味だと感じました。

―転職してワークライフバランスの変化はありましたか?

意外と総労働時間は変わっていないかもしれません。ただ、肉体的な労働時間はあまり変わっていないにしても、精神的な面では大きな変化がありました。コンサルティングファーム時代は、クライアントへのレポートが頻繁にあり、常に締め切りに追われている感覚でした。

しかし、現職ではマネジメントへのレポートも月に1回程度で済むので、報告資料の作成に追われることはあまりありません。もちろん事業部長という立場だからということもありますが、自分で仕事の量や期限をコントロールしながら、裁量を持って働けています。

数年かけてマネジメントスタイルを確立

―コンサルからスタートアップへ転職する際に不安はありましたか?

人的マネジメントができるかどうかという点は懸念でした。実際に入社してからも、マネジメントの評価が芳しくない時期がありました。この点は転職後に直面した課題だと認識しています。

―その中でどのようにマネジメントについて学んでいきましたか?

結果論ですが、業務が非常に忙しくなったタイミングをきっかけに、些細な点で人に対していちいち怒ることを辞めました。結局、人間関係がなければ、部下は報連相してくれませんし、そうすると事業の状態を正確に把握することができなくなってしまいます。そのため、怒ってもどうしようもないと割り切って、人に対して柔らかく接するようにしました。ただし、評価はしっかりとつけるようにしています。そうすることで、部下も自主的に改善に取り組んでくれますし、しっかりと報連相もしてくれます。最近はこれが最善の方法だと考えていますが、この3〜4年は常にマネジメントスタイルを調整し続けています。

―一定の規模の組織をマネジメントするうえで、意識していることはありますか?

部下一人ひとりとの個別面談、いわゆる1on1を重ねることを意識しています。実際、事業部のメンバーとは、直接隔月で1on1を実施するようにしています。その中で、会社としてのメッセージを改めて伝えたり、メンバーのキャリアについて困っていることがないか聞き出したりすることを心がけています。

―マネジメントで苦労されたということですが、他にコンサルファームからスタートアップへ転職して苦労したことはありますか?

スタートアップでは、ファイナンスやHR周りの業務の比重が非常に大きいと感じています。例えば、予算の策定やキャッシュフローの管理、管理会計と財務会計の差異への対応など、ファイナンス領域に相当な神経を使っています。コンサルティングファームでは、ある程度確立された大企業のルーティンの中で業務が回っていたので、上の人も含めてこういった領域にそれほど時間を割いていた印象はありません。

また、人事評価の部分でも難しさを感じます。コンサルティングファームの場合、パートナークラスであっても、直接のマネジメントラインはそれほど多くはなく、また給与も十分に出せるので、事業会社ほど困ることはないのではと想像します。一方事業会社では、昇給率が0.1%変わるだけでもP/Lに大きな影響を与えますし、制度変更をするにあたっても慎重に行う必要があります。

こうしたファイナンスやHR領域への気配りに、自身の業務工数の5割程度を割いている状況ですので、転職当初は適応に苦労しました。

自らの裁量で経営リソースを使えるのがスタートアップの面白さ

―スタートアップで感じている仕事の面白さを改めて教えてください。

経営リソースに直接タッチできるのが面白いです。人員配置を変更したり、OKRやKPIの設定に関わったりと、急成長する組織の中で、これらを自分の裁量で日々アップデートしていく過程が非常に面白いです。

転職直後はマネージャーとしてのポジションからスタートしましたが、その時点でも、例えば販促費用数千万円の使途を自分で自由に決められる等、かなりの裁量を任されていました。自分の裁量で経営リソースを使って、ビジネスができるのはスタートアップで働く面白さの1つだと思います。

転職活動では採用企業と直接やり取りしたため、給与面の交渉で苦労

―転職活動の流れについて教えてください。

転職先は当初からヘルスケア×ITの事業会社に絞っていたので、応募する企業も数社に限定していました。転職経験がなかったため、知人のエージェントに相談し、興味のあった数社を紹介してもらいました。その後は、採用企業側と直接やり取りしながら選考を進めました。

私は事業の意思決定に直接関与できるポジションを希望していたため、面接では事業への関与度合いを重点的に確認し、最終的に現職を選びました。

―転職活動中に苦労したことはありますか? 

転職活動中に苦労したのは、自分の適正年収がわからなかったことです。当時コンサルティングファームではすでに1,000万円近い年収をもらっていましたが、スタートアップからは当初その半分程度の年収を提示されました。最終的にはそれ以上の年収を提示いただいて入社しましたが、今思い返すともっと好条件でオファーをもらえたかもしれません。

エージェントを通さずに企業と選考を進めていたこともあり、給与について交渉しづらい面がありました。現在は私自身も採用業務に携わった経験から内情が分かるのですが、エージェントは企業側がどの程度の年収を提示しそうか、入社一時金を出す可能性があるかなどを把握しています。そういった交渉のからくりを知っていれば、もっと上手く対応できたのではないかと思います。

―転職活動がうまくいった理由をどのように振り返りますか?

しっかりと企業研究をして選考に臨めたというのは1つ成功ポイントだったと思います。どんな質疑応答が来ても対応できるよう、選考を受ける企業に関する記事を切り抜きながら、パワーポイント100枚程度で整理していました。その企業にとって、何が重要なのかを自分なりに整理しておくことで、納得感を持って選考に臨むことができたと思います。

そしてもう1つは、自分のことを真剣に求めている企業を選べたということです。現職の選考では、複数の部署から選考を受けてほしいと依頼されました。また、内定後には、経営陣も同席する形で高級店での会食に招待していただくなど、破格の待遇を受けたと感じています。

今後は事業×ファイナンス×HRの専門性をより高めていきたい

―キャリアを意識して行ってきたことはありますか?

コンサルタント時代は、それほどキャリアを意識して動いてはいませんでした。その場で一生懸命頑張っていたら、それが評価されたという感じです。そもそもコンサルティングファームに入社した背景には、就職活動の軸が当時の自分の情報量では定まらないという事情がありました。よくわからない状態で決断するよりは、一度社会に出てから改めて考える方が合理的な意思決定ができるだろうと考えました。

その中で、「鶏口となるも牛後となるなかれ」ではありませんが、トップレベルの集団の中で上位を目指すよりも、少し優秀なくらいの集団の中でトップを目指す方が良いと考え、前職のファームに入社して、日々全力でトップを目指していました。ただ正直、あまり深くキャリアのことは考えていなかったです。

一方、スタートアップに転職してからは、非常にキャリアを意識するようになりました。今の世の中は、年収だけで勝負していくのは厳しい状況になってきていますし、給与が増えても税金で持っていかれるだけで、手取りはあまり変わりません。その中で、一部の人はストックオプションなどで稼いでいく道を選んでいます。私自身も今は株式を付与されていますが、上場や売却で利益を得ていくのが最も合理的な生き方だと考えています。

ただ、そのためには自分で事業をハンドリングできるような人材にならないと、チャンスは巡ってきません。運よく上場しそうな会社に入ってストックオプションを得られればいいのですが、自ら運を引き寄せられるほどの実力をつけるべきだと考えています。

そのための力を今蓄えている最中で、様々な経験を通じて、必要なスキルを身につけているところです。

―今後のキャリアについてどう考えていますか?

現在のポジションで、事業のハンドリングや組織設計については、ある程度理解が深まってきました。一定規模の組織であれば、マネジメントも問題なくこなせるようになったと感じています。

今後のキャリアアップに必要な要素を考えた時、特にファイナンスとHRの領域が重要だと認識しています。事業運営において、この2つの分野は非常に大きな役割を果たします。そこで、今後はファイナンスとHRにもう少し軸足を置いて、専門性を高めていきたいと考えています。

事業、ファイナンス、HRのいずれの分野でも高い能力を発揮できる人材になりたいと考えています。

事業会社で資本主義の世界に触れてみるとよい

―最後に現在コンサルタントとして働いている方に向けて、ポストコンサルキャリアについてアドバイスやメッセージをいただけますか?

ぜひ資本主義の世界に飛び込んでいただきたいと思います。

コンサルティング業界では、比較的高い年収を得られるため、それに満足してしまう人も一定数いるのではないでしょうか。しかし、世の中は給与というより、投資や上場といった資本の動きによって動いていると私は考えています。

そういった中で、コンサルティングの世界は資本主義からやや距離があるように感じられます。一方で、事業会社に身を置くと、投資家から資金を調達し、それに対してリターンを生み出すことで、莫大な富を築いていくという資本主義の世界が見えてきます。

こうした経験は、コンサルタントとしてのキャリアだけでは得難いものだと思います。ぜひ事業会社の現場に飛び込んで、少し違った景色を見ていただきたいと思います。