広告×コンサル:異なる業界経験が生み出す独自の営業スタイル(ポストコンサル体験談)

ポストコンサルインタビュー(コンサルから大手広告代理店)

大手広告代理店からコンサルティングファームへ転職し、再び大手広告代理店に戻って活躍されている方へのインタビュー記事です。転職の理由や現職のやりがい、コンサルと広告代理店の違いなど様々な観点から詳しくお話を伺いました。

Interviewee Profile

新卒で大手広告代理店に入社し、メディアプランナーや営業を約10年間経験。その後、大手総合コンサルティングファームに転職し、主にマーケティング関連のプロジェクトを経験。その後、再び大手広告代理店へ転職し、コンサルティング的なフィービジネスの開拓に挑戦している。

目次

広告以外のクライアント課題も支援したいという想いから、
コンサルティングファームへ転職

ー簡単にご経歴を教えてください。

新卒で大手広告代理店に入社し、約10年間メディアプランナーや営業としてキャリアを積んだ後、大手総合コンサルティングファームに転職し、約3年間コンサルティング業務に従事しました。現在は、再び広告代理店業界に戻り(新卒入社とは別の大手広告代理店に転職)、営業として働いています。

ー1社目の仕事内容について具体的に教えてください。

1社目ではメディアプランナーと営業を経験しました。メディアプランナーとしては、テレビ局との交渉窓口を担当し、CM枠の買い付け価格の交渉や、広告主のニーズに合わせた最適なプランニングの提案などを行いました。

営業職に移ってからは、複数の日系大手企業や外資系企業を担当しました。例えばクライアントが海外進出する際、現地の文化に合ったCMを流すために、現地調査や制作支援などを行いました。また、テレビ広告以外にも、ブランディングや販促支援なども手がけていました。

ーコンサルティングファームへ転職したきっかけを教えてください。

広告代理店での経験を積む中で、徐々に広告領域以外でもクライアントを支援したいという思いが強くなったことが、コンサルティングファームへの転職のきっかけでした。広告予算が数億円から数十億円規模のクライアントと話をすると、広告だけでなく、新商品の売り方、サプライチェーン、採用など、多岐にわたる経営課題に話が及びます。しかし、当時は広告の部分しか提案ができず、そこに物足りなさを感じるようになりました。

また、広告代理店のビジネスモデルは、メディアの広告枠販売によるマージン収入ですが、ネット広告の台頭による値崩れの影響などもあり、業界全体として、フィービジネスでも収益を上げていく必要性が出てきました。しかし、これまでマーケティング支援などの稼働に対する費用は一切もらっていなかったのに、突然フィーをクライアントに請求して収益を上げるのは難しく、業界全体としても取り組みが進んでいない状況でした。

そうした中、海外ではアクセンチュアが広告代理店を買収するなどの動きがあり、コンサルティングファームもキャリアの一つの選択肢だと考えるようになりました。将来的には再び広告代理店に戻ることを前提に、営業スタイルをよりコンサルティング的なアプローチに変えようと決意し、転職活動を行った結果、総合コンサルティングファームから内定を得ることができました。

大手広告代理店からオファーを受け、広告業界に戻ることを決意

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ーコンサルティングファームではどのようなプロジェクトを経験しましたか?

コンサルティングファームでは、主にマーケティング関連のプロジェクトに携わりました。具体的には、大企業の新会社設立に際するブランディング支援、グローバル規模でのマーケティング調査、デジタルマーケティング活用支援などです。これらのプロジェクトを通じて、広告だけに止まらない、幅広いマーケティングの知見を深めることができました。

ー広告代理店にいたからこそ、コンサルティングファームで活きたスキルや経験はありましたか?

1つは、プレゼンテーションのスキルです。1社目の広告代理店に約10年在籍した期間に、数多くのコンペティションを経験したことで、話し方やストーリーの構築について自信を持っていました。これは、コンサルティングファームでのプロジェクトにおいても大いに役立ちました。

2つ目は、人と打ち解ける力です。コンサルティングファームには多様なバックグラウンドを持つ人材が集まっていますが、そうした方々と良好な関係を築き、可愛がっていただくことができました。これは、対クライアントの関係構築においても強みとなりました。

ーもともと広告業界に戻る前提で、コンサルティングファームへ転職されたということでしたが、どのような経緯で現職の大手広告代理店へ転職されたのでしょうか?

きっかけは、付き合いのあったエージェント経由で、オファーをいただいたことです。当時、私はコンサルティングファームに約3年ほど在籍しており、転職については全く考えていませんでした。しかし、大手広告代理店は中途採用をそれほど頻繁に行っているわけでもないため、このタイミングを逃すと、もうチャンスはないかもしれないとも思いました。約3年の在籍期間で、それなりにコンサルティングスキルを身につけられたという実感もあったので、悩んだ結果、思い切って選考を受けることにしました。

ー転職活動について教えてください

転職活動では正直全く苦労はありませんでした。複数の大手広告代理店からオファーを受け取ってから、各社とも面接数回でスムーズに内定獲得に至りました。ご存知の通り、広告業界自体がコンサルティングの領域に近づこうとしている中で、人材要件として、ぴったりだったということもあると思います。

面接では、一般的な質問である強みや成功体験に加えて、コンサルと広告代理店の違い、コンサルスキルを広告代理店でどのように活かせるか、そして、もし自分がクライアントの立場だったら、コンサルと広告代理店のどちらに発注するかといった、質問が投げかけられました。これらの質問に対する私の回答が、面接官に上手く刺さったのではないかと感じています。

コンサル経験を活かして、従来の広告代理店とは異なるフィービジネスを開拓

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ー現職ではどのような仕事をしていますか?

現在、私は新規クライアントの獲得に注力する部署に所属しています。様々なプロジェクトに取り組んでいますが、以前の広告代理店勤務時と比べ、テーマの幅がかなり広がりました。もちろん、メディアバイイングのプランニングといった広告領域の業務もありますが、それだけではありません。CRM導入やデジタルマーケティング支援など、コンサルティングファームのマーケティング部門が受注するような案件も獲得できています。

コンサルティングの経験を活かすことで、広告領域にとどまらない多様なプロジェクトを創出できています。これは、1社目からコンサルティング業界へ転職する際に考えていたことが実現できているので、非常に嬉しく感じています。

ー現職の面白さ・やりがいを教えてください。

最初に広告代理店に在籍していた頃よりも、仕事がより楽しくなりました。当時は、不甲斐なさを感じることがよくありました。というのもやはり営業は、メディアの細かい詳細を知っているわけではありませんし、クリエイティブを作れるわけでもありません。プロジェクト全体の設計はできても、各テーマについて深く議論できず、細かい話になると他部門の方やグループ会社の専門家に頼るしかありませんでした。

しかし、コンサルティングファームを経て広告代理店に戻ったことで、よりイニシアティブを取ってプロジェクトを進められるようになりました。クライアントから投げかけられた様々な質問や悩みに対して、一度持ち帰って専門家を探すのではなく、その場である程度自分で議論できるようになりました。物事をロジカルに説明でき、自分でドキュメンテーションもできるので、よりチームを前に進められるリーダーになれたと感じています。

転職後すぐに社内で賞を取るなど、うまく成果にもつなげることができています。

ーコンサルティングファームで培ったスキルは、現職でどのように活きていますか?

コンサルティングファームで鍛えられたロジカルシンキングや仮説思考、それを伝えるためのドキュメンテーションなどのコアコンサルスキルは、現職でも非常に活きています。特に、自身の稼働に対するフィーで収益を上げるという点において、プロジェクトへの落とし込み方やアプローチ設計、さらには契約期間を1年、2年と継続させていく方法をファームで体感し、身につけることができました。その経験が現職での、従来とは異なるコンサルティング的な収益の上げ方につながっており、社内でもそれが評価されています。

広告代理店のビジネスモデルは、メディアのマージンに依存してきました。広告主がテレビCMなどに何十億円もの予算を投下する際、その広告予算に対する一定割合のマージンをいただくのです。その売上が非常に大きいため、これまでは関連するマーケティング調査や資料作成などの稼働を無償で提供してきました。代理店としても、メディアのマージンが入ってくれば、そういった稼働の費用は十分にまかなえると考えてきたのです。

しかし、今コンサルティング領域に進出していくにあたっては、これまで値付けしていなかったその稼働に対して値付けをして、有償で提供する必要があります。ただ、そうするとクライアントから「他の代理店に頼むのでいいですよ」という話になりかねません。そのため、なかなか踏み切りづらい側面もあります。

そんな中、私はコンサルでの経験を活かして、クライアントの課題をプロジェクト化し、きちんと稼働に対するフィーを頂く案件を取れるようになってきました。これはコンサルファームを経た成果だと感じています。

コンサルファームのマネージャーに近い役割で、
様々なテーマのプロジェクトを提案・マネジメント

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ー新規のクライアント獲得を目指す部署にいるということで、どのような提案から入り込んでいくのでしょうか?

新規クライアントへの提案内容は、クライアントのニーズに合わせて柔軟に対応しています。従来から代理店が得意とする広告プロモーションの提案をすることもあれば、コンサルティングのようなテーマで提案することもあります。クライアントとの対話を通じて、メディアの提案をするのか、それともコンサルティングのような提案をするのかを見極め、最適なアプローチを選択することが、今の仕事の醍醐味だと感じています。

コンサルティングファームでの経験により、クライアントの課題に対してプロジェクトアプローチを設計し、稼働に対するフィーを提示するような提案の仕方も、今では武器として持っています。そのため、広告プロモーションとコンサルティングの両面からクライアントに貢献することができるようになりました。

ー例えばCRM構築支援のようなコンサルティングプロジェクトの場合、実際に手を動かす人が必要になると思います。実行に関しては、どのような体制で支援するのでしょうか?

CRM構築支援のようなコンサルティングプロジェクトにおいては、私のような営業がプロジェクトマネージャー(PM)の役割を担います。実際のデリバリーについては、社内の実行部門を巻き込んだり、数多くあるグループ会社に支援を仰ぐことで対応しています。

営業としては、プロジェクトの初期段階での設計や、定例ミーティングのアジェンダ作成といったプロジェクト管理の部分をしっかりと担当しています。これは、コンサルティングファームのマネージャーのような役割に近いと言えるでしょう。

成果さえ出せば、非常に自由に働けるカルチャー

ーコンサルティングに近い案件にも取り組んでいるということですが、コンサルと広告代理店の働き方の違いはありますか?

広告業界は成果さえ出していれば、非常に自由な業界だと言えます。コンサルティングファームでは、提案前にパートナー等にレビューしてもらうことが一般的ですが、広告代理店では、例えば提案前に局長への資料確認を必須とするケースは私の経験では殆どありませんでした。(もちろん、求めれば助言頂くことは出来ます)成果さえ上げていれば、個人の裁量で自由に提案を進められます。

その背景には、広告代理店の収益の大部分を占めていたTVCMをはじめとする、媒体費を主体としたビジネスモデルの影響もあると思います。1キャンペーンが非常に大きな売上で長期間に渡る契約になるため、仮にその後半年間仕事をしなくても十分なほどの収益になるわけです。そのため、細かい管理はされず、成果重視の自由な働き方が定着してきました。

私自身も現在は成果を出せているため、働く場所なども自由に選べ、子育てとの両立も非常にしやすい環境にあります。また、業界全体として長時間労働が抑制されるようになったため、以前と比べるとはるかにクリーンな働き方が実現しています。

ーカルチャーや仕事の進め方等の観点で、他にコンサルと広告代理店の違いはありますか?

コンサルティングファームでは、チームでゴールを設定し、各メンバーが最短距離でそこに到達するために個々のタスクを遂行するという働き方かと思います。一方、広告代理店では、みんなで協力しながら目標に向かって進んでいくというアプローチです。おおまかなゴールを設定した上で、コミュニケーションを取りながら和気藹々と仕事を進めていくという点で、カルチャーの違いを感じています。良い意味で、広告代理店の人はコミュニケーションが好きだし、人が好きです。

また、コンサルティングでは、期限までにプロジェクトを完了するために、物事を明確に決め、時間を区切っていくのに対し、広告業界にはクリエイティブ職などの右脳的な人材も多く、曖昧なままで柔軟に対応していくという仕事の進め方の違いもあります。コンサルティングの仕事はフィービジネスであるため、時間単位で タスク を明確に定義してプロジェクト管理を行いますが、そのような管理方法は、広告のクリエイティブにはそぐわないという考え方があるように感じます。優れたクリエイティブを追求するために時間をかけて取り組むことは当然で、細かく進め方を管理していけるものではないというマインドの方が多いと思います。

クリエイター等の様々な人材がいる中で、
クライアントの想いに最も寄り添うのが営業の使命

ー現職ではコンサル出身者も増えてきていますか?

そうですね。キャリア採用では、メーカーの宣伝部やデジタル広告に精通した代理店出身者が中心となっていますが、徐々にコンサル出身者も増加傾向にあります。おそらく、多くの広告代理店がコンサル出身者の採用を望んでいるのではないでしょうか。しかし、先述のようなカルチャーの違いから、定着せずに退職してしまうケースも見受けられます。そういった観点から考えると、私のように広告代理店出身でコンサルティングの経験を積んだ人材が、一番最適なのかもしれません。

ーコンサルティングファームでも近年はクリエイティブ人材を採用して、マーケティング関連の案件などでコンサルタントが協働する機会も増えています。

私自身もコンサルティングファームでクリエイティブ職の方と接する機会がありましたが、彼らは戦略志向が強く、”コンサルっぽい” クリエイターだなと感じました。一方、広告代理店のクリエイティブの方々は、より感覚的な方が多い印象です。

仕事の進め方という意味でも、コンサルファームのクリエイティブ職の方はパワーポイントで資料を作成していますが、代理店のクリエイティブの方の中には、手書きの紙のみで進めていく人も少なくありません。

また、大物クリエイターになればなるほど、クライアントの事情を考慮しつつも、自分の作りたいものや世の中に響くモノを届けたいというアーティスト気質が非常に強くなります。例えば、予算を1億円と伝えていても、3億円でないと実現できないようなプランを提示してくることもあります。

ーそこを調整していくのは大変ですね。

クリエイティブの方々は、クライアントのためという意識を持ちつつも、同時にカンヌ広告祭などの賞の受賞を意識していたりします。その点で、営業とは少し異なる意識を持っている部分があると言えます。

私の場合は、プロジェクトの初期段階で設計をしっかりと行うことで、うまく調整するようにしています。クライアントに最も近い営業が、クライアントの利益や想いに対して一番責任を持つべきで、クリエイティブを始めとした他部門に対しても、戦う必要があると考えています。

そのため、プロジェクトのゴールや重要な要素を最初にしっかりと設計することに力を入れています。中には、途中で変更が入ることを前提に、ぼんやりと始める営業マンもいますが、私はそこを絶対にブレないようにし、しっかりとピン留めするようにしています。この点は、コンサルティングの経験が非常に役立っていると感じています。

キャリアの掛け合わせを意識することが重要

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ー今後のキャリアについてはどのように考えていますか?

まずは現職でマネジメントレイヤーを目指したいです。私が今個人でやっているようなコンサルティングフィーで稼ぐようなビジネスを、個人単位ではなくチームとして成り立たせるところまで成果を残したいと考えています。そのさらに先という観点では、広告領域・コンサル領域のどちらも橋渡しできる存在として独立するという選択肢もあるかもしれません。

ー最後に現役のコンサルタントに向けて、ポストコンサルキャリアの観点で、何かアドバイスをいただけますか?

私と同じような中途でコンサルに転職した方は、何かしら前職の業界に課題意識を持ってコンサルに来ている人が多い印象があります。そういった中で、やはりもともとの業界知見とコンサルのキャリアを掛け合わせることで、非常に強みになるということを実感しています。

私の場合は、コンサル経験を掛け合わせたことで、現職でも一目置かれるというか、コンサル出身の人という意識で話を聞いてもらえますし、一定の説得力もあるようです。自分は何を掛け合わせれば、どのフィールドで戦えるのかということを考えることが、転職活動時に内定を取るという意味でも、その後活躍するという意味でも重要だと思います。

コンサルに来る人は優秀な人が多いので、全く異なる業界に転職して、うまくいかずに転々としてしまうケースもよくあるかと思います。そういったことを踏まえても、やはり自分が持っている武器の掛け合わせ方や活かし方を意識することが重要だと思っています。

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