事業会社とコンサル、どちらも経験して気づいた「やりたい仕事」

海外大学を卒業後、日本での就職を決意した理由は総合職というキャリアの幅だった。ERPエンジニア、ベンチャーコンサル、自社製品開発、大手ファームのグローバル案件…。転職を重ねながら自分の専門性を見つめ、リスクと成長を天秤にかけて選んだキャリアのリアルを語る。
海外育ちから日本でのキャリア選択
― 簡単にご経歴を教えてください。
私は小さい頃から海外で育ち、海外の大学を卒業し、日本でファーストキャリアをスタートさせる形で帰国しました。
1社目はERPのパッケージベンダーに入社し、自社製品の導入エンジニアとしてインターフェース構築やデータ移行など、導入プロジェクトに必要な技術面を主に担当していました。
2社目はキャリアアップを目的にベンチャー系のコンサルファームへ転職しました。
ここでは、ERPに限らず、アプリケーション開発やインフラなど幅広い領域でITコンサルタントとしての業務を経験しました。
その後、3社目のスタートアップ企業では、ERPコンサルタントとしてクライアント支援を行う一方で、自社のERP製品開発にも携わるなど、製品サイドの開発業務にも関わりました。
そして現在は総合系コンサルティングファームに転職し、ERPコンサルタントとしてクライアントを支援しています。
― 就職するまでは長期で日本に滞在したことはなかったのですか?
そうですね。生まれは日本ですが、小学校から大学卒業まではずっと海外で生活していました。ただ、家庭内では日本語で会話をしていたので、ある程度の日本語力は身についていたと思います。
― 例えば海外で就職するという選択肢もあったと思いますが、日本を選んだ理由はどんなところにあったのでしょうか。
そうですね。正直に言うと、日本には「総合職」という枠で新卒を幅広く採用する仕組みがあるのが大きかったです。私自身は文学部出身だったので、専攻に直接関係のない職種や業界にも挑戦できる、日本の新卒採用の仕組みが魅力でした。いろいろな業界や職種を見られる点に惹かれて日本で就職活動をすることにし、最終的にERPのパッケージベンダーを選びました。
― 1社目の会社を選んだ理由は何だったのでしょうか。
正直に言うと、一番大きな理由は待遇面が良かったからです。ITやERPに特別な興味があったわけではありませんでした。ただ、会社の方針として「会社で使える知識やスキルだけではなく、自分自身の成長を軸にキャリアを形成してほしい」という考え方を持っていて、そうした働き方に惹かれて入社を決めました。
― そこから2社目に転職しようと思った理由や背景はどのようなものだったのでしょうか。
建前としては「キャリアアップ」というのが理由でした。エンジニアだったので、もう少し業務面を含めて自分の仕事を上流から幅広く見られるようになりたい、という思いで転職を考えたというのが一つです。
ただ、本音を言うと、当時いた会社の経営がかなり不安定になってしまったのが大きかったです。ファンドに一部事業が買収されることが決まり、残る部分も経営陣が総入れ替えになって、会社のやり方も全て変わるような状況でした。「もうほとんど別の会社になるな」と感じて、それなら自分がここに残る意味もあまりないだろうと思い、転職を決めました。
― 最初の転職活動は、だいたいどれくらいの期間をかけて進めたのでしょうか。
そうですね。当時はフル出社が当たり前の時代だったので、面接は基本的に業務後しかできなくて、かなり時間がかかった記憶があります。たしか4〜5か月くらいかけて進めたと思います。
転職エージェントのキャリアアドバイザーと会うのも業務後しか予定が取れなかったですし、そもそも業務が終わるのがほぼ終電という会社だったので、実質動けるのは土日だけでした。
ベンチャーコンサルでの挑戦と学び
― 2社目のベンチャーファームを選んだ理由はどんなところだったのでしょうか。
まず一つ大きかったのは、コンサルにチャレンジできるという点でした。
もう一つは、当時聞いていた話として、コンサルだけでなく自社製品の開発にも取り組む構想があると伺っていたことです。
それが同時に経験できるのであれば、一石二鳥というか、コンサル業務に加えてベンチャーでゼロから自社製品を作るようなことも学べるのかなと思って決めました。ただ実際に入ってみると、その自社製品の開発の部分は実現しなくて、結局はコンサル業務だけだった、というのはありましたね。
― ちなみに、2社目ではどういったプロジェクトに携わっていたのでしょうか。
本当に多岐にわたっていて、業界やソリューションが特定のものに固定されていたわけではなく、ベンチャーということもあって非常に幅広かったです。具体的には、インフラ関連のシステムアーキテクチャ構築の構想策定支援や、システム自動化に向けたRFP作成のサポートなどを担当しました。また、クラウドコンピューティングではAzureを使ったプリセールス活動なども経験しました。プロジェクト期間もさまざまで、長いもので半年程度、短いもので3か月程度の案件が多かった印象です。
― もともとエンジニア的な働き方からITコンサルに転身されて、実際に難しいと感じたことはありましたか。
めちゃくちゃありました。そもそも「コンサルって何をする仕事なのか」からして全然わからなかったですね。パソコン1台渡されて「はい、この案件入ってください」みたいな感じで、何をどう進めればいいのか全く見えなくて。
しかも、コンサルとして「こういうことをやるべき」という研修がしっかりあるわけでもなく、そのまま案件に放り込まれたので、「成果を出すってすごく難しいな」と強く感じました。
当時は社会人3〜4年目で、自分の中にしっかりした軸があるわけでもなく、価値を発揮できていたかといわれると正直自信はなかったです。なので、まずは議事録をしっかり書く、資料をきれいに整えるなど、自分ができることをとにかく全力でやって、必死にキャッチアップしていく感じでした。
ただ、覚えてきたと思ったらプロジェクトがリリースされてしまって、次の案件ではまたゼロから新しいことを学ぶ…その繰り返しでした。
キャッチアップのためによくやっていたのは、「すごくできる人を1人見つけて、その人の真似を徹底する」ということです。プレゼンの話し方なんかも全部録音して、あとで1人で聞き返して、できるだけ同じように話せるように練習していました。
製品開発への思いとスタートアップでの経験
― さらに次の転職を考えた背景はどんなところにあったのでしょうか。
転職先を選ぶ軸としては「自社製品の開発」がありました。最初の転職のときと同じで、コンサルをやりながらでも、自社で製品を作る経験をどうしてもしてみたくて、そちらに進もうと決めた感じです。
コンサルの仕事を幅広く経験した中で、やっぱり自分のバックグラウンドであるERP領域は強みとして活かせる部分だと思っていました。なので、コンサルとしても動きやすいですし、その専門性をもっと深めたいという思いも強かったです。
イメージとしては、1回コンサルで幅広い領域を経験させてもらって、そのあとで自分の軸に戻すというか、より専門寄りにギュッと絞っていくような感覚でした。その領域をしっかり深めていきたい、定めたいというのが大きな理由でした。
― 実際に3社目に入社されてからは、具体的にどんな働き方や業務をされていたのでしょうか。
基本的には、自分がやりたかった「製品開発」に関わる仕事を中心にさせてもらっていました。製品開発のプロジェクトは2つあって、1つは自社でERP製品を開発するもの、もう1つはERPとは別領域のプロダクト開発でした。「開発」と言っても、私がエンジニアとしてコードを書くというよりは、ビジネスサイドの役割が中心でした。
具体的には、作った製品をお客様に販売したり、広報やマーケティングでその製品を広めたり、導入コンサルティングを行ったりと、幅広く担当していました。
― 実際に仕事自体はどうでしたか。
特に2つ目のプロダクトの方は、ゼロから立ち上げて、お客様が何人かついてくれるところまで持っていけたので、それが一つの成功体験になりました。
めちゃくちゃ楽しかったですし、「自分はこういう仕事の方が向いているんだろうな」と感じました。
私は、決まった仕事をこなすより、何も形がないところから全部考えて進めていくのが好きなんです。
どうやって売っていくか、お客様からどうフィードバックをもらって開発にどう伝えるか、そしてそれをどう形にするか。
やり方は本当にいくらでもあって、「何をしてもいい」と言われていたので、自由度が高いのが楽しかったですね。
みんなで1つの製品を売るために、それぞれができることを考えて動く。
そういうゼロベースで作り上げる経験って、若いうちに、しかも経験が少ない段階でできるのはベンチャーならではだと思いますし、本当に面白かったです。
― では、1社目のエンジニア経験や2社目のコンサルティング経験が、3社目で活きていると感じたことはありますか。
めちゃくちゃありますね。結局、製品を企業に提案・販売するうえでは、その企業の業務を理解していないと話にならないんですよね。ERPの経験を通して、お客さんの業務の流れや仕組みを理解できていたので、「このデータはどこからどう取得するのか」といった具体的な話にもすんなり入っていけました。お客様からデータをもらったときも、それがどういう意味を持つデータなのかがすぐに分かる、そういう点はすごく役立ったと感じています。
また、コンサル時代はお客様とのセッションや打ち合わせを数多く経験したので、人前で話すことやデモをしたりプレゼンをしたりするのも全く抵抗がなくなりました。むしろ「営業」として人と話すのも怖くないというか、自然にできるようになったと思います。
現職の総合コンサルでの挑戦と今後のキャリア観
― そこからまたコンサルの世界に戻る形になると思うのですが、転職を考えた背景や経緯を教えてください。
そうですね。正直に言うと、当時いた会社では新規事業の立ち上げ自体はすごく楽しかったんですが、また会社の経営が厳しくなってしまったんです。このまま潰れたら無名な会社の経歴だけが残ってしまう。そうなると自分のキャリアをどうするかを真剣に考えました。
最終的には、「次はブランド力のある会社に入った方が、今後のキャリアの選択肢が増える」と判断して転職を決めました。そういった目的で、誰もが知っているような大手のコンサルファームを選びました。
― そのとき、たとえば事業会社に行くという選択肢は考えなかったんですか? 知名度のある事業会社なども含めて。
めちゃくちゃ考えました。実際、ERPのパッケージを作っているような事業会社も調べたり、お客さんから声をかけてもらったりして、条件を聞いたこともありました。ただ正直なところ、給与テーブルが自分の希望と合わなかったんです。
― コンサルの中でもいくつか選択肢があったと思いますが、最終的に現職を選んだ理由はどんなところだったのでしょうか。
正直、大手のコンサルならどこでもスキルは磨けるし、ブランド力もあって魅力的だと感じていました。実際にERPコンサルという同じようなポジションで複数社に応募したのですが、最終的には「面接で話した人が一番働きやすそうだな」と感じたのが大きな決め手でした。ポジション内容自体は似ていたので、最後は本当に「人」で選んだ形です。面接でお話しした方の明るい雰囲気やテンションが心地よく、「この人たちとなら楽しく働けそうだな」と思えたのが大きかったです。私自身もけっこう明るいタイプなので、そういう人が多い職場がいいなと思いました。
加えて、私自身、語学が強みだと思っているので、それを活かせる環境に行きたいという気持ちもありました。現職ではグローバル案件を扱っていて、実際に今も英語などを使いながらプロジェクトに参加させてもらっています。共通言語が英語のプロジェクトなので、資料も英語で作成し、インドや中国など海外拠点のメンバーとのコミュニケーションやタスク管理をする必要があります。そういったグローバルな環境での経験を積みたかったというのも、現職を選んだ大きな理由のひとつです。
― 現職では具体的にどういったお仕事やプロジェクトを担当されているんですか。
私の一番大きなバックグラウンドであるERPの経験を活かして、特定のERPパッケージ製品を扱うソリューションチームに所属しています。プロジェクトとしては、構想策定のフェーズから、要件定義、導入、そして最終的な稼働まで、一貫してお客様を支援するものが多いです。
― 今までSE、コンサル、事業会社寄りの動き方、そしてまたコンサルに戻って…というキャリアを積まれていますが、それを踏まえて今感じていることや、このキャリアだからこそ活きていると感じることがあれば教えてください。
そうですね、本当にこれは人それぞれの性格や向き不向きもあると思うんですが、私は事業会社とコンサルって、そもそも働き方や考え方が全く違う業種だと感じています。どちらが良いとか悪いとかではなくて、どっちも経験してみたからこそそう思います。
そのうえで、今のコンサルの仕事をしていて圧倒的に感じるのは、「コンサルでの経験は本当にどこでも活かせる」ということです。正直、私は今後また事業会社に行きたい気持ちもありますが、だからといってこのコンサルの経験が無駄だとは全く思っていません。むしろ、吸収できることや学びは本当に無限にあるし、自分のスキルを磨くうえですごく良い環境だと思っています。
それに、コンサル業界はやっぱりスピードがものすごく早い。私も最初はかなり戸惑いましたけど、お客様から高い単価をいただいている以上、それに見合ったアウトプットをすごいスピードで出さなきゃいけない。そのプレッシャーの中で「どう動くべきか」を常に考え続ける必要がある。でも、そうした考え方や動き方って、別に事業会社に限らず、今後どんなキャリアを選んだとしても必ず活きるものだと思います。なので、私はこのキャリアを選んだことを全然後悔していないです。
― でも、やっぱり事業会社に戻りたいという気持ちはあるんですか。今のお話を聞いていると。
事業会社というよりは、どちらかというと「自分で製品を作って、それを自分で売るところまでやりたい」という気持ちが強いです。本当にゼロから作り上げて、一気通貫で責任を持って進めてみたいんですよね。
私は自分に裁量が多ければ多いほど仕事が楽しいと感じるタイプで、逆に言うと今の環境だと「勝手に決めないでください」「全部承認を取ってから動いてください」ってよく怒られます(笑)。だからこそ、いつかは自分の裁量で自由に進められるような仕事をやってみたいと思っています。
― では、次のキャリアや今後の目標について、今考えていることがあれば教えてください。
コンサルをずっと続けられるわけではないと思っているので、将来的にはプロダクトマネージャー的なポジションを目指したいと思っています。ただ、現実的にはベンチャーやスタートアップだとそれなりのリスクが伴いますよね。実際、過去にそういう環境はすごく楽しかったんですけど、「会社が潰れる」となったら元も子もない。
しかも、そういう場には本当にいろんな人が集まるので、相性の問題も大きい。うまく合えばすごく良いチームになるけれど、合わなければ崩壊することもあるし、たとえ上手く回ってもお金を稼げるかはまた別問題です。
なので、そこをどうリスクと捉えるか、どのタイミングでそのリスクを取るのかは、今すごく悩んでいるところです。
― 最後に、ポストコンサルキャリアについて悩んでいる方へのアドバイスやメッセージをお願いします。
そうですね、最近本当に感じているのは、「逃げるのは簡単だけど、続けることのほうが難しい」ということです。
ちょっと昭和っぽいメッセージかもしれないですが、やっぱり続ける力って大事だなと。仕事って基本的には楽しいことばかりじゃないのが前提だと思います。
だからこそ、会社や役職にこだわるのではなく、「自分の価値をどう上げるか」「自分がどう成長できるか」にフォーカスして働くことが大切だと感じています。それが最終的には、自分のキャリアを切り開く力になると思っています。
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