コンサルタントは増えすぎ?背景や将来性を徹底解説

国内のコンサルティング業界は近年著しい成長を遂げており、ビジネスパーソンとしての成長機会や高水準の報酬を背景に、多くの人材がキャリア選択として注目しています。その一方で、コンサルタント数の増加に伴い、市場価値の低下を懸念する見方も出てきています。
コンサルは増えすぎ?多すぎ?
具体的な成長規模を、業界最大手のアクセンチュアを例に見てみましょう。同社の社員数は、2000年時点では約2,000名でしたが、2025年1月には25,000名を超え、四半世紀で12倍以上の規模に成長しています。
この急成長は、アクセンチュアに限った現象ではありません。マッキンゼーやボストンコンサルティンググループといった戦略コンサルティングファーム、そしてデロイト、PwC、EY、KPMGに代表されるBig4も、継続的な規模拡大を進めています。さらに、新興のコンサルティングファームの台頭も相まって、業界全体として大きな構造変化を遂げています。
コンサルは飽和?
ではコンサルタントは飽和状態(需要が最大限まで満たされており、これ以上増えると供給過多となってしまう状態)なのでしょうか?
市場規模(コンサル需要)の拡大傾向
まず、マクロの市場データをみてみましょう。
IT専門調査会社IDC Japanの最新調査によると、2024年の国内ビジネスコンサルティング市場は、前年比10.6%増という力強い成長が見込まれています。この成長トレンドは一過性のものではなく、2028年までの年間平均成長率(CAGR)は10.1%と予測されており、2028年には市場規模が1兆1,714億円に達すると見込まれています。
2024年以降の同市場は、引き続き国内企業のデジタルビジネス化に向けた需要が牽引し、高成長が継続するとIDCではみています。既存ビジネスのモダナイゼーションに向けた業務変革支援、AIユースケースの発展とAI活用支援が成長を牽引するほか、サービス単価の上昇も支出額の成長にはプラスに影響するとみられます。2023年~2028年の同市場は年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)10.1%で成長を継続し、2028年の同市場は1兆1,714億円に達するとIDCでは予測しています。
参考:IDC Japan
供給状況(コンサルタント数・稼働率)
大手コンサルティングファームは継続的に採用を強化しており、人材供給が需要に追いついていない状況が伺えます。新興ベンチャーファームの台頭も、未だ満たされていない市場ニーズの存在を示唆しています。また、現役コンサルの話を伺う限り、大手ファームでの価格下落の兆候も見られず、市場全体としては健全な成長段階にあると考えられます。
一方で、現役コンサルファームのMupなどに話を聞いた印象としては、以下のような状況もあるようです。
- 一部のファームや部門での案件不足
- 稼働率の低下に悩むメンバー層(コンサルタント)の存在
これらの状況から、業界全体としては依然として成長市場である一方、特定の領域や階層では部分的な飽和状態が生じつつあるのかもしれません。
コンサルが増えた理由
需要サイドのDXニーズ・人材不足
デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速が、コンサルタント増加の主要な要因となっています。企業のデジタル化への取り組みが本格化する中で、クライアント企業からの引き合いが著しく増加しており、コンサルティングファームは、DXに関する経験やスキルを持つ人材を高待遇で積極的に採用しています。
この傾向は、日本の人材市場が直面する構造的な課題とも密接に関連しています。深刻な人材不足に直面する企業にとって、不確実性の高いプロジェクトにおいては、正社員として専門人材を抱え込むよりも、コンサルティングファームの知見を活用する方が合理的な選択となるケースが増えています。
こうした市場環境の変化を背景に、コンサルティングファームへの案件依頼は継続的に増加しており、それに応えるためのコンサルタント採用も拡大基調が続いています。
供給サイド:コンサルファームの戦略展開
コンサルティングファームの事業戦略の変化も、コンサルタント増加の重要な要因となっています。従来の戦略立案中心のビジネスモデルから、実行支援まで含めた包括的なサービス提供へと事業領域を拡大しており、それに伴って必要な人材の確保を積極的に進めています。
特にシステム導入や実行支援といった領域は、プロジェクトが長期間にわたり、多くの人員を継続的に配置できることから、コンサルティングファームにとって安定的な収益源となっています。この収益構造の変化を背景に、実務経験を持つ専門人材の採用を強化しており、一部のファームではM&Aを通じた人材確保も活発に行っています。
供給サイド:異業種からのコンサル参入
異業種からの参入が増えているというのも、コンサルが増えた理由の一つでしょう。
SIerのコンサル参入
コンサルタント増加の重要な要因として、異業種からの市場参入が挙げられます。特にシステムインテグレーター(SIer)各社の動きが顕著です。この動きは、AccentureやBig4などの大手コンサルティングファームがシステム導入・保守運用領域へ進出する中で、SIer各社が上流工程であるコンサルティング領域への参入を図る、自然な市場対応として捉えることができます。
富士通
富士通は2020年、DXコンサルティングに特化した100%子会社としてリッジラインズ(Ridgelinez)を設立しました。同社は大手コンサルティングファームから経験豊富なパートナー人材を積極的に採用し、組織基盤を構築しています。
さらに2024年には、「Uvance Wayfinders」という新ブランドを立ち上げ、本体としてもコンサルティング事業への本格参入を表明しました。富士通は2025年度までに、M&A、中途採用、社内人材のリスキリングを通じて、グローバルで1万人規模のコンサルティング体制の構築を目指しています。この内訳は、ビジネスコンサルティング人材3,000人、テクノロジーコンサルティング人材7,000人であり、2024年時点の5倍の規模となります。
NEC
NECもまた、グループ会社のAbeam Consultingに加え、本社機能の強化を進めています。同社の中期経営計画では、2025年度までに本社のコンサルタント人材を1,000名体制まで拡充し、DX事業を成長の中核に位置付けることを明確にしています。
広告代理店のコンサル参入
広告代理店業界でもコンサルティング領域への進出が活発化しています。この動きの背景には、コンサルティング業界と広告業界の境界線が徐々に曖昧になっている市場環境の変化があります。コンサルティングファームが戦略立案に加えて実行支援まで手掛けるようになり、マーケティングやプロモーション領域にも進出する中、業界の競争環境は大きく変化しています。
コンサルティングファームは、クリエイティブやUXデザイナーの内製化を進め、制作会社やPR会社、Web広告代理店との買収・協業を通じて、従来広告代理店が強みを持っていた領域での機能を強化しています。一方、広告代理店各社も、マス広告での強みは維持しつつも、デジタル広告分野での競争激化に対応するため、上流のマーケティング戦略策定やMarTech(CRM導入等)の領域へと事業を拡大しています。
具体的な動きとして、電通は電通デジタルを設立してコンサルティング事業に参入し、博報堂は2025年にNTTデータとの共同出資会社設立を通じてITコンサルティング分野への本格参入を表明しています。
大手総合商社のコンサル参入
大手総合商社もまた、コンサルティング市場への参入を積極的に進めています。
丸紅は2020年、ドルビックスコンサルティングを設立し、段階的な事業展開を進めています。同社は、まず丸紅グループ内の各事業におけるDXニーズに対応することで実績と知見を蓄積し、その経験を基盤として将来的にグループ外の案件へと事業領域を拡大していく戦略を採用しています。
一方、伊藤忠商事は2024年、より積極的なアプローチを選択しました。大手戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループとの合弁で「I&Bコンサルティング」を設立し、顧客企業のIT・デジタル活用による課題解決や事業変革を支援するDXコンサルティング事業に参入しています。この提携は、商社の持つ事業知見とグローバルコンサルティングファームの専門性を組み合わせた、新たなビジネスモデルの創出を目指すものといえます。
コンサルの将来性・業界の未来
コンサルバブルいつまで続く?
コンサルティング市場は現在、好調な成長を続けていますが、この成長トレンドの持続可能性については慎重な見方も出てきています。国内市場の成長鈍化を予測する調査も存在し、業界は将来的な調整局面に備える必要性が指摘されています。
また、大手ファームのMupに話を聞くと、最近は経営方針としてコンサルティング会社への業務発注を抑える方針の大企業も増えてきた印象があるそうです。コンサルティング市場の成長を支えてきた大手企業のこうした方針転換は、市場環境の変化を示す重要なシグナルとして捉えることができます。
また、現役Mupの話によれば、コンサルへ求められるパフォーマンスが高くなっている傾向もあるようです。この変化は主に二つの要因によって引き起こされています:
- ワークスタイルの変革 コンサルティング業界全体でワークライフバランスを重視する「ホワイト化」が進む中、従来のような長時間労働モデルからの転換が求められています。しかし、より短い労働時間の中で従来と同等以上のパフォーマンスを実現することが要求され、個々のコンサルタントへの期待値は却って高まっています。
- クライアント側の目利き力向上 クライアント企業にコンサルティング経験者が増加することで、提供されるサービスの品質に対する要求水準が上昇しています。これにより、コンサルタントには一層高度な専門性と効率的な価値提供が求められるようになっています。
こうした環境変化は、特に業界未経験者にとって参入障壁を高める要因となってくるかもしれません。
結論:市場環境に左右されない、コンサルタントとしての本質的価値
市場環境が変化し、コンサルティング業界全体が転換期を迎える可能性は確かにあります。しかし、そのような状況下でこそ、真の実力を持つコンサルタントの価値は一層高まっていくと考えられます。競争が厳しくなる中で、確かな課題解決能力を示せるコンサルタントには、より大きな活躍の機会が開かれるでしょう。
コンサルティングの本質は、クライアントの課題に真摯に向き合い、共に解決策を見出していく点にあります。この仕事の醍醐味は、単なる市場動向や業界環境を超えた、深い知的満足と実務的な達成感にあります。クライアントとの協働を通じた課題解決に喜びを見出せる人材にとって、コンサルティングは依然として魅力的なキャリアパスであり続けるでしょう。
したがって、コンサルタントを志す方々には、業界の現状を十分に理解した上で、自身の適性や興味に基づいて挑戦することをお勧めします。市場環境の変化は確かに重要な考慮要素ですが、それ以上に、この仕事に対する情熱と適性を持ち合わせているかどうかが、キャリアの成功を左右する要因になるのではないでしょうか。
ポストコンサルキャリアを考える現役コンサルの方へ
ポストコンサルキャリアを考えている方は、是非以下の記事も参考にしてみてください。実際にポストコンサルキャリアを歩んでいる10名以上の方へのインタビューも踏まえた記事となっています。

また、近年はフリーランスコンサルタントという選択をする方も増えています。興味がある方は以下の記事もご覧ください。
フリーランスコンサルタント完全ガイド
フリーランスのコンサルタントとして独立・成功するために知っておくべきことを網羅。フリーコンサルの始め方・開業から案件獲得までの流れ・エージェントの選び方などを知りたい方は、「【完全ガイド】フリーコンサルの始め方や案件獲得のポイントを徹底解説」も合わせてご覧ください。

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自身に合った案件紹介サービスを探している方は、「【61社徹底比較】フリーコンサル向けの案件マッチング・エージェントおすすめ」も合わせてご覧ください。

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