【ポストコンサル転職インタビュー】戦略コンサル・スタートアップを経て、古巣の日系大手へ再入社

大手金融機関から外資系戦略コンサルティングファームへ転職し、その後スタートアップのCOOを経て、再び新卒入社の金融機関に戻った方へのインタビューです。各ステージでの経験や学び、キャリア選択の判断基準などについて語っていただきました。

Interviewee Profile

新卒で金融業界の日系大手に就職。海外MBA留学を経験後、外資系戦略コンサルティングファームに転職。コンサルタントとして、主に金融業界のクライアント向けに、中期経営計画策定支援や新規事業戦略策定、DX戦略策定支援等を担当。数年間コンサルファームで勤務した後、スタートアップの経営層ポジションへ転職。顧客支援からプロダクト開発まで、オペレーション全般を担当。その後、新卒で入社した大手金融機関に管理職として再入社。

目次

経営の意思決定を適切に導くためのスキルを学ぶため、
戦略コンサルファームへ転職

―簡単にご経歴を教えてください。

新卒で大手金融機関に入社し、営業部門で数年間働いた後、社内留学制度を活用し海外のMBAプログラムに参加する機会を得ました。MBA留学後は海外事業部門に配属され、5年ほど海外事業の戦略企画やM&A業務などに携わりました。

その後、一度外の世界での経験を積みたいと考え、外資系の戦略コンサルティングファームに転職しました。コンサルティングファームで3年ほど勤務した後、MBA時代の知人が立ち上げたスタートアップ企業に参画し、COOとしてオペレーション全般の立ち上げと管理を担いました。

そして最近、元上司からの誘いを受け、新卒で入社した金融機関に再入社することとなりました。現在は海外事業部門にて管理職を務めております。 

―新卒で入社した会社からコンサルティングファームに転職した理由を教えてください。

当時、30代半ばにさしかかっており、世間一般で「35歳転職限界説」が囁かれていたため、転職するならばラストチャンスだと考えていました。自身のキャリアを振り返ると、特定業界の海外事業に長らく携わってきたことで、逆に柔軟性に欠けるキャリアになってしまったのではないかという懸念がありました。そのため、どの業界においても通用するようなビジネススキルを身につけておきたいと考えるようになりました。

また、海外企業の買収案件に関わった際、途中までは非常にロジカルに進んでいたプロセスが、最終段階で社内外からのプレッシャーなどにより、政治的な判断に左右されるケースがありました。このような経験から、非合理的な意思決定をどのように防ぐことができるのかという漠然とした課題意識を抱いていました。これらの課題を体系立てて戦略に落とし込むことこそが、戦略コンサルティングファームの役割だと考えていました。

つまり、自身のスキルセットの幅を広げることと、経営の意思決定プロセスを適切に導くためのスキルを身につけることを目的として、戦略コンサルティングファームへの転職を決意しました。

―海外MBAへの留学経験も転職に影響しましたか?

海外MBAプログラムでは、転職を通じてキャリアをステップアップさせる人が多数存在し、その環境に身を置いたことが私のキャリア観にも影響はしたと思います。日本の企業の中にずっと身を置いていたら、転職をするという発想に至ることはなかったかもしれません。MBAプログラムを経験したことで、転職によるキャリアアップが当たり前だというマインドセットが自然と身についたと思います。

加えて、MBAで習得した知識やスキルを活かし、意思決定プロセスにより深く関与したいという思いも強くなっていきました。近年、日本の金融機関でも変化の兆しが見られますが、当時は年功序列の組織体制が色濃く残っており、意思決定に関わるポジションに就くまでには長い時間を要するのが実情でした。MBAで学んだことを意思決定に活かさなければ、自身の成長が停滞してしまうのではないかという懸念がある中で、転職という選択肢について検討するようになりました。

戦略コンサルファームでは苦労しながらも、
経営課題を解決するスキルを身につけることができた

―コンサルティングファームではどのような仕事をしていましたか?

コンサルティングファームに入社した当初の半年間は、業界にこだわらず自身の興味を引いたプロジェクトに積極的に手を挙げ、プロジェクトオーナーであるパートナーとの面談を経てプロジェクトに参画するという流れでした。その後、自分の強みと興味を考慮し、金融機関セクターに所属して多岐にわたるプロジェクトに携わる機会を得ました。

扱ったプロジェクトの中で最もオーソドックスなものは、クライアント企業の中期経営戦略の策定です。戦略立案に際して外部の視点を取り入れたいというクライアントのニーズに応え、コンサルタントとして中計策定を支援しました。また、保険会社の海外事業拡大に向けた新規事業戦略の検討や、クライアント企業の抜本的な組織変革を目的とした組織トランスフォーメーション戦略の立案なども手がけました。

当時、デジタルトランスフォーメーションが注目を集めていたため、保険会社においてデジタル技術を活用した新規事業創出の可能性を探るプロジェクト等にも取り組みました。

―コンサルティングファームに転職して良かった点を教えてください

1つ目は、視野が大きく広がったことです。同じ会社に長く在籍していると、その会社の見方しかできなくなってしまう傾向がありますが、コンサルティングファームでは全く異なる環境で、多様な人材やクライアントと関わることで、物事を多角的に捉えられるようになりました。

また、会社に生かされているという脅迫観念から解放されたことが何よりのメリットでした。自分の言いたいことを堂々と主張し、やりたいことを実行に移せるようになり、それでも通じなければ、次の場所に挑戦すればいいという考え方が強くなりました。そういった意味で、自分を無理に抑え込むことなく、自分らしく働けるようになったと思います。

もともとの自身の課題意識に沿ったスキルを身につけられたことも良かった点です。一社目で海外企業の買収に関わった経験から、経営の意思決定プロセスを適切に導くためのスキルを習得したいと考えていました。コンサルティングファームでの3年間は、まさにその課題に集中的に取り組む期間となりました。その結果、問題解決のアプローチが体系的に理解でき、満足のいく成果を得ることができました。「こうやって考えていくのか」という気づきを得て、それを確実にスキルとして身につけられたことは、非常に価値のある経験だったと思います。

さらに、豊富なネットワークを構築できたことも良かったと感じています。今でもコンサルティングファームで知り合った方々とは交流が続いており、社内外問わず幅広い人脈を持てるようになりました。この人的ネットワークは、その後のキャリアにおいても強みになっていると考えています。

―コンサルティングファームに転職して苦労したことはありますか?

コンサルティングファームに転職して苦労したことは大きく2つあります。

1つ目は、全く異なる業務に従事することになったため、30代半ばにして新入社員のような状態になったことです。最初の半年間は、まるで違う言語を話す人たちに囲まれ、自分が何をしているのかよくわからない状況で、厳しい指導を受けることも多々ありました。

2つ目は、仕事と家庭のバランスを取ることの難しさです。転職当時、私はすでに結婚しており、子供もいましたが、転職後は新しい環境で土日も仕事に追われることが多く、心に余裕を持つことが難しい状況が続きました。コンサルティングファームでの3年間は、常にこのような状態でしたが、特に転職直後の半年間は精神的なハードシップが高かったと感じています。

より意思決定に近い立場で仕事をするために、
スタートアップ企業のCOOポジションへ転職

―3年ほどコンサルティングファームで働いた後、スタートアップに転職された理由は何でしょうか?

ファウンダーはMBA時代の友人なのですが、彼もMBA卒業後に私とは別の戦略コンサルティングファームで働いており、定期的に連絡を取り合って、お互いの近況を共有する関係にありました。

彼との会話の中で、「私は戦略コンサルティングファームに長期的に在籍するよりも、将来的には事業会社に戻りたい」という話をしていましたが、その中で自分たちで会社を立ち上げてみるのも面白そうだという話題が出ていました。私自身、意思決定プロセスにより近い場所で仕事がしたいという思いがあったため、スタートアップのような小規模な会社で働くという選択肢も視野に入れていました。

その友人は結局会社を立ち上げ、1年ほど経って事業が軌道に乗り始めたタイミングで、改めて一緒に働かないかと声をかけてくれました。私としても、意思決定により深く関与できる環境で仕事がしたいということと、自分で事業を立ち上げることにチャレンジしてみたいという気持ちがあったので、この誘いを受けてスタートアップへの転職を決意しました。

―スタートアップではどのような仕事をしていましたか?

スタートアップでは、ポジションはCOOでしたが、2人目の社員として会社の立ち上げに関するあらゆる業務に携わりました。ファウンダーが強い想いを持っている領域で様々なサービスを立ち上げていくという大まかな方向性は決まっていましたが、事業自体はこれから立ち上げるというアーリーステージにありました。そのため、事業を1から立ち上げていくフェーズに深く関与することになりました。

公的機関のスタートアップ支援プログラムなどにも採択されながら、少しずつ事業を形作っていきました。同時に、事業拡大に必要な営業社員やバックオフィス社員の採用を進め、組織体制の構築にも尽力しました。私がその会社を離れる頃には、社員数が十数名規模にまで拡大していました。

元上司の役員からの誘いで、古巣の大手日系企業に再入社。
外の世界を経験したからこそ感じる“仕事の面白さ”

―スタートアップでご活躍されながらも、40歳を目前に新卒で入社した大手金融機関に戻られたきっかけを教えてください。

新卒で入社した会社の元上司が役員に就任し、その元上司から「久しぶりにお互いの近況を共有しよう」というメールが届き、一緒に食事をする機会がありました。

その際、会社が海外事業を拡大していく必要性がある一方で、人材リソースが不足しているという課題を抱えていることを知りました。その中で、私が戻ってくるという選択肢もあり得るのではないかというお話をいただきました。加えて、もともと会社としては一度辞めた社員を再び受け入れることに消極的でしたが、当時はアラムナイ制度を立ち上げるなど、柔軟性を持った方針に変化しつつある状況でもありました。

私自身、この会社を嫌だから辞めたわけではなく、意思決定プロセスに関して煮え切らない思いがあり、スキルを身につけるために外の世界に飛び出しました。そのため、一定のスキルが溜まったのであれば、再び戻って以前はできなかったことにチャレンジできるかもしれないと考えましたし、戻ること自体にあまり抵抗はありませんでした。

一方で、スタートアップに入社してまだ1年程度しか経っておらず、事業が順調に拡大している中で抜けることには不完全燃焼感がありました。そのため、転職の判断には悩みました。

しかし、元上司の役員の方と2、3回話をする中で、今のタイミングを逃せば二度とこの人と一緒に働くチャンスはないかもしれないと感じ、最終的に転職を決断しました。スタートアップのCEOも大きな器で受け入れてくれて、「チャレンジしても良いし、いつでも戻ってきて構わない」と言ってくれました。実際、今も副業の形でそのスタートアップに関わり続けています。

―元いた会社に戻るというところで、仕事をしやすい面はありましたか?

元いた会社に戻ったことで、仕事をしやすい面はありました。特に、同じ部門に戻ったこともあり、半分程度は知っている人たちだったので、温かく迎え入れていただきました。

また、仕事内容も経験したことがあるため、転職初日から十分に仕事をこなすことができました。新しい環境に適応するストレスを感じることなく、スムーズに業務に取り組めたと感じています。

―コンサルファームとスタートアップを経験して、大手事業会社に戻ってきたからこそ、感じている仕事の面白さややりがいはありますか?

事業会社の面白さは、実際の事業を持っているという点に尽きると思います。コンサルティングファームでは、ハイレベルな経営戦略を考え、大手企業の経営層と対峙するという知的な面での面白さややりがいがあります。それはそれで非常にチャレンジングな環境であり、やりがいを感じる部分です。

しかし、実際にその戦略を実行し、結果を出していくというのは、事業会社でしか味わえない経験だと感じています。事業会社では、時にはコンサルティングファームの助けを借りることもありますが、基本的には自分たちで考えた戦略を、実行に移し、その結果に責任を持たなければなりません。この一連のプロセスは、非常にエキサイティングであり、事業会社ならではの醍醐味だと言えます。

2つ目としては、この会社では転職組がほとんどいないため、一度外の世界を経験した人間の方が、会社の問題点や改善点を客観的に指摘しやすいという点が挙げられます。外から見た視点で物事を捉え、率直に意見を述べることができるのは、転職経験者ならではの強みだと感じています。

このように、他社での経験を積んだからこそ、事業会社の面白さを再認識できましたし、組織に新しい視点をもたらすことができていると思います。

ポストコンサルでは、多少の非効率さがあっても受け入れられる
“やりたい仕事”を見つけることが大切

―コンサルティングファームからスタートアップへの転職を検討していた際、転職エージェントを活用しましたか?

最終的にはMBA時代の友人が立ち上げたスタートアップに転職しましたが、一応色々な会社を見てみようと思い、エージェントも活用しました。転職サイトに登録し、いくつかのエージェントから主にスタートアップの経営幹部ポジションをご提案いただきました。

―転職活動中に苦労したことはありますか?

年収の水準が変わるということは覚悟していましたが、実際に転職活動を進める中で、悩ましく感じました。例えば、投資銀行やファンドに転職する場合、コンサルティングファームと同等かそれ以上の年収を提示されることが多いのですが、スタートアップの場合は、ストックオプションで補填するという形が一般的です。そのため、足元の年収は下がることが多く、その点は悩ましい部分でした。

転職先を選ぶ際には、自分のやりたいことや、スタートアップの将来性、ストックオプションの回収見込み、自分が得られるポジションなど、様々な要素のバランスを考える必要があります。年収の期待値をコントロールしながら、これらの要素を総合的に判断していくのは、なかなか難しいと感じました。

―キャリア全体を通じて意識してきたことはありますか?

自分に足りないスキルや知見、経験を補うことを意識してキャリアを選択してきました。全てを完璧に補えるわけではないので、自分の将来のビジョンを実現するために必要不可欠なスキルや経験を優先的に補強していくことを心がけてきました。

例えば、1回目の転職では、どのような経営課題にも対応できる幅広い知識とスキルを身につけたいと考え、戦略コンサルティングファームに移りました。

また、将来的には意思決定ができるポジションを目指していたので、スタートアップのCOOとして転職したことも、自分のキャリアステップとして適切な選択だったと感じています。日々、重要な意思決定を求められる環境に身を置くことで、決断力や判断力を鍛えることができました。

現在の大手金融機関でのポジションは、直接の意思決定権は限定的ですが、海外部門のトップマネジメントとコミュニケーションを取ることができるため、経営に近い目線で仕事ができています。グローバルな視点で経営に関われる点は、自分のキャリアビジョンに合致していると考えています。

―今後のキャリアについてどのように考えていますか?

現在の職場では、ビジネスが新たな局面を迎えており、海外でのローカル事業を一から立ち上げるという挑戦に取り組んでいます。ほぼゼロからのスタートであるため、この2、3年の間で事業戦略を綿密に練り上げ、着実に実行に移していくことが重要だと考えています。この事業に関しては、自分の中で責任を持って取り組みたいと思っているので、軌道に乗るまでは深く関与し続けたいと思います。可能であれば、現地に赴いて直接実行を指揮することにもチャレンジしたいと思っています。

一方で、以前勤めていたスタートアップの事業も順調に拡大しているようなので、そちらでのコミットをまた求められることがあるかもしれません。現在は副業の立場からサポートしていますが、もしもっとコミットしてほしいと言われた場合、どのように判断するかは分かりません。そのような状況になったら、じっくりと考えてみたいと思います。

―最後に現役のコンサルタントに、ポストコンサルキャリアについて、何かアドバイスやメッセージをいただけますか?

個人的な意見ではありますが、コンサルティングファームで学べたスキルは、どの業界のどのポジションにおいても非常に重要で、活用できるものだと思います。もし現在1年目や2年目で、コンサルティングファームを辞めようかと考えているのであれば、もう少し歯を食いしばって、自分である程度コンサルティング業務をこなせるスキルが身につくまで、自分を高めていくことが大切だと思います。そこへの到達に要する期間は人それぞれ異なるでしょうが、自分が満足できるレベルに達するまでは、しっかりと経験を積むことをおすすめします。

満足のいくレベルに到達した後、次のキャリアを考える際には、自分が本当にやりたいことを見つけて、それに向かって進んでいくことが重要だと思います。その際、コンサルティングファームは非常に効率的な組織で、優秀な人材が高い割合で存在し、高い生産性で働いていることを理解しておく必要があります。

コンサルティングファームの外の世界では、ある程度の非効率さは避けられません。大手企業であれば、縦割り組織などによる非効率性も存在します。そのような非効率な環境でも、自分のやりたい仕事であれば耐えられるのか、よく考えて選択することが重要だと私は考えています。

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