【ポストコンサル転職インタビュー】AI領域の外資系事業会社で挑戦。元コンサルマネージャーが転職で得たもの

ポストコンサル転職インタビュー

大手コンサルティングファームでマネージャーを務めた後、AI領域の外資系事業会社へ転職した方に、コンサルタントとしてのキャリア、転職の決断に至った経緯、現在の仕事でのやりがい、転職活動での苦労と学び、そしてこれからのキャリアビジョンについて詳しく伺いました。

Interviewee Profile

新卒で大手コンサルティングファームに就職。コンサルティングファームでは、金融や製造、通信・ハイテク領域を中心に、テクノロジーを活用した新規事業立案やDX推進、IT戦略立案やIT化推進等のプロジェクトに多数参画。マネージャーまで経験後、外資系事業会社に転職。現在はカスタマーサクセスの管理職として、顧客のAI活用に関する支援に従事。

大手コンサルファームのマネージャーから
AI領域の外資系事業会社へのキャリアチェンジ

―簡単にご経歴を教えてください。

大学卒業後、総合系の大手コンサルティングファームに入社いたしました。 コンサルファームでは最初の3年ほどは、IT導入やシステム開発にPMOとして参画するプロジェクトに携わっていました。その後の3〜4年間は、事業戦略の策定や新規事業企画、業務改善などのプロジェクトに従事し、クライアントの課題解決に取り組みました。最終的にはマネージャーに昇格し、提案からプロジェクトのデリバリーリードまで一貫して担当する立場となりました。

マネージャーとしてしばらく勤務した後、20代後半で現職の外資系事業会社に転職をしました。現職では、いわゆるカスタマーサクセスを担当しており、ソリューション導入後の活用促進や利用拡大といった領域を主に担当しております。一方で、ポストセールスの領域だけではなく、プリセールスの段階でソリューションを提案するという業務にも少し携わっています。

―新卒でコンサルファームに就職して良かったと感じる点について教えてください。

まず1つ目は、ビジネスパーソンとしての基礎的なスキルが身についたことです。考え方やドキュメント作成といったスキル面での成長はもちろん、プロフェッショナルファームならではの仕事への向き合い方やマインドセットも習得することができました。

2つ目は、比較的若い段階から、大手企業の部長クラスや時には役員クラスの方々と対峙する機会が得られたことが大きな財産になったと感じています。

―コンサルファームで順調にマネージャーに昇格する中で、転職を考えたきっかけを教えてください。

転職を考えたきっかけは大きく2つありました。

1つ目は、マネージャーへの昇格がコンサルタントのキャリアにおける一つの区切りだと考えていたからです。そのタイミングで、コンサルファームに残ってシニアマネージャーやパートナーを目指すのか、あるいは別の道を選ぶのかを真剣に考えるようになりました。

2つ目は、マネージャーとして働く中で、クライアントがコンサルタントを常駐させて多用している状況に違和感を覚えたことです。クライアントはコンサルタントに対して高額なフィーを支払っているわけですが、その分を自社の社員に還元した方が良いのではないかと感じていました。もちろん、戦略立案などのトラディショナルなコンサルティングもあると思いますが、昨今はコンサルタントが常駐して社員代替的に働くことが多くなっているのが実情です。そういった中で、クライアントがより自発的に成長することを支援する立ち位置で働きたいと考えるようになりました。

―現職の外資系事業会社での仕事内容を教えてください。

現職はAIプロダクトを提供する事業会社で、私はカスタマーサクセス担当として10社から15社程度のクライアントを担当しています。基本的には、クライアントがAIを活用していく上でネックとなっている要因を特定するためのヒアリングを行い、クライアント側で解決可能な問題であれば社内で対応いただき、外部の力を必要としている場合は私たちから提案を行うなどの支援をしています。

例えば、AI活用を推進するにあたって人材育成が鍵となっているケースがあります。その場合は、どのように人材育成を進めていくかというプランの立案から、実際の育成プロジェクトの実行までを、クライアントの担当者と週1回程度のペースでディスカッションを重ねながら、提案やサービスのデリバリーを行っています。

また、AIガバナンスの領域で課題を抱えているクライアントに対して、ヒアリングを通じてガバナンスの問題点を明らかにし、解決策の提案を行うことも多いです。

―仕事内容としてコンサルティングに近い部分があるように感じました。一方で10〜15社のクライアントを担当しているということで大変ではないですか?

仕事内容はコンサルティングに近い部分があります。ただ、コンサルティングファームの場合は、基本的には稼働率100%でプロジェクトを担当することが多いですが、現職ではクライアント側でもある程度動いていただくので、1つの顧客にかかる工数はそこまで高くありません。

また、コンサルティングファームのプロジェクトの場合、PJ開始から終わりまで常に高負荷で走り続けるようなイメージがありますが、現職ではクライアントごとにそれぞれ繁忙の波があるので、うまく波をばらけさせることで10社から15社程度を回すことができています。

さらに、各クライアントに対しては、営業担当と技術系のデータサイエンティスト、そして私の3名体制で対応しているため、業務の負荷分散も行えています。

外資系事業会社への転職で、
ワークライフバランスの改善とキャリアの選択肢拡大を実感

―コンサルファームから外資系事業会社に転職して良かったことを教えてください。

転職して良かったことは主に3つあります。

1つ目は働きやすさの面で改善されたことです。特に、20代後半から30代にかけては、プライベートで様々な変化が起こるタイミングだと思いますが、現在はリモートワークも可能で、働く場所はあまり問われません。また、やるべきことをきちんとこなしていれば、ある程度の時間の融通も利きます。コンサルティングファームの時は、クライアント先に常駐することが多く、このような働き方は難しいケースもありましたので、この点は大きな改善だと感じています。

2つ目は、コンサルティングファームにいた時にはあまり意識していなかった観点を持てるようになったことです。例えば、営業的な数字の側面や、会社全体としてどのようにサービスを市場にアピールし、新規顧客を獲得したり、既存顧客を伸ばしていくかといった視点です。もちろんコンサルファームでも、パートナークラスになると、案件のパイプラインをどう管理するか、そもそも案件の種をどこから見つけるかなどの思考が求められると思いますが、マネージャークラスでは提案して案件を獲得し、獲得した案件を遂行することに主眼が置かれていると思います。転職して、早い段階でそういった観点を身につけられたことは良かったと思います。

3つ目は、キャリアの選択肢が広がったことです。エージェント等から転職案件のご紹介をいただくことがありますが、その際、コンサルティングファームと事業会社での経験を掛け合わせたようなオポチュニティの話を頂くことがあります。転職をしたことで、キャリアの幅が広がったと感じています。

―具体的にはどのような転職のオファーがありますか?

事業会社の戦略企画系のポジションで、コンサルティング的なスキルを持ちつつも、事業会社内で実践できる人材を求めるようなオファーがあります。実際に話を聞いてみると、コンサルティングファームでの経験だけでは不十分で、事業会社での一定の経験年数も求められているケースが多いです。

おそらく、彼らが求めているのは、机上の空論や第三者的な提言だけではなく、実際に自分が会社の中で当事者としてバッターボックスに立ち、何かを成し遂げた経験があるかどうかなのだと思います。

―ワークライフバランスが改善したというお話がありましたが、具体的にどう変化しましたか?

現在は、土日は基本的に働くことはありません。平日の業務は夜の7時か8時頃までで、朝は9時か9時半頃から業務開始するなど、ある程度融通が効くようになりました。時差の関係上、グローバルな会議が深夜0時や1時から始まることもたまにありますが、最近は録画での視聴も可能なので、それほど負担はありません。

コンサルティングファーム時代は、単純に働いている時間が長いだけでなく、仕事をしていない時間も常に仕事のことを考えている状態が続いていて、それは土日も同様でした。転職して精神的にもワークライフバランスが改善したと感じています。

英語への不安は杞憂に終わり、
AI領域の最前線でクライアントの課題に深く関与できる面白さを実感

―転職にあたって不安はありましたか?

もちろん不安はありました。まず、私にとって転職自体が初めての経験だったので、新しい会社でパフォームできるかという不安はありました。加えて、外資系企業への転職だったので、英語力にも不安を感じていました。

―実際入社してから、英語の面はいかがですか?

私は英語があまり得意ではありません。コンサルティング時代も、英語でのデスクトップリサーチ等であれば問題なく行っていましたが、例えば海外の有識者にインタビューするような時は、英語が喋れる人にお願いしていました。そのため、転職の際には英語の観点で少し苦労した部分がありました。

しかし、実際に入社してみると、思ったほど英語を使う場面は多くないというのが正直なところです。もちろん、外資系企業によって状況は異なると思いますが、現在の私の業務では英語を使う機会はそれほど多くありません。

海外の上層部が来日した際やSlackなどのツールを通じたグローバルチームとのやり取りでは英語を使用しますが、テキストベースのコミュニケーションが主体です。また、様々な翻訳ツールも普及しているので、英語の負荷はそれほど高くないと感じています。

―現職はAI領域の外資系事業会社ということで、AIのバックグラウンドはお持ちだったのでしょうか?

AIの専門性を持っていたわけではありませんでした。ただ、コンサルティングファーム時代に、データ活用や統計分析を用いたプライシングの最適化などに携わった経験があったため、データやAIの領域には元々関心がありました。しかし、AI技術そのものについて詳しかったわけではないので、入社後にキャッチアップしていく中で身につけました。

―他に外資系企業特有の不安感や大変さはありますか?

前職のコンサルティングファームも変化の激しい環境だと感じていましたが、現在の外資系企業はそれ以上に変化のスピードが速いです。特に最近は、アメリカのテック企業が不況の影響を受けている時期でもあるので、レイオフや社内の体制変更など、様々な変化が頻繁に起こります。半年に1回や1年に1回といったペースで、大きな変化が発生することもあり、それに対応していくのは大変な面もあります。

ただ、30代前半の若いうちにこのような経験ができて良かったと感じています。もし伝統的な日本企業で長く働いた後に、40代や50代になってから外資系企業に転職したとしたら、この変化のスピードを受け入れるのは大変かもしれません。

―外資系事業会社で感じている仕事の面白さややりがいを教えてください。

仕事の面白さややりがいについては、大きく2つの点が挙げられます。

1つ目は、前職のコンサルティングファームと比べて、現職ではクライアントの社内の取り組みにより深く関わる機会が増えたことです。 コンサルティングファームではアドバイザー的な立場が多く、クライアントの内部事情まで踏み込んで考える機会は少なかったと感じています。例えば、論理的に考えれば解決策は明確なのに、実際には社内の政治的な要因やその他の理由で実行が難しいといった、コンサルタントの立場では見えにくかった課題も、より実感を持って理解できるようになりました。

背景として、現職では現場寄りの部署や担当者の方と相対することが多いということがあると思います。コンサルティングプロジェクトでは、カウンターパートとなる部署も企画系の部署であることが多いのですが、そこで考えた戦略を現場の部署に落とし込む際には、多くの課題が出てくるものです。そういった部分も含めて全体像が見えるようになったのは、面白さの一つだと感じています。

2つ目は、新しい技術が次々と登場するAI領域の最前線に立っていることです。変化の激しい技術領域で生成AI等の最先端の取り組みに携わることができるのは、大きなやりがいを感じる点です。

コンサルファーム時代の年収を維持しつつ、
自分の関心領域で活躍できる企業に転職

―転職活動はどのように進めましたか?

私の場合、転職活動の進め方は少し特殊だったかもしれません。期間を決めて集中的に転職活動を行うのではなく、1年ぐらいにわたって薄く長く活動を続けるようなスタイルでした。

基本的には、LinkedInやビズリーチなどの転職サイトに登録しておき、エージェントの方や企業の採用担当者から連絡が来た案件に対して、興味の有無を判断してお話を聞くという流れがメインでした。興味のある案件であれば、実際の選考プロセスに進むというケースが多かったですね。

また、LinkedInでは求人情報が直接掲載されていることもあるので、そういった情報に目を通しながら、自分で応募するということもありました。

―転職先を選ぶ際のポイントとして何を重視していましたか?

転職先を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがありました。1つ目は、コンサルティングファーム以外の企業を選ぶことです。2つ目は、給与水準を最低限現状維持、できれば現状以上にすることを重視していました。3つ目は、自分が関心を持てる領域かどうかです。これは業種やポジションによって変動するポイントですが、過去のプロジェクト経験を多少なりとも活かせるような領域かどうかも考慮しました。

―現職は条件的にも良かったのでしょうか?

幸いなことに、給与面では前職から条件を下げることなく転職することができました。また、働き方という点でも、前職と比べると大きく改善されていると感じています。加えて、AI領域やテック系の企業で働くことは、今後のキャリアの伸びしろにもつながるのではないかと考えています。

エージェントを活用しなかったため、給与交渉では苦労

―転職活動で苦労された点はありますか?

転職活動での苦労は、大きく2つありました。

1つ目は、事業会社のポジションの場合、その席は1つしかないということです。多くの候補者が集まる中で、自分の面接での手応えがあったとしても、他の応募者の方がより優秀だと判断された場合には、そのポジションが埋まってしまいます。また、タイミングの問題もありました。例えば、自分に合うと思えるポジションを見つけても、オープンになってから1か月後に気づいたような場合、そのタイミングでは難しいと判断せざるを得ないこともありました。

2つ目の大きな苦労は、英語力の部分でした。コンサルティングと同等以上の給与体系を維持するためには、どうしても外資系企業や英語を活用できるポジションを探す必要がありました。しかし、私自身、英語に高い自信があるわけではないので、どのようにアピールするかという点で苦労しました。英語での面接もいくつかあり、苦労を感じた部分です。

―転職活動ではエージェントを活用しましたか?

現職への転職時は、LinkedInで直接応募したのでエージェントは活用しませんでした。そのため、特に給与交渉の部分で難しさを感じました。エージェントを通じて転職活動を行う場合、大体の給与レンジについての情報を得ることができると思うのですが、直接応募の場合はその情報が見えないので、どのくらいの金額を提示すればいいのかわかりませんでした。

特に、外資系企業の場合、日本での給与情報がほとんどないので、交渉の基準を設定するのが難しかったですね。そこで、海外のGlassdoorというサイトを参考にして、グローバル水準でその募集ポジションの給与レンジがどのくらいなのかを調べ、それを基に交渉金額を決めました。

しかし、結果的には控えめな金額を提示してしまったようです。コンサルファーム時代の年収以上でいいと伝えたら、それよりも少し上乗せしてくれたのですが、もしかしたらもう少し交渉の余地があったのかもしれません。

―苦労しながらも、最終的に転職活動がうまくいった理由についてどう振り返っていますか?

私の場合、転職活動を薄く長く続けていたので、履歴書などの書類も日々アップデートしている状態でした。また、面接を重ねる中で、よく聞かれる質問に対する答え方のパターンが徐々に出来上がっていきました。

本来は、面接を受ける前に、予め想定質問に対する回答を作っておくのが理想だと思います。しかし、コンサルティングファームで働いている人は、そのような準備の時間を確保するのが難しいです。そこで私は、実際の面接での受け答えを通じて、面接対策をしていきました。個人的には、エージェントの方等と面接の練習をするよりも、むしろ、実際の面接の場で試行錯誤しながら、うまくいった部分や改善すべき点を見出していく方が、自分には合っていると感じました。

ポストコンサルキャリアを見据えて、
意識的に自分の強みを磨いていくことが重要

―今後のキャリアについてはどのように考えていますか?

今後のキャリアについては、明確に決めている訳ではありませんが、大きく3つの方向性を考えています。

1つ目は、現在の職場でのキャリアアップです。現在の会社の中で、プロモーションを重ねていくことで、より高い立場や責任ある役割を目指していくというパスとなります。2つ目は、現職からの転職を視野に入れつつ、同じような外資系のIT企業で、プロダクトの改善やマネジメントの領域に携わることです。3つ目は、事業会社側に移るという選択肢です。現在も事業会社ではありますが、よりテクノロジーやデジタルを駆使して、自社のビジネスを成長させていくような役割を担うことにも興味があります。以上の3つが、現時点で考えている主なキャリアの選択肢ですね。

―最後にポストコンサルキャリアについて、現役コンサルタントにアドバイスやメッセージをいただけますか?

偉そうなことは言えませんが、一つ明確に思うのは、自分なりの売りや特徴、つまり武器を意識して持っておくことが大切だということです。

特に最近は、私が在籍していた頃よりもコンサルタントの数が大幅に増えています。また、プロジェクトの内容も、業務代替的なものが多くなっていると思います。そのような状況で、いざ転職しようとなった時に、「何をしてきたのか」「何が得意なのか」と聞かれて、「資料が書けます」といった一般的なスキルだけでは、厳しいケースが出てくるかもしれません。

そういう時に、コンサルティングファームの中でも自分はこういう領域で強みを持っているというアピールポイントを、意識的に持っておく必要があるでしょう。それは一つの領域でも良いですし、複数あっても構いません。コンサルタントとしてのキャリアを積む中で、自分の専門性を磨き、それを言語化できるようにしておくこと。それが、ポストコンサルキャリアを考える上で、非常に重要になってくるのではないでしょうか。