【保存版】フリーランスコンサルタントが独立・開業する際に必要な手続きと準備を解説
フリーランスコンサルタントとして独立を検討中の方や、独立に向けた準備を進めている方の中には、個人事業主としての開業手続きについて気になっている方が多いのではないでしょうか。
独立の際は、案件探しや仕事環境の整備などに追われるため、個人事業主としての開業手続きを効率的に行うことが重要です。また、確定申告を見据えた上で、開業届けと同時に税務署に提出すべき書類などもあるため、注意が必要です。
本記事では、フリーランスコンサルタントの方に向けて、開業のメリットや開業届の効率的な提出方法に加え、独立する際に準備すべき事項を網羅的に解説いたします。
個人事業主として開業するメリット
所得税法により、事業所得を得ている場合は原則として事業開始から1か月以内に開業届を提出することが義務づけられています。そのため、フリーランスコンサルタントとして独立する際は、基本的に個人事業主として開業する必要があります。ただし、開業届を提出しなかったからといって罰則があるわけではなく、個人事業主として開業せずに活動しているフリーランスの方も存在します。
しかしながら、個人事業主として開業することで、様々なメリットを享受でき、しかも費用は一切かからないため、個人事業主として開業することをおすすめします。
フリーランスコンサルタントが個人事業主として開業することのメリットは、以下の3点です。
- 青色申告が可能となり、節税効果が得られる
- 屋号を取得でき、信用力を高められる
- 自営業者であることを証明できる
❶青色申告が可能となり、節税効果が得られる
会社員を辞めて独立すると、1年間の所得を税務署に報告するために確定申告が必要となります。確定申告には白色申告と青色申告の2種類がありますが、個人事業主として開業することで、青色申告を選択することが可能になります。青色申告では事前の申請や複式簿記での記帳、複数の帳簿提出が必要となる一方で、以下の4つの節税メリットを得られます。
- 最大65万円の特別控除が受けられる
青色申告を利用することで、最大65万円の特別控除を受けることができます。これは、同じ所得金額の場合、白色申告と比較して課税対象所得を最大で65万円下げられることを意味します。課税対象所得が減ることで、税金の金額も少なくなり、手元に残るお金が増えます。 - 赤字を3年間繰り越しできる
青色申告では、事業が赤字となった場合、赤字金額を翌年以降、最長で3年間繰り越すことができます。赤字を繰り越すと、翌年に黒字化したとしても、その金額から赤字分を差し引いた金額が課税対象となります。例えば、500万円の赤字があった翌年に300万円の黒字を出した場合、差額の200万円分にのみ税金がかかります。 - 30万円未満の固定資産が全額経費になる
白色申告の場合、10万円以上の固定資産は、減価償却による経費計上となりますが、青色申告の場合は、30万円未満のものであれば一括で全額経費にすることができます。これにより単年の所得金額が減り、節税効果を得られます。フリーランスコンサルタントになると、業務用に高性能のパソコンなどを購入することもあるため、この点は大きなメリットといえるでしょう。 - 家賃や電気代なども経費になる
フリーランスコンサルタントの方は、自宅を事務所として兼用することもあります。自宅を事務所兼用とする場合、事業に使用している割合分を経費にすることも可能ですが、白色申告の場合は50%以上を事業に使用しなければ経費として認められないため、ハードルが高くなります。一方で、青色申告の場合は事業利用分が50%以下であっても、経費として計上することが可能です。
❷屋号を取得でき、信用力を高められる
個人事業主として開業すると、屋号を取得することができます。ウェブサイトや銀行口座、名刺やメールの署名などに個人名ではなく屋号を記載することで、信用力を高めることができます。また、行政に対して個人事業主としての開業を正式に届け出ている証明にもなるため、取引をする企業側としても安心感が増すでしょう。
❸自営業者であることを証明できる
開業届の控えは、自営業者であることの証明書となります。例えば、子供がいる方が保育園への入園を申請する際、就労証明の提出が求められます。会社員の場合は就労証明書を提出すれば問題ありませんが、個人事業主の場合は開業届の控えの提示を求められることがあります。提示できない場合、個人事業主ではなく内職と判断され、保育園への入園可否が決まる「点数」が下がってしまう可能性があります。
開業に必要な準備
開業届・青色申告承認申請書の提出
個人事業主として開業するには、開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)を最寄りの税務署に提出する必要があります。事業開始から1か月以内の提出が推奨されており、国税庁のホームページからダウンロードするか、最寄りの税務署で取得した開業届を、税務署に持参、郵送、またはe-Taxを利用した電子申請によって提出します。
また、前述した青色申告を行うために、開業届を提出する際に、青色申告承認申請書を同時に提出することをおすすめします。青色申告承認申請書についても、国税庁のホームページからダウンロードするか、最寄りの税務署で取得し、税務署に持参、郵送、またはe-Taxを利用した電子申請によって提出します。
開業届および青色申告承認書の提出には、費用は一切かかりません。
開業届や青色申告承認申請書はそれほど複雑な書類ではありませんが、記入方法について戸惑うこともあるでしょう。クラウド会計ソフトを提供するfreeeやマネーフォワードなどが、無料で簡単に開業届および青色申告承認書を提出できるサービスを提供しているため、これらのサービスを利用することをおすすめします。ウェブ上で質問に回答していくだけで、自動的に開業届・青色申告承認書が作成され、そのままオンラインで提出することができるため、瞬時に手続きを終えることができます。
社会保険の切り替え
会社員を辞めてフリーランスになる際は、年金や健康保険などの社会保険を切り替える必要があります。
年金については、厚生年金から国民年金に切り替える必要があります。手続きは、退職日の翌日から14日以内に住んでいる市区町村の役所・役場の国民年金担当窓口で行う必要があります。
健康保険については、フリーランスコンサルタントの場合、任意継続被保険者制度の活用がおすすめです。任意継続被保険者制度を利用することで、国民健康保険を利用するよりも保険料を抑えられる可能性があり、会社員時代と同様の福利厚生サービスを受けられます。任意継続被保険者制度を利用する場合は、退職日の翌日から20日以内に、勤めていた会社の健康保険組合へ申請書を提出する必要があります。
フリーランスコンサルタントに任意継続被保険者制度をおすすめする理由など、社会保険について詳しく知りたい方はこちらの記事を参照ください。
事業用銀行口座の開設
フリーランスコンサルタントとして独立すると、交通費や書籍代、コワーキングスペース費用など、事業にかかった経費を管理する必要があります。プライベートの銀行口座で資金を管理すると、個人と事業の収支が混在し、事業の資金繰りが分かりづらくなってしまうため、事業用口座を開設することをおすすめします。
最近は、クラウド会計ソフトを利用して会計帳簿を作成し、確定申告の負担を軽減する方が多いですが、クラウド会計ソフトに事業用の銀行口座を連携させることで自動的に会計処理が行われ、さらに手間が省けるというメリットもあります。
また、事業用口座は屋号を付けられる場合もあり、取引先へ請求書を発行して振込先口座を伝える際にも、より信用力が高まります。事業用銀行口座を開設するのに特に費用はかからず、上記のような資金管理や信用力の面でメリットがあるため、基本的には開設すべきでしょう。
事業用銀行口座は、メガバンク・ゆうちょ銀行などの大手銀行やネット銀行で開設することができますが、以下の理由からネット銀行がおすすめです。
- 手続きが簡単でスピーディに口座開設ができる
- クラウド会計ソフトとの連携が簡単
ネット銀行にはPayPay銀行、楽天銀行、GMOあおぞらネット銀行、住信SBIネット銀行などがあります。各銀行のATM出金手数料や振込手数料を比較して、自分に合った銀行を選ぶとよいでしょう。一方で、それほど大きな違いもないため、手軽かつスピーディーに開設したい方は、PayPay銀行をおすすめします。
PayPay銀行の事業用銀行口座はネットで簡単に申込可能で、最短当日に開設できます。口座の振込や確認はアプリで簡単に行えることに加えて、審査不要・年会費無料のVisaデビット機能付きのキャッシュカードも後日郵送で届きます。また、3万円以上の入出金なら何度でも手数料無料となっています。さらに、freee、マネーフォワード、弥生会計といった主要なクラウド会計ソフトすべてと連携が可能となっています。
クラウド会計ソフトの契約
フリーランスコンサルタントとして独立すると、1年間の所得を税務署に報告するために確定申告が必要となります。確定申告において、節税メリットを得られる青色申告を選択する場合は、貸借対照表や損益計算書、複式簿記で記帳した仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿が必要となります。これらの帳簿作成の負担は大きく、個人事業主にとって日々の会計処理および確定申告作業は大変な作業です。しかし、クラウド会計ソフトを利用することで、簿記の知識がなくても簡単かつスピーディーに帳簿作成や確定申告を行えるようになります。月額1,000円程度の費用がかかりますが、フリーランスコンサルタントはできるだけバックオフィス業務の負担を減らし、コンサルティング業務に集中できる環境を整えることが重要です。そのため、クラウド会計ソフトを契約することをおすすめします。
主要なクラウド会計ソフトは以下の3つです。
これらのソフトは機能面で大きな違いはないため、月額費用や自身が保有する事業用銀行口座との連携可否などの観点で比較し、自分に合ったクラウド会計ソフトを選ぶとよいでしょう。
事業用クレジットカードの発行
事業用クレジットカードを支払いに利用することで、経費の支払い状況を把握しやすくなります。いつ、何のために、いくら使ったかは、利用明細を確認すれば一目瞭然のため、経費管理の負担が軽減されます。またクラウド会計ソフトと連携できるカードを選べば、会計処理が自動で行われるため、さらに手間を省くことができます。
事業用クレジットカードは様々な企業が提供しており、付帯サービス・優待特典、ポイントプログラムがあるカードも存在します。そういった面を重視して選ぶこともできますが、フリーランスコンサルタントは案件が始まるとプロジェクトワークで多忙となるため、できるだけ経費管理・会計処理の負担軽減につながるカードを選ぶことをおすすめします。具体的には、利用するクラウド会計ソフトとの連携が可能かどうかがポイントです。クラウド会計ソフトを提供しているマネーフォワード などは、個人事業主向けのビジネスカードも提供しています。これらのカードを選ぶことで、クラウド会計との連携が問題なく行え、バックオフィス業務の負担を軽減することができるでしょう。
もう1点、カードの限度額が事業でかかるコスト額に適しているかという観点もありますが、フリーランスコンサルタントの場合、当初はそれほど大きな出費もないため、あまり気にする必要はありません。
事業用クレジットカードを上手に活用することで、経費管理や会計処理の効率化を図り、本業に注力する環境を整えることが重要です。
名刺の作成
フリーランスコンサルタントとして独立する際、名刺を作成する必要があるのか気になる方もいるでしょう。結論としては、ラクスルなどのネット印刷サービスを利用すれば、名刺100枚を1,000円以下で作成できるため、作成しておくことをおすすめします。
フリーランスコンサルタントとして案件を受注する場合、大きく分けて2つのパターンがあります。1つは事業会社などのエンドクライアントと直接契約する場合、もう1つはコンサルティングファームと契約し、コンサルティングファームのメンバーとしてプロジェクトに参画する場合です。前者の場合、自己紹介の際に名刺があると便利ですが、後者の場合は名刺が不要となるケースもあります。また、完全リモートの案件では名刺を渡す機会もないでしょう。
しかし、どのような案件に参画することになるかは事前に分からないため、一旦100枚ほど名刺を作成しておくと安心です。名刺には、自身の氏名、屋号、連絡先(電話番号、メールアドレス)などを記載しましょう。
メールアドレス準備(独自ドメイン取得・サーバー契約)
フリーランスコンサルタントとして独立する際、フリーメールのアドレスではなく、屋号や名前などの独自ドメインのメールアドレスが必要になるか気になる方も多いでしょう。結論としては、不要な場合もありますが、それほどコストがかからないので、作成しておくと安心です。
フリーランスコンサルタントとして案件を探すために案件仲介サービスに登録する場合、フリーメールのアドレスでも特に問題ありません。また、コンサルティングファームと契約し、コンサルティングファームのメンバーとしてプロジェクトに参画する形の案件も多いですが、このような案件ではコンサルティングファームからメールアドレスやTeamsアカウントが提供されることも少なくありません。
一方で、事業会社などのエンドクライアントと直接契約してプロジェクトに参画する場合は、自分のメールアドレスを利用することもあるため、独自ドメインのメールアドレスを用意しておくとクライアントに安心感を与えられます。
独自ドメインのメールアドレスを作成するには、独自ドメインの取得とメールサーバーの設定が必要となります。独自ドメインは、お名前.comやX serverドメインなどで初年度無料で取得できる場合もあり、メールサーバーも月額数百円程度から利用できるサービスが多数存在します。例えば、Microsoft 365 Business Basicでは、月額1,000円以下でメールサーバーのExchange Onlineに加えて、メールソフトのOutlookやクラウドストレージのOneDrive、コミュニケーションアプリのTeams(ビジネス版)を利用することができます。
独自ドメインのメールアドレスを用意することで、フリーランスコンサルタントとしての信頼性やプロフェッショナルなイメージを高めることができるでしょう。コストもそれほど高くないため、準備しておくことをおすすめします。
仕事環境の整備
フリーランスコンサルタントとしてコンサルティングワークを行っていく上で、仕事環境を整備しておくことは重要です。コンサルティングファームではリモートワークをしている方も多いため、自宅の作業環境が整っている場合も多いですが、長時間座っても疲れづらいワーキングチェアやモニター画面などの導入は必要でしょう。
また、ラップトップPC(ノートパソコン)については、案件によっては契約先のエンドクライアントやコンサルティングファームから支給されることもありますが、自身のパソコンを利用するケースもあるため、用意しておくことをおすすめします。コンサルタントは作業スピードも求められるため、同時並行の処理を素早く行えるように、CPUのコア数やメモリの容量がある程度多いものを選ぶとよいでしょう。よく分からない場合は、量販店や専門店の方に相談しながら選ぶことをおすすめします。
自分のパソコンを利用して業務にあたる場合、セキュリティソフトは必ず導入しましょう。万一ウイルスなどに感染し、情報漏洩が発生した場合は損害賠償を請求されることもあります。
また、自宅やクライアント先で業務を行う場合もありますが、作業に集中する場所としてコワーキングスペースを契約する方もいます。ただし、クライアントの重要な情報を扱うコンサルタントは、オープンなスペースでは作業・会話ができないことが基本なので、コワーキングスペースの個室ブースを契約するなど、セキュリティ面に留意することが大切です。
仕事環境を整えることで、効率的かつ快適にコンサルティング業務に取り組むことができます。自身の働き方に合わせて、最適な環境を整備していきましょう。
生活費のシミュレーション
フリーランスコンサルタントとして独立し、案件を探し始めてもすぐに見つからない場合もあります。コンサルティングファームでも同様ですが、案件に参画できるかどうかは需給のマッチングに左右される側面もあり、必ずしも常に自分に合った案件があるとは限らないからです。
仮に案件をすぐに獲得できなかったとしても、生活を続けていけるように事前に生活費のシミュレーションを行っておくことが重要です。シミュレーションを行い、資金繰りを可視化しておくことで、いつまでに案件を獲得しなければならないのか、どの程度の単価の案件に参画する必要があるのかが明確になります。
独立すると、生活費として家賃、食費、光熱費、通信費、養育費などに加えて、国民年金や住民税、健康保険などの支払いも必要となります。思わぬ出費でプライベートの資金繰りが回らなくなるということがないよう、十分な準備が求められます。
まとめ
以上、フリーランスコンサルタントが個人事業主として開業する際のメリットや開業届の提出方法、独立する際に準備すべき事項について網羅的に解説してきました。
初めて独立・開業する場合、分からないことも多いかもしれません。しかし、最初に必要な準備をしっかりと行っておくことで、実際に案件に参画するようになってから、プロジェクトワークに集中することができるでしょう。
本記事を参考にして、漏れなく準備を進めていきましょう。フリーランスコンサルタントとしての第一歩を踏み出す際に、本記事が皆さまの一助となれば幸いです。
フリーランスコンサルタント完全ガイド
フリーランスのコンサルタントとして独立・成功するために知っておくべきことを網羅。フリーコンサルの始め方・開業から案件獲得までの流れ・エージェントの選び方などを知りたい方は、「【完全ガイド】フリーコンサルの始め方や案件獲得のポイントを徹底解説」も合わせてご覧ください。
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自身に合った案件紹介サービスを探している方は、「【61社徹底比較】フリーコンサル向けの案件マッチング・エージェントおすすめ」も合わせてご覧ください。
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