個人事業主と法人設立のどちらを選ぶべき?フリーランスコンサルタントにおすすめの事業開始方法を解説

本サイトのコンテンツにはPRが含まれています。

フリーランスコンサルタントとして独立を検討中の方や、独立に向けた準備を進めている方の中には、個人事業主として開業すべきか、法人を設立すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

個人事業主と法人では、事業開始に必要な手続きや費用から、事業開始後の経費や税金の扱いに至るまで、様々な違いがあります。そのため、自身の状況に合わせて、適切な選択を行うことが重要です。

本記事では、フリーランスコンサルタントを始める際に個人事業主がおすすめである理由、個人事業主と法人の違い、そしてフリーランスコンサルタントが法人設立を検討すべきタイミングについて、詳しく解説していきます。

\ 本記事で分かること /
  1. フリーランスコンサルタントを始める際に個人事業主がおすすめである理由が分かる
  2. 個人事業主と法人の違いを理解できる
  3. フリーランスコンサルタントが法人設立を検討すべきタイミングを知れる

フリーランスコンサルタント完全ガイド

フリーランスのコンサルタントとして独立・成功するために知っておくべきことを網羅。フリーコンサルの始め方・開業から案件獲得までの流れ・エージェントの選び方などを知りたい方は、【完全ガイド】フリーコンサルの始め方や案件獲得のポイントを徹底解説も合わせてご覧ください。

おすすめの案件マッチングサービス・エージェント

自身に合った案件紹介サービスを探している方は、【61社徹底比較】フリーコンサル向けの案件マッチング・エージェントおすすめも合わせてご覧ください。

案件マッチングサービス・エージェントのクイック診断もおすすめ!

目次

フリーランスコンサルタントとして起業する際に、個人事業主と法人設立のどちらを選ぶべきか?

見出し画像

結論から言えば、フリーランスコンサルタントとして独立する多くの方には、まず個人事業主から始めることをおすすめします。

確かにフリーランスコンサルタントは、月額単価100万円以上の案件が基本であり、100%稼働で年間を通して働けば、年収は1,000万円を超える可能性があります。その場合、法人を設立することで節税のメリットが得られるかもしれません。しかし、実際にフリーランスコンサルタントとして案件探しをしてみなければ、自分に合った案件が見つかり、年間を通して100%稼働できるかどうかは分かりません。コンサルティング案件は、需給のマッチングが重要であり、優れた専門性やスキルを持っていても、自分に合った案件に出会えない可能性があります。先行きが見通せない中で、最初から法人を設立すると、期待していた節税メリットが得られなかったり、初期費用やランニングコストの負担が重くのしかかり、資金繰りに苦労する可能性もあります。

そのため、まずは個人事業主として簡単かつ迅速に開業し、実際にフリーランスコンサルタントとして働き始めながら、自分がどの程度の単価の案件を獲得できるのか、どの程度の引き合いがあるのかを確認することをおすすめします。そして、法人設立のメリットが明確になってきた段階で、法人化を検討するのが賢明でしょう。実際、多くのフリーランスコンサルタントが最初は個人事業主としてスタートしています。

ただし、以下のような方は最初から法人化を考えてもよいかもしれません。

  • 法人化のメリットが得られる収入を稼ぐ自信がある方
  • フリーのコンサルティングとは別に、プロダクト開発などの自社事業を並行して行う予定の方

自分の状況に合わせて、適切な事業開始方法を選択することが大切ですが、法人設立の明確な理由がない場合は、まずは個人事業主として開業することを検討してみてはいかがでしょうか。

個人事業主と法人の違い

見出し画像
個人事業主として開業法人の設立
事業開始手続きの手間登記が不要で比較的時間がかからない定款作成や登記手続き等が必要で
時間が約3~4週間かかる
事業開始にかかる初期費用開業に費用はかからない約18万円~25万円の設立費用+資本金(+司法書士などへの代行費用)
ランニングコスト低い
・クラウド会計ソフト費用
・その他備品購入など
高い
・クラウド会計ソフト費用
・税理士顧問料
・事業所オフィス賃料
・その他備品購入など
経理事務の負荷比較的容易複雑
(基本的に税理士に支援を依頼)
税金所得が少ない時は有利だが、
所得が大きく時は不利
所得が少ない時は不利だが、
所得が大きく時は有利
経費経費にできる範囲が限定的
(節税の余地が小さい)
経費として認められる範囲が広い(節税の余地が大きい)
社会保険社会保障が比較的手薄
・国民年金
・国民健康保険or前職健康保険の任意継続
手厚い保障を受けられる
・厚生年金
・健康保険への加入
責任範囲経営者は無限責任を負う有限責任
※ただし経営者が連帯保証をしている場合は個人として債務を負う
社会的信用一般的に法人よりも低い一般的に信用力が高い

事業開始手続きの手間

個人事業主と法人(株式会社)では、事業開始の手続きにおいて大きな違いがあります。個人事業主の場合、手続きは非常に簡単で、時間もかかりません。マネーフォワード開業届などの無料のオンライン開業届サービスを利用すれば、質問に答えるだけで開業届が自動作成され、そのままオンラインで提出できます。そのため、わずか1日で開業手続きを完了することも可能です。

一方、法人設立の場合は、以下のような手続きが必要となり、完了までに約3~4週間ほどかかります。

  • 定款の作成・認証:会社のルールである定款を作成し、法務省管轄の公証役場に提出して、公証人から定款の正当性を証明してもらう必要があります。
  • 印鑑の作成:登記申請に必要な会社の実印(役所に登録された、公的に認められた印鑑)や銀行印、角印を作成します。
  • 登記申請: 設立登記申請書、定款、設立時代表取締役の就任承諾書、発起人の印鑑証明書、資本金の払い込みを証明する書面、印鑑届書などを作成・提出する必要があります。
  • 役所への届出:税務署への法人設立届出書の提出、年金事務所への健康保険や厚生年金保険などの届出が必要です。

このように、法人設立の手続きは個人事業主の開業と比べると負担が大きく、時間もかかります。

事業開始にかかる初期費用

個人事業主と法人設立では、事業開始にかかる初期費用にも大きな違いがあります。個人事業主として開業する場合、開業手続きに費用はかかりません。つまり、初期費用を最小限に抑えて事業をスタートさせることができます。

一方、法人設立の場合は、以下のような費用が必要となり、総額で約18万円~25万円の初期費用がかかります。

  • 印鑑の作成代: 会社の実印の作成に必要な費用
  • 定款認証料: 公証役場での定款認証に必要な費用
  • 収入印紙代: 登記申請書に貼り付ける収入印紙の費用
  • 登記の登録免許税: 法人設立登記に必要な税金

また、法人設立には1円以上の資本金が必要であり、多くの会社は信用力や取引先からの信頼を得るために、100万円以上の資本金を設定しています。さらに、定款作成や登記手続きを司法書士などに依頼する場合は、別途10万円程度の代行費用が発生します。

印鑑の作成代5,000円~
※オンラインで登記申請する場合、印鑑作成は任意
定款認証料資本金100万円未満:30,000円
資本金100~300万円未満:40,000円
資本金300万円以上:50,000円
収入印紙代4万円
※電子定款の場合は不要のため0円
登記の登録免許税150,000円 or 資本金額×0.7%
いずれか高い方

ランニングコスト

フリーランスコンサルタントが個人事業主として開業した場合、ランニングコストは比較的低く抑えられます。主なコストとしては、仕事で利用するPCや書籍などの購入費用や、会計処理・確定申告の手間を減らすためのクラウド会計ソフトの利用料(月額1,000円程度)が考えられます。フリーランスコンサルタントは、売上に必要な原価が自分自身の人件費以外にほとんどないため、ランニングコストは限定的でしょう。

一方、法人を設立した場合は、オフィス賃料と税理士顧問料が追加的に必要となります。

法人登記の際には、会社の住所を登録する必要があります。自宅の住所を登録し、自宅兼オフィスとすることも可能ですが、賃貸住宅に住んでいる場合、契約違反となることが多いです。賃貸物件の契約書では、物件の利用用途を住宅に限定していることが多く、会社としての利用を認めていないためです。大家の承諾を得れば登記は可能ですが、断られることが多いのが実情です。また、分譲マンションでも、居住用以外の利用を管理規約で禁止していることが多く、管理規約違反となる可能性があります。

さらに、法人登記されている住所は公開情報であるため、自宅の住所を登記することにはプライバシー上のリスクもあります。そのため、法人設立する場合は、オフィスを借りるケースが多いです。近年は、住所や電話番号のみを借りられるバーチャルオフィスが数多く提供されており、月額数千円から利用できるため、バーチャルオフィスで登記する方も増えています。

会社を設立すると、税務申告書の作成など、個人事業主よりも会計処理・税務処理が格段に複雑になります。そのため、個人事業主の間はクラウド会計ソフトなどを利用して自分で会計処理・確定申告を行っている方も多いですが、法人設立後は税理士と顧問契約を結び、帳簿付けや決算申告を依頼することが一般的です。

税金

個人事業主と法人では、税金の仕組みにも大きな違いがあります。
個人事業主の場合、所得税は累進課税となっています。つまり、課税所得額に応じて税率が段階的に上昇します。

  • 195万円未満: 税率5%
  • 195万円以上330万円未満: 税率10%
  • 330万円以上695万円未満: 税率20%
  • 695万円以上900万円未満: 税率23%
  • 900万円以上1,800万円未満: 税率33%
  • 1,800万円以上: 税率40%

ただし、個人事業主は収入から経費や控除額を差し引いた課税所得額が赤字の場合、税金は一切かかりません。

一方、法人を設立した場合は、法人税を支払う必要があります。資本金1億円以下の中小法人の場合、法人税率は15%~23.2%となっています。そのため、収益が大きくなるほど、法人の方が税金を減らすことができます。ただし、法人の場合は赤字であっても年間約7万円程度の税金(法人住民税の均等割)を支払う必要がある点に注意が必要です。

経費

経費として認められる項目は、法人の方が個人事業主よりも多くなっています。法人の場合、経営者本人の給与や社会保険料、社宅制度を利用した住宅費なども経費として計上できます。一方、個人事業主の場合、これらの項目は経費として認められません。

責任範囲

個人事業主は無限責任を負うため、事業上の責任はすべて経営者個人に帰属します。つまり、事業で損失が出た場合、個人の資産を切り崩して債務を返済しなければならない可能性があります。

一方、法人の場合は有限責任となり、事業上の責任は出資した額に限定されます。経営者個人の資産は守られ、出資額以上の支払い義務は発生しません。ただし、融資を受ける際などに経営者が連帯保証を求められた場合は、経営者個人としての責任が発生します。

社会保険

個人事業主は、厚生年金や健康保険に加入できないため、国民年金と国民健康保険(または前職の健康保険の任意継続)に加入することになります。

一方、法人を設立すると、たとえ1人会社であっても、厚生年金と健康保険への加入が義務付けられます。

社会的信用

法人は個人事業主よりも社会的信用力が高いと言えます。銀行からの融資を受けたり、各種助成金を申請する際に、法人であることが有利に働くケースもあります。

個人事業主および法人のメリット・デメリットのまとめ

個人事業主の開業と法人設立それぞれのメリット・デメリットをまとめると以下の通りです。

個人事業主のメリット

  • 事業開始の手続きが簡単かつスピーディに完了する
  • 初期費用がほとんどかからない
  • ランニングコストの負担が軽い
  • 経理事務の負担が少なく、自分で会計処理や確定申告ができる

個人事業主のデメリット

  • 所得が増加すると税負担が重くなる
  • 経費の範囲が限定的であるため、節税の余地が少ない
  • 社会的な信用度が低い
  • 個人として無限責任を負う

法人設立のメリット

  • 売上大きくなると税制面で有利になる
  • 経費の範囲が広く、節税しやすい
  • 厚生年金などの社会保険に加入できる
  • 原則として、経営者は有限責任となる
  • 社会的信用が得られやすい

法人設立のデメリット

  • 法人設立に費用と時間がかかる
  • オフィス代や税理士顧問料などのランニングコストがかかる
  • 赤字であっても税金が発生する

個人事業主で開業した人が、法人化すべきタイミングは?

見出し画像

所得が900万円を超えた時が法人化タイミングの目安

一般的に、個人事業主の所得が課税所得900万円を超えると、法人設立の方が税制面で有利になる可能性が高いです。フリーランスコンサルタントとして働き始め、課税所得が900万円を超える見通しがつくようであれば、法人設立を検討する価値があるでしょう。ただし、初期費用やランニングコストが発生するため、それらを考慮に入れて、最終的にメリットがあるかどうかシミュレーションを行うことも重要です。

個人事業主と法人の税率比較
参考:国税庁サイト(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)をもとに作成

個人で営業などを行い、クライアントと直接契約したい時

案件仲介サービス経由ではなく、個人で事業会社などに営業を行い、クライアントと直接契約してコンサルティングサービスを提供したい場合には、法人を設立した方が有利です。一般的にB2Bの取引においては、個人事業主よりも法人の方が取引相手として認められやすいためです。法人化することで、社会的信用が高まり、大手企業などとの取引もスムーズに進めやすくなるでしょう。

従業員を増やしたい時

単独のフリーランスコンサルタントとしてではなく、複数のコンサルタントを束ね、チームとしてコンサルティングサービスを提供したい場合は、法人設立を検討すべきタイミングだと言えます。個人事業主のままでは、従業員の雇用や社会保険の適用などに制限がありますが、法人化することで、従業員の雇用や社会保険の適用がスムーズになります。

まとめ

以上、フリーランスコンサルタントとして独立する際に個人事業主として開業することがおすすめである理由、個人事業主と法人の違い、そしてフリーランスコンサルタントが法人設立を検討すべきタイミングについて、詳しく解説してきました。

フリーランスコンサルタントは、高い専門性とスキルを武器に、1,000万円以上の所得を得られる可能性があります。そのため、法人設立によって節税のメリットを得られる可能性があります。しかし、法人設立には手間とコストがかかり、事業の初期段階では負担が大きくなる可能性があります。また、フリーランスコンサルタントが急増する中で、必ずしも自分に合った案件に参画できるとは限りません。

そのため、法人設立を考えている方も、まずは個人事業主として開業し、事業が軌道に乗ってきたタイミングで法人設立を検討するという進め方を検討してみてはいかがでしょうか。

個人事業主として事業をスタートすれば、手続きやコストの面で負担が少なく、事業の立ち上げがスムーズに進められます。そして、事業が安定してきた段階で、改めて法人化のメリットを評価し、適切なタイミングで法人設立を進めればよいでしょう。

目次